富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-03-17

三月十六日(日)香港ダービー。麗かな絶好の競馬日和。だが夕方の丁度、ダービーの開催時刻頃の一つ高座が入つてしまひ競馬場から駆けつけるわけにもいかずダービー断念。初めてダービー観戦逸す。ちよつと走り昼にかけジムで一時間の有酸素運動。場外で地場G1のQueen's Silver Jubilee Cup(1400m)とダービーの馬券購入。一旦帰宅してから出街。中環の場外で、何処に仕舞つたか出てこない馬券購入カードの再発行。即時再発行で手数料もタダ、は香港。FCCのバーでYellow Tailの白葡萄酒飲みながら競馬観戦。QSJ CupはGood Ba Baが強い。11枠でも他を寄せつけまい。で馬券的にはホワイト騎手でAmada(15倍)からGood Ba Ba、Sacred Kingdom、Slow Waltz(細脳)に流す。がGood Ba Baが半馬身差でSacred Kingdomを躱しガチガチ。作戦失敗。でダービー。アタシは愛国心ゆゑ98年高松宮杯勝馬シンコウフォレストとカジュアルウェイの産駒 Dao Dao(漢字名:大脳、ホワイト騎手、サイズ厩舎)に賭ける。4番手で第4コーナー回り直線で先頭に立ち「来た〜つ!」と思つたが、昨年9月のデビューから6戦3冠2亜1退出のこの「大脳」君、マイルから限界は1800mか、初の2000mは未知の世界で直線でしつかり残り200mで力尽きて減速(結果7着)、大脳と競つた一番人気、デビュー3戦目のHelene Mascotが優勝。このダービー、八年ほど前だつたか八百長で香港競馬界から追放され(実刑で服役)、出所後に独逸の競馬界など武者修行し数年前にマカオに戻り今季やうやく香港での復帰認められた、地場騎手では不世出のTony Cruz以来の天才騎手と云はれた(説明が長いが)錢健明君がつひに晴れ舞台。でご祝儀で錢君騎乗のDANESISなる馬を「大脳」から流した脚に入れる。それがゲートインで暴れ退出処分となり掛金返還で火傷も大事に至らず。情けない話。予定の高座の時間が遅れ(ダービー観戦して戻れた時間)、夕方、高座まで中環を散歩。興利相機公司でバルナック型ライカIIIC型にエルマー50mm f3.5のレンズ付きでHK$7.5千、を見かける。せめて触れてみたい、と思つたが触れたら感染するのは間違ひなし。見なかつた、ことにしてその場を去る。一仕事済ませZ嬢とFCCで夕食済ます。尖沙咀に渡り香港文化中心。倫敦フィルハーモニー管弦楽団 (LPO)の音楽会。アタシにとつてのLPOはショルティからテンシュテットの時代。そのLPOを昨年から率ゐるのは1972年生まれのウラディーミル=ユロフスキ君。楽団付き作曲家 Mark-Anthony Turnage(1960〜)のEvening Songなる曲は現代曲苦手のアタシには全く理解不能。でJean-Yves Thibaudet(JYT)なる若い弾き手でラヴェルのピアノ協奏曲ト長調。こんな緩いラヴェルのこの曲は今まで聴いたことがないほど緩いところは緩く(悪い意味に非ず)テンポも柔軟で緩急が「ジャズのやう」(Z嬢談)。中入後にプロコフィエフ交響曲5番。LPOといふ老舗の楽団がユロフスキといふ若い指揮者を迎へ、プロコフィエフの5番といふ、政治的には「ソ連が迎へるべき戦後=期待」の讃歌でありながら混乱の第三楽章(アダージョ)の変則拍子の面白さ、そして4楽章の「なるやうになれ、戦後よ」とアタシには聴こえる不思議な曲を、20世紀にとつては前衛であつた曲を21世紀の楽団はかうしてみました、と我々に見せるやうな、そんな演奏が今晩のプロコフィエフの5番。昨晩は重厚にチャイコフスキーの「悲愴」を演じたさうなLPOが、今晩は20世紀の音楽を21世紀の楽団としての、これ。