富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-02-06

亥年十二月卅日。除夕。晩に尖沙咀にて招飲の約あり余の同伴致すA氏と北京道Delaney's酒場にギネス麦酒一飲。往路湾仔の高架道より見下ろせし鵝頸橋街市歳末の賑はひなれど尖沙咀の酒場は閑散。マルコポーロ香港ホテルの日本料理「西村」に食す。S女史らの招き受け末席汚す。歳末に海産の珍味多し。宮崎日南の京屋酒造の「甕雫」は甕に仕込まれた一升の芋焼酎。9人で一升半。除夜に向け尖沙咀の人混み。フェリーで港島湾仔に渡り帰宅三更に到る。
▼信報に作曲家Erich Korngold(1897〜1957)紹介のかなり長い記事あり。香港ショパン協会の音楽会にて来港のGary Graffman氏の弾く「左手のための」の作曲がこのKorngoldでチェコスロヴァキアの人。モーツァルトの再来と言はれしピアノの神童は二度の大戦に厳しい時代送る。
神里達博氏の「食の安全」に関する文章読む(5日朝日新聞衛星版「『昭和の日本』を二重写し ギョーザ事件から見えるもの」)。この餃禍の本質は対中不信に非ず、過度にグローバル化した我々の「食」のシステム、言ひ換へれば、先進国の中でも突出して低い自給自足率にこそあるもの。老舗の食品偽装も、バブル以降「成熟した文化」を売りとする国家への変貌を期待した日本にとつて、近未来の「中核産業」たるべき高級食材において不始末を見せつけられたことへの苛立ちであり、中国の食品安全への不信も食品公害頻発の「昭和の日本」のトラウマ、忘れかけてゐた過去の自分に似た他者との遭遇、不快な記憶の呼び覚まし、と。ふと井上ひさし吉里吉里人』思ひ出す。かうした戦後の偽善へのアンチテーゼであつた吉里吉里の共和国。あの、もう四半世紀以上前の疑問提示が何ら解決してをらず。

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