富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-03-02

三月二日(日)昨日に続く快晴で春の陽気。昨晩、暗い部屋の中でズミクロン35mmの試し撮りするとアタシが入手の8枚玉は近距離で今一つピンボケ。ピントを意図的に少し手前に合はせると冴える。困つたものだが、日光の下で遠くの風景に満足できるのなら、だいたいこのレンズは暗い室内で内装や人物など撮るんぢやないからコツをつかんでピントが合へば良い程度。いづれにせよエプソンのRD1sといふ「強い見方」が居てくれるからライカのMマウントのレンズの特性をかうして「撮つてはチェック」の繰り返しで垣間見ることが出来るわけで、これが銀塩だけだつたら何度フィルムで撮影して現像して、の繰り返しになることか、と思へば諏訪大社のご利益に感謝、感謝。今朝は熟睡でゆつくり起きて、とにかく「ああ、我に光を!」で中環へ。有機野菜の市が立ちZ嬢が野菜買つたり中環のエスカレータ上りLife Cafeなる、文字通り有機系の当世の流行でいへばロハスな食肆で昼餉。西班牙はラマンチャ地方の名前も知らぬ有機ワインが美味く、この食肆と同じ経営の食材屋が粗呆区にあるとZ嬢の話で食後、散歩してゆくと食材屋は畳まれ先程の食肆で食材も売つてをります、と張り紙。今更戻るのもなんなので坂を下る。今日の晴天での撮影は、8枚玉、白黒での「多彩さ」は云ふに及ばず陽光に日陰が黒い煙幕のやうに迫りくるやうなところはミヒャエル=エンデの世界か、そこに物怪でも潜んでゐさう。面白つ! 中環の街並みが70年代の東欧のやうな色彩に写つてしまふのは何故かしら。それにしても、かうなると生きてゐるうちに=惚ける前に、あとはスーパーアンギュノンとノクティルックス、あの世へ逝くのはこの2つのレンズを通して世間を眺めてからにしたい、と切に思ふ。帰宅して雑事済ませ日暮れまでピアノの稽古。ドライマティーニ二杯。揖保乃糸茹でて食す。ウオフ『国民の天皇』続き読む。
▼本日、紅磡の香港体育館にて芸人・肥肥(沈殿霞)の追悼会あり。肥肥の娘の、裏返せば晴れの舞台の姿に、まさに天皇崩御の時のやうな葬儀のもつ「代替りの要素」を見る。肥肥さん、確かに香港の70年代からのテレビ文化をまさに体現する芸人ながら、冷静にアニタ=ムイであるとか羅文であるとかにも勝るとも劣らぬ肥肥へのこの追悼の念の高まり、これは娘といふ後継者がゐることゆゑ、と思ふ。

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