富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

1月24日(水)曇。農歴正月初一。雲低く立込めハーバーも見えず。幼き頃より正月だの盆だのと人と嬉しそうに型通りの挨拶を繰り返すことに臆病、アパートメント階下に下りれば守衛いつもよりいと多く揃いて殊更の笑顔にて住人に接し恭喜發財!と祝言すると思えば拙宅を出ずるも億劫なり。このまま居留守を決込み巷から春節気分が消え失せた頃に何知らぬ顔にて出街せば……などとくだらぬことを考え乍らI嬢に貰いし彼女の母お手製の大根餅をいただく、毎年の恒例にて秀逸。連休なれば毎度溜まった新聞雑誌の類、目通しに忙殺さるるがこの春節はそれもなし、寝室の洗面所の換気扇など修理して過ごす。意を決して出街、守衛は万笑、案の定、正面玄関に四名が陣取り、利是を授けるはZ嬢、余は傍らに立ち尽くすのみ。Bridges街より百姓廟・済公廟を経て文武廟に詣る。上環より中環を散策、ビール購い動植物公園のベンチにてビール飲み黄昏れ、オラウータンを拝す。Mosque Junction街のイタリア料理屋Palavinoが一筋下手に開業したるPezzelia Italianaにてアンチョビと玉葱のピッザ求め帰宅、豪州Rothbury EstateはBrokenback Shiraz1998にてピッザ食す。水々しきピッザにて店の技量もさることながら近年の高温電気炉は数分にてピザ地を焼きつつ具の香も水気も逃がさぬ様、改良は見事なり。大久保の同仁斎兄より先日メールにて拙句「三千歳と遭へぬも僅か千歳かな」を秀句と讃め給われば、彼兄より復びメールにて谷保に邸を建て引っ越す、と。彼兄の谷保の邸は余も1989-90年に寄宿せし、多摩川河岸段丘の崖、竹林にひっそりと構へしものにて「きたたまのやほの天満初春にきみが手折りし雪の梅が枝」と歌を贈る。一葉日記読む。