富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-09-14

農暦八月十五日。中秋。十三年ぶりの暑さの中秋の由。朝八時に坑口。上海より来港のI氏ら五人で待ち合はせミニバスで西貢、タクシーで北潭涌。マクルホーストレイルの1段と2段、25kmを歩く。暑いがすでに秋風が爽か。最近は毎年1度とはいへ、かうして続けてゐると西湾山や大浪湾の峠越えなどもあまり苦にならず。西湾の海岸は知己の店が閉業して久しく海岸沿ひの一軒のみが店舗拡張で大賑はひ。大浪の集落で水を買ひ求めた店も閉業。郊外の山あひ、海沿ひの集落の過疎化止まることを知らず。すでに無人村となつて久しい赤徑の村で廃屋、屋根も崩れた家屋の中を見ると、崩れ落ちた瓦礫の中にどうみても棺が一つ。生前にお棺を誂へ屋根裏にでも置いてゐたのが当人は離村して亡くなりお棺だけが廃屋に残され家屋が朽ちてお棺が落ちてきた、といふところか。西貢に戻り、どうやらこゝもまた営業権が変はつたのか客層まですつかり変はり曾ての常連の姿なきThe Dukeにビールを飲み喉の渇き癒す。食事に行く同行者と別れ腹の足しに龍記桂林米粉米粉を食す。この龍記も創業の家族とは異るヲバサン二人が切り盛り。なんだかずいぶんと様々なものに変化あり。バスと地下鉄乗り継ぎジムで一浴し帰宅。Z嬢と東の空に上つた中秋の名月愛でつゝ北角の「札幌」にらーめん食す。こゝはご亭主も息子もそのまゝ。Z嬢と別れバスで尖沙咀東。科学館で鈴木清順監督の映画『刺青一代』見る。清順映画で初めてみる作品。コテ/\の仁侠映画、のやうだがどこかやッぱり清順ワールドでちよつと異質。日活の上層部が「わけがわからない」と思ふのも当然か。乱歩のやうな不気味な赤い靴の男、その後の『ツィゴイネルワイゼン』に繋がるであらうカット割りなど散見されるのが面白い。美学生の弟(花ノ本寿)可愛がる仁侠の鉄(高橋英樹)のまぁ惚れ/\する二枚目ぶり、で二人を庇ふ現場の組の頭を山内明が好演。松尾嘉代のカフェの女給、ワキを固めるのが小松方正高品格野呂圭介等々。ところで日本でなら素性怪しき連中が「満州に渡り一旗揚げて」も聞き流せるところか、ただそれがかうして大陸側で見てゐると「満州に渡り」がこちらにしてみれば「まったくもって迷惑千萬」な話で、いかに仁侠の鉄がナイスガイでも「お願ひだから大陸に渡らないで」と思へるから。中秋で繁華街に繰り出す市民多し。

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