アンコールもアタシの全然知らない「20世紀らしい」小曲。……となると中入りでJYTがピアノのアンコールでショパン夜想曲2番を演じたのは、Z嬢の話ではJYTご本人が好きな曲ださうだが、今晩の演目には完ぺきにマッチせず。サティまでいくと違ふが、やはりラヴェルかドビッシーにすべきところ。今晩の演奏会が今年の香港芸術祭の閉幕ださうでロビーやバルコニーで観客全員に!Champagne(といふことだが発泡酒)がちやんとグラスで!振舞ひあり。大したもの。本日のVIPは政務司の唐英年君、Dow Jones株のインサイダー取引の廉で米国当局に巨額の罰金払ひ示談で済ませた李Baby國寶君夫妻(Babyが頭取の東亜銀行が今回のオフィシャルスポンサー)、曽財務司等、閉幕記念式典にロビーに設へた壇上に。維園阿伯ならぬ尖旺阿伯が市民に平等であるべき文化行事で式典に関係者だけがエリア内に入れて市民は取り巻きなのが解せぬらしく大声で罵声浴びせ、アタシら観衆は式典だけならつまらぬが、そのさまを眺めChampagne飲むのも愉快。今年の芸術祭は香港に居ながらにして紐育フィル、パルマの歌劇に倫敦フィルと満喫。文化中心を出ると政府庸人や罪界などVIPの自動車がづらり。かつてBMWの7シリーズづらりと並べ「たかが地方公務員が……」と嗤はれてゐた政府、ここ数ヶ月で政務司始め司長級の公用車をフォルクスワーゲンのPhaeton(フェートン)で一括入れ替へ。確かにVW社の最高級車(日本未発売)だが、どうもアタシには豊田自動車のLexusのLS系と同じで、ベンツSクラスやBMW7系と比べると「最」高級サルーンには見えず……つて、ところで、このPhaetonとLexusのLS600つて似過ぎてないかしら。
▼中国政府がチベット騒動につき「今回の乱闘や破壊、略奪、放火の憂慮すべき出来事は、国内外の反動的な分離派勢力が慎重に計画したもので、最終目的はチベットの独立」であり「分離主義に反対し安定を守るため、人民戦争を戦ふ。かうした勢力の悪意ある行為を暴き出し、ダライ派の醜い面を明るみにさらけ出す」と非難(Reuters)。この暴動で罪のない市民が巻き添へとなり家族を亡くしたり商店打ち壊しなど被害に遭ふ悲惨さをさかんに公開。パンチェン=ラマ君も中国政府支持する声明。ダライ=ラマ14世は「オリンピックは中国にとつての誇りとして開催されるべき」として「今回の暴動がチベット亡命政府側により策略されたもの、だとするならマスコミや専門家がそれを証すべき」と。信報は社説でチベットの経済成長、チベット系住民の就労安定などで北京中央はチベットに安定もたらしたつもりだらうが「人はパンのみに生きるものにあらず」で宗教や文化など侵犯されることでのチベット人の不満の大きさを指摘。

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三月十七日(月)曇天、気温摂氏24度、湿度95%、と香港らしい春。二更まで多忙。
朝日新聞(国際衛星版)の香港編集頁が終わり、地場広告の掲載も打ち切りの由(今月末)。香港国際衛星版の発行開始が1996年4月。その時に記念号に単発で文章書かせていただき(こちら、)、その後、日曜の香港版紙面で98年11月まで月一で連載書かせていただく。かつては我も彼も半日遅れの空輸の新聞を貪るように読んだが今では新聞読まぬ情報化社会、ネットでちょちょいのちょい。日本円で月8千円かけて新聞読む、って人はアタシも含めもはや奇特の部類か。
▼日本のカード会社が収益悪化受けマイレージ交換率見直し。三井住友VISAカードで、ANAとのマイレージ交換1000円=10哩がわずか3哩に。ざっと計算すると香港でアタシのカードだと、この日本での見直し後は日本で1万哩貯める間に4.85万哩になる計算。

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