富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

夢の共演

十一月二日(水)「夢の共演」なんていふとNHKの歌謡コンサートで思ひ切り有名どころの演歌さんがステージに並びさうだが(嗚呼……嫌ひ)、今晩の第3回香港ピアノコンペティション千秋楽ギャラコンサートはまさに「夢の共演」で早晩にFCCシャルドネ独酌、マシュルームの軽いパスタ食し珈琲飲んで市大会堂。昨晩はパスカル=ロジェのラヴェルのピアノトリオでも客の入りは芳しくなかつたのにさすがに今晩は満席。Z嬢来る。香港フィルで指揮はアシュケナージ先生。先ずはCristina Ortiz(クリスティーナ=オルティス)がショスタコーヴィッチの2番。次がTigran Alikhanov(ティグラン=アリハノフ、1943〜、モスクワのチャイコフスキー音楽院学長)でプロコフィエフの3番。中入り後はペーター=フランクル先生(76)のリストの2番。で最後がゲイリー=グラフマン先生(83歳)によるラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲ニ長調。この四曲をばアシュケナージ先生(74)が降り続ける。好事家には垂涎の演目。ピアニストも素晴らしいなら曲目もアタシには好きな曲ばかり。香港フィルも今夜はさすがに、この指揮者、このピアニストで演奏は大変よろしい。会場もわかつて来てゐるお客ばかり。演奏者、客が本当に音楽とはこんなに素晴らしいものなのか、といふ感動をば共有した一夜。三年後にまたこのコンペティションあつて高齢の先生方がまた審査員で来られても、このソリストでこの演目は正直もう期待できないだらう。さう思ふと一期一会の演奏会であつた。
▼どぜう動静(1日)いくら国会で午前が参院、午後が衆院とはいへ朝の六時半から二時間に渡り官房副長官(長浜)と首相補佐官(手塚)がどぜう首相にご進講の由。二時間のレクの相手が一国の首相だと思ふと頼りないものあり。どぜう首相は本会議にて康夫ちゃんを「みんなの党」と呼んださうな。どせうがどせうなら菅丞相も、亀井静香ちゃん曰く「私は菅総理と8月初めに断交した。「私は総理補佐官にまで身を落とし(民主)党内でいくら足を引っ張られても応援しましょうと言ってやってきた。あなた(菅首相)の部下の岡田幹事長が自民党と談合して決めた、退くためのレールにあたなはただ走っているだけじゃないか」と言って電話を切った。極めて残念だった」と(朝日の発言録より)。
小澤征爾氏が世界文化賞の記者会見で「僕の先生たちはよく「知らないことはよくなことだ、罪だ」と言っていました」と切り出しての言葉。

僕は、原発は地球を汚さないし安いし、人間が考えた素晴らしいものだと言われ、そう信じていた。それは、知らなかったわけです。前にも事故があったけどピンとこなくて、また起こるとは思っていなかった。要するに、本当に知らなかった。

その上で、今年この賞を日本人である自分が受ける意味について

だから、僕にとって今年は非常に恥ずかしい年。その年に賞をもらうことは運命だと思っています。

と。確かに仰ることもわかるが誰彼の言つたことを「信じてゐた」「知らなかつた」は自分の無知であり罪と思はなければならぬはず。法律での「法の不知は許さず」*1と同じかしら。更に今回の核禍では原発が安全とは「信じてゐなかつた」、危険性は「知っていた」のに自分はそれに何も出来ずにゐた、といふ小澤征爾より一つランクが上での無知で済まされぬ罪人感をもつ人も少なからず。アタシはその一人か。

*1:ポールさんが日本は大麻禁止とは知らず日本で大麻吸つてゐて捕まつたら「日本は大麻が違法だとは思はなかつた」と弁明できないこと。