富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

晋三による護憲

fookpaktsuen2017-05-10

農暦四月一五日。気圧の影響で日本には東日本に強風吹き釜石など山火事被害。西日本はひどい黄砂。香港は風が吹かず大気汚染甚し。釜石からは岩手放送の畏友I記者が伝へてゐるが(こちら)山火事に寝ずの対応する消防団の団員の多くは漁民で、この時期休めぬ養殖漁業に影響が出てゐるといふ。地震津波の被害も漁民、原発核禍の影響も漁民、そして漁民には関係なき山火事でも漁民が生業を捨てても尽力する……と何ともひどい話。北朝鮮相手に大騒ぎしてゐるのなら対策はこっちだろ、優先は。
▼米国でトランプがFBI長官更迭。共和党も含め議会に嫌はれ弾劾とかにならないかしら。1強といはれた晋三も何だか嫌はれ始め。晋三の読売新聞とタイアップした憲法改正の勇み足がかなりの反響。国会では共産党の小池書記局長がいつもの一刀両断で晋三の「読売読んで」について

  • 首相は「自民党総裁として言った」と言うが読売新聞に「首相インタビュー」って大見出しで書いてある。読売新聞では縦横に語り、それを熟読してくださいって、そんな無責任な話はない。

と、その通り。メディアも

  • 何で2020年?東京五輪があるこの年を「日本人共通の大きな目標」と言う安倍さん。本当?スポーツの祭典と憲法と何の関係が?ボクのための目標なら2020年にふさわしくない。

といふ常識的な判断(福本容子、毎日新聞
と指摘するが晋三はさうした指摘に対して

ともはや思考崩壊レベル。全く意味がわからないが

  • 首相は自衛隊違憲の疑いがあるとは少しも思っていない。むしろ安保法制を合憲化するための一文を加えたうえで自衛隊を明記する考えではなかろうか。理屈や理念ではなく、首相はともかく改憲がしたいのだ。(与良正男毎日新聞

といふところが本音か。じつはこんな腹案もないまゝの可能性もあるから怖い。護憲メディアばかりか自民党内でも石破先生が

  • 「今までやってきたことは何だったのという話になる。自民の憲法改正草案は(国会を)通りっこない、というのは敗北主義だ」読売新聞を「熟読もしたがよく分からない。憲法への強い意識を持たずに改正をバタバタとやることには賛成しない」

と明らかに「晋三改憲」についての嫌悪感が広がつてゐないか。(翌11日の朝日記事だが)2006年に自民、民主、公明3党で「国民投票法案」まとめた際も晋三(第1次政権)が「改憲参院選の争点にする」と発言、民主(小沢一郎代表)それに反発して法案反対に回り審査会設置大幅に遅れたこともあり。第2次政権以降になつても憲法改正の発議要件緩和の96条改正、憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認と憲法めぐる晋三の言動が審査会議論を停滞させてゐる。先月、自民、民進両党の衆院憲法審責任者が集まつた席で当時の実務者から「安倍首相がいなければ改憲は10年早く実現した」と発言あつたといふ。確かに。晋三登場まで世間は明らかに「憲法ver2.0」容認。それが晋三によつて「改憲は危ない」感広がつたと思ふと晋三は最大の護憲効果である。

昨今、グローバリゼーションの敗者が排外主義に走るという分析が散見されるが、その一方で社会の最底辺に滞留する有権者の中には沈黙し、政治から事実上排除された状態にある人が実に多い。民主主義が直面する最大の問題は「ポピュリズムの台頭」ではなく、ポピュリズムにさえも背を向け、既存の制度内では自らを政治から排除してしまうしかない人々の増大ではないか。この「沈黙の声」に耳を傾け、そこから言葉を掬(すく)い取る技法を創造できるかどうかに、民主主義の未来はかかっている。これは日本社会とも地続きの課題である。