富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-11-26

十一月廿六日(水)インフルエンザ予防接種。昼に二年ぶりに東京よりN氏来港にてZ嬢と鏞記に食す。戦前に香港で幼少送りし御仁なり。もうすぐ八旬の氏は矍鑠とされたもの。地図の細かい字を読むにも老眼鏡要らず。机上の諸事強制終了で遅晩に知己の両名と渡辺貞夫のコンサートあり市大会堂に聴く。このナベサダも1933年生まれ。アタシが高校生の頃にカリフォルニアシャワーだのモーニングアイランドのLPで所謂ナベサダブーム。ナベサダ、そしてソニー=ロリンズばかりかチック=コリア、復活した帝王=マイルス=デイヴィスまで!明るいジャズの時代の到来。当時、高校の近くにあつたジャズ喫茶に昼は学校の塀を乗り越えて抜け出し、夜は夜で1500円でボトルキープできたサントリーホワイトを大人ぶつてちびちびと飲みながらコルトレーンに傾倒してゐた(つもりの)アタシにとつて「ナベサダねぇ……」な感じであつたし、シーラ=ジョーダンといふ女性ヴォーカルのMy Favorite Thingsが好きでいつもそれが昼の店開け曲にしてゐた、そのジャズ喫茶の女将。昼から暗いジャズ喫茶でカリフォルニアシャワーは絶対に似合はなかつただらう。が、スタンダードなジャズのナンバーが流れ、誰の曲かしら、と“Now Playing”の棚を見たらLPのジャケットにナベサダ。えッ?と驚いたのが確か“I'm Old Fashioned”といふアルバムでハンク=ジョーンズ(p)、ロン=カーター(b)、トニー=ウィリアムス(ds)のトリオとの合奏。こつちのナベサダの方がずつと良いぢやない、と。それにナベサダ著の『ジャズスタディ』なんてジャズ音楽の教則理論の本も読ませてもらつたのだつた。で、市大会堂で満員御礼の今晩もC調のあの明るい音楽続き途中、数曲の短調、バラードもあつたがAマイナーで白鍵だけの曲がこゝまで続くと途中鳥渡食傷気味のアタシだつたが、途中一滴の水すら飲まず、二時間演奏しつぱなし、でやられてしまふとただただ敬服の極み。渡辺貞夫(as)、小野塚晃(pf)、矢堀孝一(elg)、コモブチ・キイチロウ(elb)、石川雅春(ds)、ンジャセ・ニャン(per)といふ布陣でニジャセ=ニャンの太鼓が格別。ベースの菰淵氏は幼きころ香港育ちの由。香港でこんなに動員があるとは驚き。しかも日本人の客など2割程かしら。MCもずつと英語だがイントネーションが平坦なのは栃木つぽいところ。タモリオールナイトニッポンナベサダの栃木弁をよく真似してゐたこと思ひ出す。アンコールでは香港の若きジャズサックス奏者を招き合奏で殊更盛り上がる。市大会堂を出てご同行の氏が銅鑼湾に知る家に飲む。

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