富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

2月13日(火)曇。Buena Vista Cocial Clubの香港公演初日、東京にてシネマスクエア東急に勤めしZ嬢の友人に東京にてこの映画を勧められ招待券を貰い日曜の朝初回なら余裕かと高輪のホテルから渋谷の映画館に出向けば日曜朝の閑散とした公園通りにて映画は既に立ち見にて断念せしが丁度一年前、昨秋に香港にてこの映画が掛かり映画こそ観て、今回の公演三回公演も早々に売り切れ追加公演の状況(ありさま)、失礼ながら齢遥かな楽団にて初日に張切り二日目には休演など困ると冗談、初日を選びしが、公演半時間前にZ嬢とおち会い時間なし乍ら「徳發」に飛込み牛南麺だけならまだしも浄牛肉丸、その上他のどの店よりも美味い芥蘭の油菜を食するは我ながら呆れ、その上にラテン歌謡を白面で聴けるかと文化中心までの400mの道すがらサンミゲルを飲み干せば、ついに生公演を観るに至るは感無量、さすがに三年前に撮影されし映画にて歌舞音曲奏でた面々は殊にリズムセクションだいぶ若手の壮年プロに替わり、それも安定した音曲二時間半続けるには仕方なしと思いしが、ピアノのRuben Gonzalezかなり老けても八十路にて熟練のピアノ弾き、Ibrahkm FerrerもOmara Portuondo歌手二人まだまだ還暦程度に若く、映画より好く言えばかなり洗練され悪く言えばバタ臭さなくなり多少ムード歌謡的な中だるみことあれ、「心・技・体、すべてのチューニングが合った音曲」(富柏村談)とはかういふものかと、映画"Dancer in the Dark" のBjorkにて何か胸に閊え生じ幾ら飲んでも幾ら走っても「演出なるもの」の閊えは消えずにいたが唄いたきゃ唄え謡曲奏でたければ奏でのこのバンドに漸く閊え消え去りたり。嬉しくドライマティーニダイキリ飲み乍ら一葉日記読了、一葉ぬしが明治27年初春より再起すべしと善く欲もつは(それはそれで好しが)日記が作品としての味わいは俄然乏しく、ましてや脚光を浴び始めし水の上日記となると(鴎外、露伴といった連中との文士劇の創案の下り除けば)文壇話にて面白み全く無し。文芸少女たる蓬生から貧困にての塵之中こそ日記としては秀逸。昨夏より橋本治『源氏』、今年は正月より一葉日記と他に何も読んでおらぬように思えたり。