富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-10-24

十月廿四日(金)鴨脷洲(Ap Lei Chau)に行く機会あり香港仔(Aberdeen)から街渡(渡し船)に乗る。鴨脷洲でもSouth Horizonsのマンション群でなく洪聖廟のある、古くからの町内の方を訪れるのは初めて。面積が1.3平方キロの鴨脷洲にはこの街とSouth Horizons、それに小高い山の上に利東邨団地があるが、この3つで人口は8.7万人余。で1平方キロあたり66,755人は世界で最も人口密度の高い島の由。緑も多く自然に恵まれ実際にさう過密を感じさせないのが不思議。一昨日のアンジェラ=ヒューイットのピアノ独奏会で邂逅のT氏と尖沙咀で待ち合はせHoliday Inn Golden Mile地下のデリカテッセンコーナー。今晩はアンジェラ=ヒューイットのバッハ平均律の第2巻なのでバッハに敬意を表してソーセージと馬鈴薯を食しませうといふ何だかよくわからない嗜好。香港文化中心。アタシとZ嬢は一昨日と同じ席だが不安が的中して前には平均律の楽譜に音の強弱を鉛筆で書き込むヲバサンが坐す。中入りの後はバルコニー後列の客が前の大部分の空席に押し寄せて来て周囲を「楽譜さん」たちに囲まれちまふ。最悪。Z嬢の背後の楽譜ヲバサンは楽譜に硬質ヴィニールのカバーかけてゐて、それがガサ/\の最悪。アンジェラ=ヒューイットのこの平均律第2巻は予想通り第1巻に比べ更に彼女の解釈が目立つ。正味2時間半の演奏聞きながら感じたことは、やはりアタシはバッハのこの曲は和声を楽しみたいわけで、和声とリズムでせう。リズムも許容されるギリギリの幅はもう決まつてゐるわけで、1曲の中であれだけ緩急織り交ぜて演出されてしまふと和声も崩れて聴こえるし、殊にフーガなんて対位法はどこ?みたいな、旋律がどんどん(展開ではなく)違つたものに妖変してしまつて……。途中でリストを聴いてゐるやうな錯覚に襲はれ、ショパンがこの平均律にかなり影響受けて24の前奏曲を書いたわけだがアンジェラさんの演奏だと本当にショパンマズルカとかを聴いてゐるやうに聴こえるから。無伴奏チェロ組曲で言へばヨーヨー=マの演奏するそれを良とするかどうか、みたいなところで、アンジェラさんのこの平均律がたんに素晴らしい、と聞こえる人と「曲の解釈は技巧的にも見事だし演奏は華麗だけど、これはバッハぢやない」と聞こえる人がゐる。アタシは後者。フェリーで湾仔。夜風浴びつゝ狗狗公園散歩して銅鑼湾からタクシーで帰宅。三更に小さめの音で徐ろにバレンボイムの弾く平均律第2巻を聞く。ト短調のフーガから。やはり、これがバッハ。越えてはいけない絶対値のやうなものがあるわけで、グールドでも聴いてみたがグールドですら絶対に守る不文律あり。
▼本日、世界的に市場は混乱。円は急騰し一時90円台、東証終値7,649円。香港の恒生指数は8.3%下落。
▼米国で元来が民主党支持の紐育時報が小浜馬楽君支持は今更驚かぬが前回選挙で布珠支持の全米各地の主要紙26紙だかが今回は小浜支持に回り(負因支持は4紙のみ)140年間だか共和党候補支持し続けたシカゴトリビューン紙(市俄古魁報、とか書けば良いか)までも小浜支持。紐育時報は editorial board has endorsed Senator Barack Obama as the 44th president of the United States, stating: "We believe he has the will and the ability to forge the broad political consensus that is essential to finding solutions to this nation's problems." と言ひ切り The nation’s problems are simply too grave to be reduced to slashing “robo-calls” and negative ads. This country needs sensible leadership, compassionate leadership, honest leadership and strong leadership. Barack Obama has shown that he has all of those qualities. と強調するが、単にさういつたリーダーシップへの期待なら負因君も小浜君に勝るとも劣らず。結局、今回の小浜君への雪崩のやうな支持は布珠フォビアとでも言はうか反布珠効果。紐育時報が(23日のeditionalで)
The United States is battered and drifting after eight years of President Bush’s failed leadership. He is saddling his successor with two wars, a scarred global image and a government systematically stripped of its ability to protect and help its citizens ― whether they are fleeing a hurricane’s floodwaters, searching for affordable health care or struggling to hold on to their homes, jobs, savings and pensions in the midst of a financial crisis that was foretold and preventable.
と指摘する、これ。だが、かうも簡単に「布珠が悪い」にして良いのかしら。布珠を選んだのはアンタがただろーが、と言ひたいところ。勿論、東部十三州や加州の市民にしてみれば「私らは布珠は選んでゐない」だらうしフロリダあたりが怪しいのは公然の事実。だが中国やシンガポールなど一党独裁国家で国民に政権選択の自由がないなら話は別だが、どうであれ世界に冠たる自由と民主主義の国で布珠が2期に亙り総統に選ばれ(てしまっ)たのは米国民の選択の結果なのであつて、自分たちにその責任があるのだから布珠を非難する前に布珠を選んだ自らの過ちを猛省すべき(小泉改革の結果で社会がボロ/\になる日本も他人のことを言つてゐられないのだが)。それを布珠&共和党でダメだつたから今度は小浜&民主党に期待、つて2大政党制の有利がコレのやうだが本当にこんな発想での政権交代で国が良くなつてゆくのかしら。ただそんなこと言つてしまふと「だから優れた政権政党のもとで安定した統治が望ましい」なんて中国共産党シンガポール人民行動党プロパガンダに同調しさう(笑)。

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