富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-11-05

十一月五日(水)昼には(米国時間火曜晩)米国総統選挙で共和党負因候補が小浜君勝利認めたり。なにせ過去2回の総統選での「疑惑のフロリダ」が早々に小浜当確出したのだから。結局のところ今更ながら米国民がブッシュからの離別。遅すぎ。アタシが初めてイリノイ州上院議員選挙に立候補の小浜馬楽君に注目せし時はGoogleで「バラク オバマ」と引いてヒットはわづか1件。その上院議員選挙の選挙資金に募金までしてやつたが06年に「バラクオバマ君を米国総統に!」なんてアタシも言つてゐた当時はまさか本当に実現するとは思ひもせず。だが複雑な気分。この小浜馬楽君の当選で新聞の論説記事は百花斉放だが内容はイマイチ。紐育時報でKrugman教授の“The Republican rump”なんて題も題だが共和党を指して“they're going to have to realize that the Republican Party has become the party of intolerance”なんて「ざまーみろ、共和党!」で言ひたい放題。ノーベル経済賞の学者なのに。そんななかFinancial Times紙のGideon Rachman氏の指摘は一読に値する。他の者がみんな「黒人初の総統」で踊るなかRachman氏は“The first blue president”と題して、今回の小浜氏は「米国初の北部の、都市型リベラル」の総統当選であることに着目。1960年代のカウンターカルチャーの時代から40年(ケネディ暗殺以降)、宗教や愛国心、政治指向などで米国社会は赤州(共和党)と青州民主党)に色分けされ、その衝突が拮抗してきたもの。その40年の間で民主党出の総統はジョンソン、カーター、クリントンとみんな南部出身の白人。その3人の民主党の総統の出身州が04年の総統選では3州ともブッシュを選びたり。そして逆に本来、共和党の地盤であつたシカゴが前回の上院議員選挙で民主党オバマ候補がこれまでにないリベラル票を獲得。このやうに過去40年間に硬直してゐた赤と青のconflictが変動し始めてゐる、と。で本日も多忙。昼に日清のカップヌードル、晩に雑事済ませつつ日清の「はるさめ」で空腹満たし晩八時に尖沙咀の文化中心に滑り込みZ嬢とLeif Ove Andsnesのピアノリサイタル。Leif Ove AndsnesはZ嬢にとつて憧れのピアニストの一人でCDも数枚彼女は持つてゐるがアタシは今晩がほぼ初聴。この諾威のピアニストの演奏にコメント出来る立場にもないが前半はシューベルトソナタハ短調D958から。シューベルトピアノソナタではAndras Schiffが最近お気に入りのアタシは、この人の厳粛なソナタらしいアレグロアダージョの部分は今ひとつこの人の魅力がわからなかつたが最後のタランテラあたりでは「できる!」と思はずにゐられず。で続いてベートーヴェンの「月光」。この人は自分の好きなピアニストにリヒテルミケランジェリを挙げてをり、アタシにはリヒテルミケランジェリはかなり印象が異るが、アンスネスにとつては両者が融合してゐることが解らぬでもなし。中入後にムソルグスキーの「展覧会の絵」。この曲をピアノの原曲で生で聴くのはアタシは初めてだらう、きつと。アンスネスの演奏は「なんぢやこりや〜!」で破壊的なやうで緻密さもあり。一瞬、ホロヴィッツの同曲の壊しつぷりを思ひ出したが、それは小泉純一郎的ほど壊すだけでなく長嶋茂雄的に見事なもの、でも20世紀の米ソ対立の時代のホロヴィッツに比べアンスネスホロヴィッツをデジタルで打ち込みしたやうな、では讃め言葉にならないが、ぎりぎり原曲の体裁は保ちつつ解釈は自由、といふ均衡の面白さ、とでも言へば良からうか。アンコールはドビッシーの変奏曲から2曲。実は今晩の演目は元々は「展覧会の絵」に非ずヤナーチェクとドビッシーであつた。それが急きよ「展覧会の絵」に。玄人受けの地味な曲を「展覧」に差し替へ集客に期待したのかしら。でも「ユンディ=リとランラン以外はピアニストに非ず」の香港だから今晩も客の入りは五分程度。でスカルラッティソナタでお終ゐ。かなり印象に残るアンスネス。Z嬢が今晩もCD3枚お買ひ上げなので後ほどぢつくりと聴かせてもらはう。
▼米国総統選挙につき信報の林行止専欄が面白い。同紙の元編集長の鑒治博士はアラスカに近親居り度々アラスカに参るのでアラスカ州知事としてのペイリン女史のことも熟知。気さくで素朴、州知事に就任して最初にやつたことは前任知事の知事専用機のeBayでの売却で知事専用車も辞退して自動車の運転は専ら自分で。そんな彼女が突然、共和党の副大統領候補として全国区に引摺り出され、かなりマスコミに嗤はれたが、選挙ゆゑ田舎の州知事もイメチェンが大事、と、紐育時報の報道に拠れば、十月の僅か前半二週でペイリン女史に共和党が当てた化粧師の費用が22,800米ドル。共和党は彼女に15万米ドル支給し紐育は五番街のSAKSやミネアポリスの某店などで衣服など整へさせた由。この田舎の女性知事を副大統領候補に仕立てるのに共和党の支出は120万香港ドルの相当。

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