富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

初の帝劇で西貢小姐

fookpaktsuen2014-08-17

農暦七月廿二日。母と朝の特急ひたちで上野へ。新型になつた車両は一度、G車には乗つたが普通車は初めて。座席ピッチは余裕で各座席に電源あるのが便利。水戸からノンストップのスーパーひたちだと最速で1時間余で上野に着くが朝のフレッシュひたちは停車駅もかつての急行ときわより多く上野まで80分ほどかゝる=かつてのL特急ひたちと同じ時間。来春には東京駅乗り入れの由。この「上野東京ライン」は回送や貨物の列車のために元々存在した線路で、進駐軍や一部の特急や急行も走つてゐたのだが東北新幹線の東京駅乗り入れが決まり秋葉原〜神田間は東北新幹線に譲つたことで在来線の回送線は存在しなかつたのだが秋葉原駅を出た直後、この回送線はかなりの勾配で高架線となり地下から出てくる東北新幹線の上を走り神田から東北新幹線が東京駅八重洲口側の新幹線ホームに入るところで高架から下りてくるといふジェットコースターのやうな新線。秋葉原〜神田の山手線外側の沿線住民にとつてはとんでもない高さを列車が走ることになり大地震にも安全は問題ないとJRはしてゐるが反対もあり。東京駅はとんでもない混雑でトランクを預けるのに地下4階の総武横須賀線のコンコースまで下り漸く空きロッカー見つける。有楽町。お昼には早いが寿司三昧で握り寿司つまむ。生まれて初めて帝国劇場。久が原T君と待合せ。オペラ、ミュージカル苦手なアタシが市村正親の舞台はやはり見たいと「西貢小姐」のチケットをT君のツテで取つて貰つたら大市村が初期の胃癌で休演となり代役は筧利夫。わかり易い物語の筋。畏友村上湛君による「鑑賞の手引き」も一読済み。演出で一寸気になつたのは西貢陥落で舞台上にはホーチミンの巨きな頭像が象徴的に現れるのだがスターリン主義的でベトコンの動きはどこか文革的。サイゴン市民の資本家や自由主義者なのかしら強制連行されるところはカンプチアのクメールルージュのやう。越南共産党はアタシの印象では文革時の中国やクメールルージュに比べるとかなり緩い気もするのだが。大市村の休演は残念ではあるが物語としては流れで見てゐたものの、エンジニアの独り舞台となる後半の「アメリカンドリーム」の幕だけはやはり市村で見たかつた、と思ふ。初の帝劇、初の東宝ミュージカル見物で、とても下世話なことだが舞台で役者たちの「おでこの突起物」は、だうにかならないかしら。それがマイクであつてマイクを衣装につけると動きのなかで服の擦れる音とかするのもわかるが、みんながおでこに突起物があると、なんだかさういふアンドロイドのやうに見えてきて、彼らは人間に似てゐるが一番の違いは人間のやうに言葉を話さず「突然、歌ひだすアンドロイド」……なんて思へてしまふアタシ。観劇のあと東京会舘でT君と母と一服。有楽町まで歩き母と別れT君と丸ノ内線で新宿。伊勢丹のメンズ館と食品フロアを流す。新宿の伊勢丹のうち今の本館がほてい屋で別館のところが伊勢丹、その伊勢丹が本家取りしたことになる、なんて話を出来るのは今ではアタシたちが最後かしら。T君とは大久保の話もあり。隣町の新宿の二丁目では何やらレインボー祭りだかやつてゐる由。T君と馴染みの見世で早酒。T君と別れ伊勢丹上智K君と待合せ。末広亭近くのバーでK君は白葡萄酒が好きだといふのでロバート=モンダヴィシャルドネを飲む。K君は9月よりルクセンブルグに留学。バーQに香港からの土産置いてK君をバーに遺しアタシは本日三度目の伊勢丹に戻りZ嬢と待合せ。毎度のことだが東京最後の晩は三丁目の「鼎」に飲む。いつも諸国の上手い日本酒注文してゐたが普通に菊正宗もあり。東京駅に旅荷置いたまゝだつたが東京駅まで戻るのが面倒で真っ直ぐ麻布鳥居坂の旅寓へ。着の身着のまゝ寝入る。