富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

習馬會:双方各自表述堅持一個中国

fookpaktsuen2015-11-07

農暦九月廿六日。朝イチで中環。IFCの映画館で贾樟柯監督の映画『山河故人』観る。山西省の汾阳(贾監督の故郷)舞台に町では歌舞音曲に秀でた若い女性と小さな炭鉱経営する実業家の男、其処の炭鉱夫の三角関係。これまで贾樟柯の映画といふのは『站台』でも北京の大型遊園地舞台にした『世界』や『三峡好人』でも市井の人々の少し寂しげな日常のなかに強烈な社会性のメッセージ含まれてゐるが今回の筋ではあまりにありきたりの三角関係。それが、そこの演出は魅力的でここには綴らぬが中国の経済成長の中でこの三人のその後の半生描く(と言ひたいが肺を病んだ炭鉱夫の話は後半は出てこない)。中国の経済成長の負の側面強調されてゐると国内ではオフィシャルの評価は低調(海外では逆)。経済的には豊かになるが寂しさ伴ふところでは『站台』からの贾樟柯の社会に対する見方は何も変はらず。何気ない話なのだが向田邦子的に良い。FCCに行き周末の新聞読み。昼食はパスタ。午後イチで尖沙咀。i-Squareの映画館で007の新作“Spectre”見る。007作品は導入の一つ話が面白いので遅れられないが、このビルの高層階にある映画館に辿りつくまでが遠く然もIMAXとかいふ高性能の映画館で450人だか収容だから入場も時間かゝるのでお早めに。映画の入場料安かつた香港も此処でこの封切りは大人HK$170(2,700円)。007シリーズで最高傑作といふ声と凡作といふ声があるがアタシの感想は小津や寅さんと一緒でいつも通りの満足。たゞ昔は単純な勧善懲悪で裏切り者ゐるくらゐがストーリーでミソだつたがDaniel Craigになつてからジェームス=ボンドの出生のあれこれだの養父が云々とやたら出自まで話がやゝこしく今回はその極み。世界中風光明媚な舞台で話が進むがやはり倫敦、ウエストミンスターは格別。007を見ると今でも幼いとき父親に連れられ見た007の記憶が鮮明。ショーン=コネリーで日本舞台にした名作『007は二度死ぬ』ではないのでショーン=コネリー最後の作品の『ダイヤモンドは永遠に』。やはり彼の色男でニヤリとしたボンド像があるので今の笑わん特務にまだ慣れない私。尖沙咀で時間潰し。中環。FCCに戻り早酒。バーのモニタで星加坡から「習馬會」の中継。中共国府もお互いお家の事情での「一つの中国」の確認ごっこ(双方各自表述堅持一個中国)。勝手にしやがれ、といふ感じ。。最初の握手で馬英九のスーツが何だか吊つてしまい本人もかなり気にしてゐる。家人きて夕餉。市大会堂。Christoph Poppen指揮。メンデルスゾーンのThe Fair Melusine Overtureに始まり。このオケはポッペン先生の指揮でかなり音が出るやうになつてきた。Aurélien Pascal君のソロでシューマンのチェロ協奏曲イ短調作品129は少し睡魔に侵されつゝ聴いてゐたが2楽章から3楽章に入るところで(休みなく続く構成だが)バタンといふ大きな音に何かと思へばコンマスが舞台から転倒しコッペン先生がドイツ人らしく!機敏に舞台から飛び降り介護。舞台下に伏せたまゝで一先づ客には休憩と告げられる。貧血なら打ち所さへ悪くなければ良いが脳卒中や心臓だと怖い。救急車来てコンマス運ばれる。他の楽団員が懐中電灯で客席床を照らし……なのでバイオリンが壊れ部品など探してゐるのか。仕切り直しで最初から。心なしか音に力がない、仕方ない。中入り後はブラームスの2番。このオケとして渾身の演奏。金管が一つ目の音が決まらないのと体力のゐる曲では4楽章にもなると音がバラバラになりもするが、そこはきちんとまとめるコッペン先生。コンマスは実はこの日は体調悪く嘔吐等もあり無理して舞台に上がり2→3楽章のタイミングで舞台から退こうとしたが椅子を立つた瞬間に、の転倒だつたとネットで記事を読む。容態は安定の由。
同志社の学長選で現職の村田晃嗣先生落選。さもありなむ。