富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-03-04

三月四日(火)朝四時半に起きちまひ読書、空が白む頃に新聞配達あり待ち焦がれたやうに新聞読み。老いた朝。快晴。ぼんやりと自動車に乗つてゐて(運転してをらず幸ひだが)突然、車が突然かなりカーブした、と思つたら反対にもカーブして、ハッピーヴァレイの競馬場横でこんな曲がり道はない、で眩暈。数年前、三半規管がをかしくなつた時も春だつたが、どうも暖かくなるが危なつかしい。どうにか歩けるので歩いてはゐたがちよつとふらふら。他人が見たら昼間つから出来上がつて、かなりいい気分のオヤヂの如し。大気汚染甚だしき中環ではThe LandmarkとExchange SquareでArt Moderneなる現代彫塑美術が繰り広げられ、旧スターフェリー波止場前の駐車場の屋上にはシャネルが世界各地巡回のZaha Hadidによる現代美術展(こちら)もあり未来主義の仮設美術館がぽわーんと。どうしちやつたの?つてくらゐデベロッパーがアート指向。小包が届き何かと思へば人形町のS嬢より嬉しい品々。まづ田中長徳先生の『銘機礼讃』の2と3の二冊。1は所有してゐたのでこれで三冊揃ひ。而も3は長徳先生サイン入り。それと松屋銀座の春恒例の中古カメラ市で限定発売の「高級加賀錦織り特性ストラップ」。所謂「真田紐」で真田昌幸、幸村が刀の柄を巻くのに使つたといふ云われのある加賀錦織のカメラのベルト……と書くとライカにミスマッチのやうだがデザインがとてもモダン。それと流失品なので余計なことは書かないはうがいいデータ本一冊。ありがたいかぎり。人形町、と思つたら突然、清壽軒のどら焼きが食べたくなる。
朝日新聞で最近、早野透の連載「ポリティカにつぽん」が俄然、元気あり。この早野透といふ記者さん、編集委員なのか正式な肩書きは知らぬが連載にはいつも「本社コラムニスト」といふタイトルで、名刺にも肩書きで「本社コラムニスト」だつたりすると面白いが、朝日新聞も疋田桂一郎に代表される朝日的な格調高い?文体であるとか、頭の中のOSがどうなつてゐるのかかなり疑問だが理論的な日本語作文としては名人芸の域の本多勝一とか、さういつたものに比べると、この本社コラムニストさんの文章は、なんだかボーツとした時代にあへてロック系とでも申しませうか、饒舌な句読点無しの短文での畳み込み。挑戦的、だが読み手によつては白々しさを感じる鴨。例へば昨日の文章から……
いったい日米安保条約で守られる「平和」とは何なのか。先週の国会で、少女を守れずしてこの国は主権国家かと民主党前原誠司氏が問えば、では自分で自分の国を守る体制をつくれということかと福田康夫首相は怒って答える。その夜、少女は「そっとしておいてほしい」と告訴を取り下げ、海兵隊員が釈放されるというやるせなさ。
石破茂防衛相が「ハイテクの極致」とたたえるイーズス艦、ハワイのミサイル防衛の訓練に疲れ、館長が居眠りしている間に千分の一の「親子船」を撃沈してしまうとは!
と、煽る、煽る。しかも坂口安吾の「堕落論」で話が進む。NHKのNW9ほどチープなセンセーショナリズムには陥つてをらぬ。が、なんだか鳥渡、読んでゐる方が恥づかしい。
▼ながく中環に居住の(いちじ澳門暮らしもされてゐたが)香港の趣味人・劉健威兄が中環を離れ最近、Quarry Bay(鰂魚涌)界隈にお住まひ。まだ遭遇してはおらぬが信報の連載随筆で「金峰」と「鯉景灣」と二日続けて、その界隈を取り上げる。「金峰」は云はずと知れた香港では最近、一、二位で評判の粥肆。それを健威兄が今更紹介、と思つたが、さに非ず。健威兄曰く、かつて中環ではスタンレー街の福満源の粥を好んだが、この食肆も店を閉ぢ、と思つたら、今度、この金峰に食してみたら、帳場に座してゐるのが、かつての福満源の女将だよ、と。合点。で健威兄も「鰂魚涌は奇つ怪な地区」と指摘するに、付近には太古城やコーンヒルに消費力ある中産階級が多く住まふのに、なぜこの界隈は飲食店が涸渇してゐるのか、と。その通り。所詮、出来合ひの市街だから、なのだが。出来合ひといへば「鯉景灣」も然り。健威兄が湾岸に狗を連れての散歩での飲食にも便利で、と讃めてゐるのにアタシは寧ろ驚く。鯉景灣、実は地主=経営者は同一。多種多様の飲食店が軒を並べるが、実はマーケティングの賜物で、一つの遊園地の中で違ふアトラクションに遊ぶやうなもの。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/
富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/