富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

NINAGAWAマクベス

fookpaktsuen2017-06-25

農暦六月初二。香港日本人倶楽部の食堂で家人と昼餉。海鮮花ちらし。尖沙咀。NINAGAWAマクベスは金曜からの二晩盛況で本日午後はその千穐楽。大入り。妹尾河童の仏壇に見立てた舞台、音楽も安土桃山の世界でシェイクスピアマクベスも1980年の初演の時はさぞや衝撃的だつただらう。原作の未来を予言する魔女が巫女で京蔵丈のびっこの演技。市村正親マクベス。この方は何といつても〈ミスサイゴン〉のエンジニアが当たり役でトリックスター的な役回りで魅力発揮するが王様役よりは王妃の方がニンではないかと思ふのは〈ラカージュオフィール〉のザザで見事に女役をこなしたから。でも市村正親にどこか王様役の印象が強いと思つたら映画〈テルマエロマエ〉のローマ皇帝。でもやはり王様は平幹二朗で、むしろ市村正親の王妃役こそ素晴らしいのでは? 或いはこのマクベスの悪役で恐怖に狂ふ王の役なら仲代達矢。話は逸れるが久ヶ原T君が仲代の大判事に平幹二朗の定高で〈吉野川〉を見てみたい、と。御意。今回王妃役の田中裕子についてはアタシはピンとこないが香港ではカーテンコールでかなりの拍手は未だに朝ドラ〈おしん〉だからかも。この王妃役は市村か、女優なら初演からは栗原小巻だが、蜘蛛巣城山田五十鈴、溝口の雨月物語今日マチ子らなら見事に演じきるであらうし故人ばかり偲んでもどうしやうもないが太地喜和子ならばどれだけ素晴らしいか。現役なら寺島しのぶ、或いは麻実れいとかゐるでせうに。蜷川先生は男の役者は大物ばかりか個性派、そしてアイドルまで見事に配役するが女優は大竹しのぶ鳳蘭など大物を除くと他の女優抜擢はピンとこないところ。千穐楽で大したスタンディングオベーションとカーテンコール。これだけの暗い芝居のあと市村正親の蔓延の笑みと両手を可愛らしく振る姿は愛嬌はあるが「マクベス役者」だと思ふとあまり見たくない戯けた姿。さすがにこの芝居だけあつて知己の方幾人もに遭ひご挨拶。スターフェリーで中環に渡り昨日は席のなかつたFCCで早めの夕餉。競馬の宝塚記念キタサンブラックが来るかと思ひつゝサトノクラウンへの応援馬券が当たる。

まぁ何もないところに突然リトルピープルとかわけのわからない異人が現れ内向的な主人公が地下世界だのミラクルワールドに出入りして……といふ小説を書ける小説家は確かに他にはゐないだらう。