富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2002-11-21

十一月廿一日(木)曇。鮪の中落丼など食し晩酌にてNHKニュース10眺めていればニュースがないの かStradivariusの中でも絶品とされる幻の名器が蘇りその音色を、と、で、出てきたのは千住真理子。バイオ リン界の松田聖子か、と思われていたがNHK教育テレビで「趣味悠々」だの「週間ボランティア」だのといった地味な仕事も精力的にこなし見事NHKの覚え よろしくNHK朝の連続テレビ小説「ほんまもん」の音楽を兄の千住明が担当で千住真理子が演奏とかNHK貢献度ピカイチ。ニュース番組だってぇのに小曲ば かりながら4曲も演奏。もうこなると、これはNHK、これは楽器蘇るなんて報道ではなく千住真理子の売り込み。でこのストラヂバリも本人の財力だけじゃ入 手し得ぬわけでビクターは当然として愛宕山も、 おっといけねぇいけねぇ愛宕山なんていっても今の若い方はわからねぇ、神南だな神南、JOAKは神南に御座い、ってなんだJOAKも知らないってかい、 まったく嫌だねぇ神南っていふからにゃ何処に神様が御座すって、そりゃてめぇ明治神宮に決まってるじゃねぇか、明治天皇をお祀りして……えっ、高円宮様が ご逝去だってよ。ほんとかぉ、まだお若いってぇのになぁ。といふわけでニュースのあと人間ドキュメント「生涯一エンジニア〜ノーベル化学賞田中耕一さ ん」といふ地味な番組を眺めつつ姜尚中の『ナショナリズム岩波書店に目を落とした矢先、高円宮の逝去を知る。カナダ大使公邸に てカ大使ロバート・ G・ライト君とスカッシュ中にお倒れになった、と、何故にカナダ?何故にスカッシュ?かと思えばカナダのクイーンズ大学に留学したことあり日加協会の名誉総裁を務め今年2月には日本スカッシュ協会の名誉総裁にも就任、となるほど甚だ判り易し。皇位継承順は皇太子殿下、秋篠 宮、常陸宮三笠宮、同宮家の寛仁親王桂宮に続き第七位と末に御座しながら、病院に付添ったのも妃、三宮女、母宮と寛仁親王妃(桂宮がお見舞いに、とい う社会面報道はあるが)とお妃と宮女ばかりで、三 笠宮のご高齢、兄宮にあたる桂宮の病気など思えば、皇室に男のお子なきなかでは実質的には近い将来には皇位継承三、四位にあられるはずのところ。 普段はひっそりとした宮内庁のサイト閲覧する国民多くまことに繋が りにくければ国民の皇室に対する関心の高さに心打たれる思い。
▼新聞広告に文春新書『ウィーン・フィル 音と響きの秘密』(中野雄)で帯に「小澤征爾ウィーン・フィル  東と西の「音の戦い」がいま始まる!」だって。これ見たら小澤先生「だからボクは国立歌劇場の……」って講釈しそう(笑)。
▼香港に華懋集団なる大手不動産会社あり。王廷音なる創業者あり現在この会社を取仕切るは愛息の嫁に当る龍 如心、本来後継者は愛息王徳輝のところ徳輝一度身代金目的の誘拐に遇い二度目の誘拐で行方不明となり徳輝は死亡扱いとなるが、この龍如心、渾名を小甜甜(キャンディキャンディ)といふほどにて中年のオバサンながらいがらしゆみこのキャンディキャンディそのままの服装と飾りで異彩を放 つが商才に長け彼女が陣頭指揮してから華懋集団破竹の勢いにて大財閥となる。ただし創業者王廷音にしてみれば愛息は行方不明のま ま、嫁の活躍に安堵するどころか徳華生前に自らに不幸あれば資産小甜甜に遣る旨の書状遺し、これをめぐりその正当性を主張する小甜甜と老姑との間にて裁判 沙汰。本日高裁での判決あり小甜甜への遺産譲渡を認めた書状の徳輝の署名は偽造という判決あり財産譲渡の有効性を否定。醜聞好きはひょとして徳輝の「他界 も?」と当然のことながら猜疑。さながら火曜サスペンス劇場ならこの主人公なる女性は風吹ジュンあたりか、私なら市原悦子だねぇ、って感じだが、この「飾 らずとも地で水森亜土なみのキャラ」がキャンディキャンディしてしまったといふ超シュールさがまさに現実は小説よりも奇なり。
▼築地のH君との文通はこの日剩にても繁く紹介しているもののH君の経歴だの現状だのを新聞記事、それもH 君を敵と見做すであろう某新聞が記事にしたらどうなるか、といふ摸造記事を捏造して遊ぶ。かなり面白いがH君の個人秘匿に値する部分のみにて此処には紹介 できず。かうしてH君と繁くメールにて文通しているとこの知性と趣き(笑)は『チボー家の人々』のジャッ クとダニエル、ジャックの兄アントワーヌとの交流、または中江兆民の子で北京に暮らした丑吉と鈴木言一との、または内山完造と魯迅先生の如きもの。ふとさ ういった友情についてH君、雀右衛門の例を引き先代とは血縁も芸の上での継承関係もなき当代が京屋を襲名したきっかけの一つが「先代の息子さんが、それは もうよくして下さて、兄弟のように育ったんですよ」という話。その先代の息子さんも雀y(これでJackyと云ふ)と 同じく応召して南方で戦死。六年間軍用トラックを運転して一人生還した雀yが亡き友の継ぐはずだった名跡を名乗り今では平成の立女形。この「先代の息子」 との関係を軸に雀yの一生を小説で読みたい、とH君。とくに戦地での物語が軸になるかと思えば児島襄、しかし京屋の個性からすると大岡昇平でも足りずやは り大西巨人か、と思ふ。