富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-02-28

二月廿八日(土)浅の気温は摂氏8度。数度の違ひで窓からの寒気もだいぶ弱まる。雨も歇む。宿泊先で朝食済ませ荷物まとめタクシ自動車雇ひ朝08:30に神宮前。入江さんのスタジオでTokyo FMのSuntory Saturday Waiting Bar AVANTIの収録。マカオのことあれこれ話す。放送は3月21日(午後5時〜)の由。やつぱり媒体としてラジオが好き。どうせなら、と香港の刺身のことも話して10時まで。本当なら久々の青山界隈を散策したいところだが外苑前から銀座線で上野。トランクを預け水道橋。土曜日で本郷一丁目の郵便局は閉まつてゐたがATMは午前中だけ作動してをりぎり/\日本円入手。香港の銀行口座から日本円で現金ゲットしたが日本では世界的な銀行オンラインシステムのPLUSとCirrusが郵便貯金などに限定され不便極まりなし。越南でだつてどの銀行でも利用できる、つていふのに。月本裕さんが亡くなつて一年余。ご自宅にお伺ひして夫人のKさんと再会。ご焼香。昼をご一緒に水道橋のかつ吉に食す。午後、千駄ケ谷国立能楽堂でK夫人、村上湛君と狂言の「茂山千作・千之丞の会」あり見る。狂言界の長老兄弟は千作さんが今年90歳、弟の千之丞さんも4つ下で二人が舞台に上がると180歳近いのだが見事に声が響き渡る。湛君が千作を「松鶴志ん生を足して二で割つたやうな名人」と称したがまさに。狂言「舟船」で始まり茂山家の息子世代が木下順二の「彦市ばなし」。あまり期待せずに「彦市」を見たが木下順二らしい劇団民芸つぽい「戦後劇」そのものは戦後も半世紀以上が過ぎ平成の今となつてみると日本がまさに彦市のやうで思ふところゐろ/\あり。素狂言「宗論」は足腰はそりや少し弱い千作さんなので装束なしの居語り。動きがあつて当然の狂言だからじつと居語りでは演じる側もつらいところあらうし語りに何とも力ばかり入るがこれは仕方あるまい。千作の戯けと仙之丞の生真面目な僧の対比が面白い。「南妙法蓮華経、南妙法蓮華経」と「宗論」は題目が何度も繰り返されるが信濃町も近し(笑)。終はつて村上君と新宿。駅地下のベルグで一杯飲む。伊勢丹デパートのメンズ館、鳥渡見学。晩に実家に戻り母の焼いた近江牛のすき焼き食す。夜遅く妹に自動車で近所のスーパー銭湯に連れていつてもらふが風呂に浸かつてゐても寒気あり。いやな感じ、で帰宅して体温測ると摂氏38.2度。こりやたまらぬ、と床につく。蕁麻疹もひどい。
▼母から母の友人の写真家Y女史から余に見せてあげて、と山内道雄氏の写真集「HONG KONG」と長野重一氏の「香港追憶」をお渡しいただいたさうで、それを眺める。前者は1995〜97年の香港を、白黒でざつくりと写す。一瞬、作風は森山大道に近い、と思つたが写真をよく見るとディティールの情報性を棄てず、寧ろデータを込めるところで明らかに違ふところ。後者は岩波写真文庫の氏が1958年の香港を写したもの。中環の繁華街から新界の農村まで見事に香港全体をフォローがお見事。これが2009年=今年の発刊。

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富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/