富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

六月十四日(火)四時間弱の睡眠でかなり眠いが諸事忙殺されたも幸いか。午後から雷雨甚し。近所のジムのサウナに一浴し帰宅。ビビンバ。昨晩痛飲でもまた反省も浅くビールぐいぐいと飲む。あらためて美味と思ふ。NHK「義経」ビデオで見て早寝。
▼信報で昨日より十七回連続で練乙錚氏の連載あり。練氏は元「信報」の若手副編集長で98年より香港政府中央政策組の顧問に就任するが昨年七月に更迭され(富柏村日剰04年7月6日参照)練博士は人生の休暇で英国で航海学校に通ひ精悍な姿で帰港。で今回の回顧録。興味深い。昨日は深酒で新聞も読めなかったが昨日の初回で指摘するは香港の97年以降の政治問題でいくつかの大きな錯誤挙げ、まずは97年を境に香港の政財界人士や香港「植民地政庁」の高官が香港「特区政府」の高官となった時の変節ぶり。公務員として香港自治に当たる点では植民地→特区で何も変節は必要ないはずだが(以下、富柏村私見)結局は植民地時代の英国への「諛い」が返還後は厚顔無恥で北京への諛いに変節。それで練博士が挙げたのが前・保安局長の葉劉淑儀で(葉は03年の保安条例立法化失敗で実質的な更迭で現在米国に居住)02年の春練博士はゲシュタボ葉女史に「信報立場頑固如一、想必是林家掲錯了皇暦?」に言われたことを回想。訳すと要するに「信報の立場って頑固一徹であの連中(林家→信報社主林氏ら一派、当然、元編集者の練博士も含む揶揄)はいつまで昔の尺度で見ているの?」と(「掲錯了皇暦」は占いの暦本が間違ってる、で暦本は皇暦とも呼ぶが(中国語では一般的には暦書)「皇」暦と言うことで葉女史は皇室で英国を暗喩している)。練博士はそれを否定して「信報はただ共産専制主義に対する見方が97年返還の前も後も変わってないだけでしょう」と答える。この葉女史に見られる変節がまず第一。そして香港の政治環境として、その大きな矛盾を指摘。矛盾とは香港に見られる「言論上の高度な自由と政制上の民主制の低さ」。本来、民主と自由は相関し平衡するものだがこの不均衡。そして三つ目に挙げたのは、これは中国の1949年以降の政治状況で最も重大な錯誤であるが「極左」の台頭。香港でも97年以降、親中派極左勢力に発言力が増し「愛国愛港」などスローガンに董建華中道左派的な親中派にまでも不要なシフトを強いた事実を挙げる。御意。
▼聴き損じたが天主教香港教区主教・陳日君君(陳日・君でなくて日君が名前、で陳・日君・君)がFCCで講演し中国とバチカンとの関係などについて述べる。バチカンと北京政府との間でunofficialな接触があったことを認めたが北京側の関係改善にむけた姿勢は積極的でなく宗教の自由について合意が得られていない、と。また記者からの質問で天主教が香港で同性愛に対して非寛容な態度であることを問われると同性愛については教会の立場は一貫している(つまり反対)と強調。これで髣髴するのは香港でのカソリック教会での神父による一連の教会の通う少年に対するマイケル=ジャクソンな行為。教会こそ伝統的に同性愛を温存でないか?といふ気もするが、だから禁忌か。禁忌(タブー、ご法度)はその事象への欲望の裏返し。しかも禁忌とすることで厳禁されるが実は法度する側から他者への禁止であり、その禁止された行為の自らの独占が真実。してはいけません、とされる行為を内々で密行すること。これが禁忌。と考えれば天主教が同性愛解禁としてしまっては教会的には「つまらない」のかも。
ピンクフロイドが七月にアフリカ貧困救済を主要議題とするグレンイーグルスでの強国首脳会議(先進国といふ言い方が偏見的で主要国とするようだが事実は強国が正しいはず)に合せて実施のLive 8で復活公演とか。朝日新聞は「25年ぶりに全盛時のメンバーで復活」ってロジャー=ウォーターズも加入?……まさか、と思ったが本当であった(こちら)。七月二日に倫敦まで行きたいところ。無理か。
▼自由と民主主義の国、米国にてマイケル=ジャクソンさんが無罪判決。検察側が“疑うに足る証拠”を提示できず疑わしきは罰せず、か。どうせなら日本の最高裁から藤田宙靖君遣れば有罪だつたか。いずれにせよマイケルさんが牢屋に入つてしまつたら「見れない」わけで奇妙なマイケルさんは美しきものが醜悪なる成れの果て、といふのは見世物小屋の怪人たるべく見世物であるべき、が今回の善良な陪審員の判決の深層心理かも。

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