富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-02-20

二月二十日(水)本日より松屋銀座恒例の中古カメラ市、と人形町のS嬢より便りあり。S嬢の仰有るとほり写真機愛好家の春の季語の如き催し。これが夏の季語なら
カメラ市 松屋銀座に 来夏かな
と一句詠めたんだが。今回の目玉は、さもあらむ、でコシナのフォクトレンダー・ノクトン(Mマウント)が限定百本の由。シグマのDP1も発売。この春の東京は足を踏み入れるには危険(笑)。昨両日は足腰の肉体的な痛みが今日になつて倦怠感甚だし。フルマラソンが余の如き基礎体力なき者にいかに苛酷かあらためて痛感。風邪気味。悪寒。早晩に帰宅しアラウさん演奏のリスト「超絶技巧」聴きながら山崎のお湯割り。Kadoorie農場の鶏肉で親子丼。雑誌『文學界』三月号読了。小林秀雄没後四半世紀の特集で橋本治茂木健一郎の対談読むため、であつたが、文芸誌の頁捲りながらあらためて自分が小説読みが苦手と実感。バーンスタイン先生指揮の紐育フィルでベートーヴェンの5番と9番を聴く。74年くらゐの吉田秀和さんの『音楽展望』読んでゐて無性に聴きたくなつたのだが第5も第9も、第5は第1楽章のあの「ジャジャジャ、ジャーン!」、第9は「合唱」が「聴くのが恥づかしくて」それでほとんど聴かずにゐたが、ふと第5は第2楽章から、第9なら第3楽章まで聴くと安心して聴ける大発見。
▼雑誌『文學界』三月号の書評で『エドワード・ヤン』(ジョン=アンダーソン著、篠儀直子訳・青土社)といふ、先頃亡くなつた台湾の映画監督・楊徳昌についての映画論の出版を知る。興味あるが評者(中原昌也)曰く「偉大なる才能の喪失」。寡作は寡作でいいのだが遺作となつた『一一』(邦題:ヤンヤン 夏の想ひ出)も含め個性的な作品こそ残したが申し訳ないが楊徳昌が映画監督として「偉大なる才能」とまで絶讃されるだけの作品を遺したかアタシは正直言つて疑問。
▼昨日逝去の芸人沈殿霞の一人娘鄭欣宜が記者会見。健気に微笑み語り始めても懸命に抗病の母の姿から「自己會爭氣、會乖,I'll try my best to learn to be a responsible woman.(盡我所能做一個有承擔的人) 我知道我媽咪只想我咁樣。Thank you」と語るとさすがに涙止まらず。タレントの記者会見といへば先日の「艶照門」芸人淫猥画像での半ば開き直つた「無涙」の会見彷彿。一般的には「あれに比べ、この母を亡くした欣宜さんの涙は……」と人々の共感あつめるだらうが、ただ一つ確かなことは、あの淫猥画像でもこの健気な欣宜でも「記者会見といふ「まなざし」の場での芸人の振る舞ひ」といふ点では等価であること。それを「どう解釈するか」が異なり正悪まで判断されるが、いづれも「さすが芸人」といふ点ではまさに「藝字是一門專業」なり。
海上自衛隊艦船が漁船に衝突の事故につき野党各党が批判、民主党鳩山幹事長が防衛相辞任求める。制服組責任者の職責問ふならまだしも大臣更迭したところで事故再発防止にならず。単なる野党の政策なき与党攻撃。だいいち石破先生のやうな希有の軍事オタクの他に誰が防相、他に誰が適材か。

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