富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

四月十七日(火)賈樟柯監督の『站台(Platform)』を観る。賈の生まれ故郷である山西省の田舎町を舞台に文革末期、共産党の宣伝音楽隊に参加していた若者たちは党のプロパガンダに従い謡い踊るが、もちろん本当に好きな音楽はポップスであったりして夜な夜な音楽に酔うのだが、山西省の田舎にも徐々に開放経済が入り込む様は、彼らが巡業から帰ってくる毎に街並みに少しずつ広告看板が増え人々がお洒落になっていき、驢馬がバイクや自動車に変わっていくことで判るのだが、彼らも舞台から徐々に党のプロパガンダは消えて自分たちの好きな音楽やダンスに様変わりしていっても、観客だってかつては何の楽しみもなく党の宣伝だって舞台に歓声をあげていたのがテレビやラジオから最新の流行音楽を得ているので彼らの田舎ミュージシャンの舞台など面白くもなく、彼らは客を得ることはできず、だんだん最果てへと巡業場所を移して遠のいていくのだが、それでも流行の進出は凄まじく遂には彼らはもう演奏する舞台をなくしてしまう、その僅か10年の間の凄まじい変化を描いている作品。多少散漫な演出もあるが、この音楽隊を通じて中国の変化を描き、何がいいわけでないがかつての中国にあった何かが経済発展で無くなっていることを暗示するのが、1973年生まれの監督の為した作品だと思うと立派、音楽隊は建前から本音の音楽になっていくのに観客は建前でも喜んでいたんが本音になったらもう感心もなくなっている、という不条理、かなり小津的な静寂や制止があり、シネスコの画面の使い方もかなり小津的、でキャメラワークは大変よくシネスコの中での人物と風景の構図は最高にいい出来なのだった。Z嬢の隣りに許鞍華監督、煙草の臭いが体臭となっており映画の最中はガムを三枚一口で噛んでいたそうな。映画終わってM女史と遭遇、芸術中心の楼上のカフェにて映画談義、サンミゲルの生ビールがあまり売れないのだろう、もう酸化していて、しかも水がすげー悪くて最高の不味さ、このカフェ、眺めは最高だがキャフェとはどういうものか芸術中心も職員も全く理解できないまま運営されている悲しさ。中文大の某修士課程のS嬢と合い日本人倶楽部にて食事しつつ彼女の研究のための材料としてコメント、S嬢が録音するというから倶楽部の食堂は静かでいい、と。Z嬢とGo Go Cafe、夜遅くでもかなり客ははいっているが、やはり飲むだけの意図で行くと日本の喫茶店のパスタを茹でピラフを炒めケチャップとバターのにおいが強くてちょっとツライ。