富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-02-01

二月朔日(金)毎年冬になると「寒波到来」だの「極寒」などと綴つてはゐるが北回帰線以北の人から見れば半ば冗談。それがだ、今年は深刻な寒さ。朝の気温が摂氏9度、とこれが尖沙咀の繁華街のど真ん中にある天文台の気温だから陋宅は二度は低い。毎冬、摂氏10度下回るやうなことは珍しくないが言はば瞬間芸で昼になれば気温は上がり朝の寒さが嘘のやう、とか二三日後には馬鹿陽気であつたりする。この冬はこんな寒空が何日続けばいいのか、建物もすつかり鉄筋コンクリートが冷え切つてしまつた。春節まで寒さ続く由。知人の地元T氏が日本好きで昨年、自宅の一部屋を日本間に改造、そこに炬燵まで置いてしまつたのを「香港でそこまでは……」嗤つて見てゐたが今冬は完ぺきにT氏の勝ち。毎晩、炬燵でさぞや暖んでをられるだらう。アタシはすつかり風邪つぴき。自宅では温風ヒーターつけたうへにマフラー、膝掛けまでして今、これを綴つてゐる。長年愛用のウォシュレットも温水と便座の温度を初めて「低」から「中」に調節。温暖化、夏の高温と冬のこの極寒。異常が当たり前なのは人間も地球も一緒、か。月本さん的に自分だけは軸を狂はせないやうに自律してゐることだけが大切。荷風散人も、さう。晩にすつかり高級食材になりつつある豚肉と白菜の豆乳鍋。熱燗。早々に臥床。
▼アタシが「よくわからない」ものの一つが捕鯨問題。これだけ国際的な非難の中、敢へて捕鯨続ける意味があるのか、逆に欧米の対日捕鯨バッシングもちよつと異常ぢやないか、日本が捕鯨は悪くない理由とする「鯨の数が増え過ぎると海洋生態系が崩れる」憂慮はどこまで深刻なのか、等々。農林水産省
今後世界人口の増大に伴ひ、地球表面の70%を占める海洋は、食糧生産の場としての重要性がより増大すると見込まれる。我が国は、海洋資源管理の経験も多く、世界的な海洋食糧資源の保存・管理にリーダーシップを発揮すべきである。
捕鯨の重要性を謳ひ、日本捕鯨協会は
捕鯨に反対しているのは、食料供給のため水産資源に依存する必要性が低い欧米諸国が中心です。一方で、国土を海に囲まれた日本としては、鯨類を含む海洋生物資源を人類の食料として有効利用すべきという主張を、粘り強く続ける必要があり……
と反論する。がGreen Peaceなんて引き合ひに出すと捕鯨反対の急先鋒すぎると思はれるかもしれないが同団体の日本支部星川淳事務局長の指摘(今日の朝日新聞)に言はせれば
年間1,900万トン(国内消費量の約3分の1)の食料を廃棄している国が、世界で一国だけ公海で野生哺乳類を年間1千頭以上を大量捕殺し続ける説得力は弱い。
といふのも確かに納得。捕鯨縄文時代から伝統的といふ言ひ分に対しては、
櫓船と網と銛を使った伝統的捕鯨では、鯨肉の流通は地域的に限られていた。明治時代に動力船と捕鯨銃によるノルウェー方式の近代捕鯨が導入されるとき、多くの漁民は沖の神であり、魚を追い込んでくれるクジラを見境いなく殺すことに反対した。鯨肉食は日露戦争以降の軍用缶詰で国民に広がり、いま年配者が懐かしむのは戦後の食料難を救つた鯨肉の味だ。はるばる南極海まで出かけて、捕鯨船で撃ち殺したクジラを洋上工場のような母船に運び、流れ作業で解体・冷凍加工する捕鯨が、日本の「伝統文化」だろうか。
と言はれると、確かに、と思ふ。捕鯨もこれもまた、日本人の弱い「伝統」で騙されてゐる一つかも。だいたい日本人が伝統と信じてる風習や生活文化の多くが実は明治以降の近代の産物であつたりする。

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