富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

雙十節

fookpaktsuen2013-10-10

農暦九月初六。雙十節。写真はかつての香港の国民党集落、調景嶺(吉田一郎君のレポートはこちら)。連日いろ/\な案件に頭痛いが少しずついろ/\快方に向かひ始め安堵。何ヶ月ぶりかしら、でメールのinboxと机の上のトレーは空になる。といつても「やること」は背後の棚にファイルが澤山あるのだが。帰宅途中にショッピングモールの中にある普段は寄らないパブで麦酒一飲。日経の岩井克人教授の連載で岩井先生的にはかなり平易に書かれてゐるのだらう経済学の話がさつぱり解らず*1。帰宅して鮭の炊込みご飯。食後は記憶なし。
▼数日遅れで八日の信報で林行止「扶貧容易滅貧難 窮人生活勝舊時」読む。先月末に2012年の「香港貧窮情況報告」なるものが発表され香港は710万人の人口のうち131.2万人(人口の19.6%)が「貧窮」層に属する、といふ。5人に1人といはれると生活実感で「マジに?」と疑ひたくなるが林行止は年金や生活保護など加味すれば貧窮人口は100万人以下になるはず、といふが、それでも多い。この「貧窮」のラインは世帯あたりの収入が市民全体の世帯平均収入の半分に満つか満たぬか、で市民全体の収入と生活水準が上がると貧窮ラインも高くなる。米国の経済組織の調査で洗濯機や冷蔵庫、掃除機など生活に必要な家庭電化製品十品だかを選び、これを購入するのに必要な労働時間を計算すると1955年は十品購入するのに必要な資金US$1,851は885.6時間の労働が必要で、これが1973年にはUS$2,272に575.2時間、2013年にはUS$3,289に170.4時間と明らかに物質的には生活水準の向上は(米国での話だが)容易になつてゐる、といへる。「物質文明」はその時代、時代でいはゆる「真っ当な生活」のための必需品を揃へられるか、で、貧窮調査ではこの部分をよく理解すべき、と林行止。

筆者現在借用這種意念,認為惟有全神投入工作才能紒加收入,「勤勞革命」因此有助人民「紒富」;但這不等於能夠「滅窮」,因為人有良莠之分,他們所得的物質報酬不可能均等,不均等催生貧富且必然導致貧富懸殊!

▼「調査結果を率直に喜びたい」とOECDの国際成人力調査(なんだ、これ?)で日本の高水準に日経さん(社説こちら)。義務教育の充実、文字・活字文化の広がり、企業内教育のきめ細かさ……なんてもので「日本人に特有の生真面目さや気配りなどもそれを支えているかもしれない」と日経さんは更に「東京への五輪招致を実現させたのも、この成人力だったのではないか」と。本来の成人力って自分できちんと責任を理解して自分で判断の出来ることぢゃないかしら……。現代であれば「近代の人」であるといふこと。
▼TPP交渉。日経に「自民、重要5項目も対象 TPPの関税撤廃検討品目」と。軍事石破がバリ島でのTPP交渉から帰国した自民党のTPP対策委員長西川某から報告受け「両氏はコメなど重要5項目に含まれる586品目にも関税を撤廃できる品目があるかどうかを党として早期に検証する方針で一致した」と。7月の参院選公約でTPPは「重要5項目や国民皆保険制度など聖域を最優先し確保できない場合は脱退も辞さない」だつたはず。「公約を守るという前提で精査していく」と繰り返すが、それが「コメなど重要5項目に含まれる586品目にも関税を撤廃できる品目があるかどうかを検証」と大きく矛盾。「いじめはしない」と約束するが「これはいじめじゃないよね」と判断される細かなところを認めていくやうな、これでは「いじめはしない」が反故にされてゐることは小学生でもわかること。自民党の政策は改憲集団的自衛権など、すべてこの「嘘つき」ばかり。

*1:マルサス以来、ケインズも含む多くの経済学者が示したように、交換が貨幣を媒介とするかぎり、総需要と総供給は乖離する可能性をもつ。そして、両者が実際に乖離すると、物価水準の予想と現実も乖離し、お互いを追いかける累積的インフレやデフレが引き起こされる。貨幣経済とは本質的に不安定なのです。だが、ヴィクセルの不均衡累積過程とケインズの失業理論との関係がわからない。(略)ふと「不安定な不均衡累積過程が通常は起こらないのは、労働市場などで見えざる手の働きが阻害されているからだ」という発想が浮かびました。確かに、「貨幣賃金の硬直性」は失業などの非効率性を生みだしますが、本質的な不安定性をもつ貨幣経済の重しの役割を果たしているのです。資本主義経済とは、効率性を高めると不安定になり、安定性を高めると非効率になることを示す「不均衡動学」全体の構想が決まりました。