富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-01-14

一月十四日(月)地図オタのアタクシにしては遅ればせながら香港街道地方指南の08年版を漸く今日、購入。今年の付録は北京奥運記念で五輪会場施設紹介の北京市街地図。A3版だがさすが通用圖書有限公司らしい精緻さ、見事。北京動物園すら郊外、といふのが私の感覚なので三環、四環、五環と市街拡大し市街地図に西域の八寶山の革命公墓までが含まれることに驚くばかり。晩に北角の寿司加藤。七年近くお世話になつたH氏帰国で四名で送別会。桐之桃山なる麦焼酎をご主人より少しいただく。シングルモルトかブランデーの如き芳香は40度の減圧蒸留の原酒をシェリー樽で5年寝かした由。
▼昨日の普選デモ、主催者側発表では22千人、警察発表は7千人。讀賣新聞は「香港の民主派議員や市民ら約22千人(主催者発表)が」と記事に書いたのに対して、朝日新聞は「7千人以上が繁華街を歩き」と表現。警察発表より少ないはずはないから「7千人以上」は確かに間違ひないだらうが……。
▼先週土曜日の台湾立法院選挙。「野党国民党が与党民進党に大勝」と云ふに易いが実は得票率は意外と僅差で結果は大差。まづ選挙について。今回の選挙は225議席から113議席議席数半減したもの。04年の同選挙は所謂、比例代表制だつたが今回は113議席のうち比例代表制は34議席に削減され73議席が所謂、小選挙区制(残り6議席は3名選出の少数民族地区が2つで比例代表制)。国民党の得票は51.23%で民進党が36.91%だが得た議席は81:27と大差。国民党は前回225議席中83議席を占め、今回は増減だけで見れば僅か2議席増。民進党は89議席で多数派与党であつたものが今回62議席!失ふ。だが(選挙にお詳しいかたはもう想像の通り)小選挙区制導入で親民党は34議席失ひ1議席のみ、李登輝の台聯は12議席減で議席0、新党も1から0へ。日本で細川内閣で小選挙区比例代表制となつた結果が自民党に安泰を齎したと同様、与党民進党での選挙制度改革が国民党に有利に働く因果。これについて信報で練乙錚主筆が更に詳しく分析してをり、以下、紹介。前回の04年選挙での国民党:民進党の得票率は1:0.77で今回は1:0.68と、前回は民進党に投票し今回、国民党選んだ有権者はわづか30万人で有権者全体の僅か3%にすぎず。今回の選挙で比例代表制の34議席についてのみ見れば国民党:民進党の得票率は1:0.7で得票率をほぼ反映してをり、仮に113議席全てが比例代表制であつたとしたら国民党と民進党はそれぞれ66議席と46議席獲得で、国民党の勝利は揺るがぬが民進党も今回の86対27といふ惨憺たる結果には至らず。わづか3%の有権者が前回は民進党に投票したものの今回は阿扁総統に嫌気さした結果が国民党に大勝もたらす。選挙の面白さといへば面白さ。だが、この程度の民意が国政を左右する危ふさ。而ももつとも憂ふのはマスコミの大部分が「国民党大勝」とのみ伝へること。
▼「民衆運動」について(一橋大学名誉教授(日本思想史)安丸良夫氏)。民衆運動に「暴力、狂信のラベル貼る前に」と題して(朝日新聞より引用)家族やそのほかの共同団体の資本主義的経済システムへの順応力・可塑性には限界点があり、それを越えると被抑圧者の側は新たな集団を構成してその結集力を高め、日頃の存在形態からは思いもかけないほどの激しい活動性を発揮することが少なくない。(略)私たちは、宗教的急進主義やナショナリズムと結合した諸運動について、ほんの表面的にしか知らず、よく知らないことについては自分の日常意識から排除して、暴力や狂信のラベルを貼って済ませているのではなかろうか。民衆運動には、外部の観察者には、一見、非合理的でわかりにくいところがあるが、そのことの大きな理由は、被抑圧者の側はみづからの社会的な劣弱性をコスモロジー的な優位、とりわけ宗教的なそれによって代替するからである。(略)(民衆運動は)たいがいこの世界の大きなシステムのなかでの葛藤・相克の表現であり、私たちが生きている全体社会の不調子・不調和の表象である。

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