富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十月初四日(金〕薄曇。昨日日経平均株価は9,000円を下回りバ ブル後の最安値を記録。晩にNHKニュース10を見れば奄美大島沖の北朝鮮工作船の全貌が明らかにと海上保安庁の発表がトップニュースにて日本での工作員 の送迎が目的であるとかプリペイド型の携帯電話は日本に潜在する工作員と連絡をとるためと当たり前のことを神妙に報じる。密漁に来たわけはなく観光旅行で あるはずもなく携帯電話とて北朝鮮への土産のはずもなきことなど明白であるのに。そして拉致問題。バブル後の最安値明けの今日の市場報道は番組始まり23 分後。「暗い北朝鮮」ネタ終わって、東京株式市場は午後に東京証券取引所を視察した小泉君が「貯蓄を投資に向かわせる分かりやすい税制を目指す」と発言し たことを受け5営業日ぶりに反発し前日比91円12銭高の9027円55銭とアナウンサー嬢はいたって明るい表情。小泉君微笑み「いまを最悪と考えず、最 安値をここがチャンスと思わなければ」だとかと発言、この人はサメの脳味噌と誉れ高き前首相以下かもしれぬ。そりゃ安値で買い高く売るというサルでもわか る株の原則にて、首相が経済建て直しにむけ政策を組む時に口にする言葉でなし。最安値こそここがチャンスなら今まで何度チャンスがあったのか、これからも まだまだチャンスがあるということか(悲)。呆れてモノも言えず。投資益(キャピタルゲイン)など香港は無税であり、わかりやすい税制目指すまえに香港を 真似ては如何か。北朝鮮の脅威に怯えるまえにバブル崩壊から立ち直るどころか底なしに沈んでゆく自国の脅威を真摯に受け止めるべき。
▼師走の歌舞伎座は沢瀉屋、大和屋に中村屋という華の競演にて晝は紅葉狩 りにて更科姫実は戸隠山の鬼女(玉三郎)、山神(勘九郎)に平維茂猿之助)、夜は通し狂言椿説弓張月は沢瀉屋宙乗相勤メ申シ候ところ勘九郎が噛んで堂 々たるケレン競い。曲亭馬琴のホンで三島由紀夫演出に大和屋といえば彷彿されしは昭和44年まだ無名でありし玉三郎(19歳!)は三島先生に引見し、確か 国立劇場の喫茶室にて誰だかに紹介され白いタートルネックのセーター来た玉三郎少年に邂逅と先生の随筆だったかに記述あり、先生惚れ込み新作「椿説弓張 月」の白縫姫に抜擢し、これが好評を得て玉三郎が一躍若女形として喝采を浴びたる事は世に知れた話。先生「玉三郎君のこと」なる文章(昭和45年)に「そ の奇蹟の待望の甲斐あって、玉三郎君という、繊細で優婉な、象牙細工のような若女形が生まれた。(略)玉三郎君という美少年の反時代的な魅惑は、その年齢 の特権によって、時代の好尚そのものをひっくり返してしまう魔力をそなえているかもしれない。」と綴る。築地のH君に早速メールすれば「マックイーンと ポールニューマンが無理矢理共演した「タワーリングインフェルノ」みたい」な組合せ、見逃せず、と。続けて、弓張月のケレンの一番の見せ場は実は主役の為 朝ではなく高間太郎の切腹(これを今回は勘九郎)舞台中央で切腹する高間太郎の上から巨大な波が覆い被さり高間太郎はそのままセリにのって舞台下にさがれ ば大波が引いたあとに残る一面の大海原……といふこの演出が三島先生自身の発案にてまさに三島流「切腹の美学」の結晶、とH君。この昭和44年11月の公 演より丁度一年後に市ケ谷にて自ら高間太郎を演ず。で、ふと気になりその昭和44年11月三宅坂での高間太郎が誰かといえば猿之助(30歳)!で為朝は先 代の幸四郎。沢瀉屋と大和屋は今回の弓張月で当然初顔合わせかと思えばさに非ず。まことに面白きこと也。