富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

三月十四日(水)快晴。話は旧聞に属すが先週の政府の財政予算報告にて所得税こそ現状維持なものの煙草と酒税が上昇、煙草は吸わなくなって久しきものの酒の増税は厳しいかと思いきや酒税30%から40%への増税は葡萄酒及びアルコール度数30%以下のみで葡萄酒は余り解らず30度以下の酒にはあまり縁のない我には関せず、か。灣仔の雲南麺家・雲來居にて刀削麺を試みようと訪れるが初めての店は菜單の最初の料理を試すのが原則と湯珍珠なるものを注文してみれば饂飩、水団の類、もっと素朴に塩味にすればかなりいいものを味つけがかなり化学調味料的で評価できず。つまりは刀削麺にしても麺こそ面白くても湯がああいう味かと察す。藤原帰一なる新鋭の政治学者(東大教授)が朝日新聞の文化欄にて首相森の辞任について、森の首相を辞めない能力を揶揄し、90年代の政治なるものが細川政権の誕生は自民党支配を一旦終焉に追い込んだようでいて、実は自民党に「議会と選挙を飼いならし世論から政治を遮断した形だけの民主政治」を生ませる発端となり、戦後55年体制の終焉は実は自民党政治の終焉でなく野党総崩れのそれであり、下野したことにより自民党は野党という立場を活かし復活で肥大化、非自民政権下で意欲をみせた官僚と自民党を割った政治家を徹底的に干して、世論にも野党にも官僚にも脅される極端に安定した与党支配を生み、現状はアジアで最も古い民主主義国家はもはやこの自民党の安定下で停滞に陥っており、そこでは現在に意味を見つけられず過去を美化することだけが進行している……と、かなり鋭い分析を披露、結論が今こそ政権交替を!と折角の分析がかなり軽率な結論なのは頂けず。政権交替などできないのは明らか、自民党は間違いなく崩壊する、そしてそれに交替する政党はなく、ただ分解するだけなのである。見事な日本。梅原猛の追悼文にて日本画の上村松篁の逝去を知る。一昨年の松島屋さんの仁左衛門襲名の引出物がこの松篁翁の「松」を描いた京都は宮脇賣扇庵の扇子にて、日本画など疎い我は松篁も当時知らず、松島屋の御上さんから二本貰った扇子の一つを香港に戻りて歌舞伎好きのN氏夫妻に差し上げたら、さすが上方のN氏、仁左衛門の襲名の引出物も有難いが松篁さんのお扇子とは……と喜ばれ、上村の松園、松篁の母子を我は知った次第、松篁翁齢九十八にての大往生。