富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

三月二十六日(月)夜半、渡辺保歌右衛門伝説』を読んでいたら、80年代末、歌右衛門が最後渾身で演じていた幾つかの舞台を観ることができていたことを彷彿、1988年9月の初代白鸚七回忌追善興行での籠鶴瓶幸四郎を次郎左衛門にしての八橋、同年11月の芝翫との二人道成寺、89年12月の南座での合邦で玉手御前。籠鶴瓶幸四郎のミュージカルのような過剰演出の次郎左衛門が気に入らなかったが、道成寺は千秋楽でこれが成駒屋道成寺は見納めと覚悟したが本当にその通りになった一代一世、坊主ですら天王寺屋、音羽屋、成田屋播磨屋中村屋と(松緑扇雀を除けば)幹部総出演にて、昭和の末、天皇ご下血の御代において華麗な道成寺南座は確か改築前の最後の顔見せ、と記憶、芝居が跳ねてZ嬢と急行銀河にて東京に戻りたり。千葉県知事に無党派堂本暁子当選、反自民は徹底するにせよ民主、共産がそれぞれ独自候補を立て票の食い合いかと思いきやこの結果。丸谷才一文章読本』読み始める。この人の文章読本こそ谷崎で始まった文章読本のきわめつけであろう、この人の文章もいつものことだが本当に美文とはこういうものかと教えられるもの、言葉遣い、センテンスのリズムに和声まで完整されていて、しかも旧仮字がぜんぜん気にならず、むしろ視覚で捉えた文字がすんなりと脳に入ってきてしまうのだ。昼、中環は麥○雲呑麺世家にて雲呑麺、向かいのHK$10で雲呑麺を売る店は行列、こちらはHK$23、同じ雲呑麺が半額以下で食せるのも一利あるが、あれは大味の雲呑にコシの鈍い麺にて、ありゃ頂けぬ。午後、フジヤマ館長を連れて神州図書、店員にはもう競馬関係の蒐古品はないと言われていたが流石館長目ざとく72年ダービーの馬票(宝籤)など捜し出し購う。夜中に明日よりの旅行の準備、いつもどの本を持っていくかで要らぬ思惑、どうせ読み進みもしないのに重い思いで。
○は「不」の下に「大」を置く。