富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2016-02-01

農暦十二月廿三日。雨のち曇。また寒くなる。晩には摂氏10度だとか。陰暦正月に向け暮れの慌たゞしさか道路も電車も混雑。晩に紅磡站そばの日本料理・竹乃里でI氏と飲む。鹿児島の芋焼酎で太久保酒造の「森の妖精」勧められ飲む。焼いも焼酎といふことで芋焼酎と何が違ふのか?と思つたら従前の芋焼酎は芋を蒸してから醸造に入るが、それが「焼き」といふこと。晩九時すぎにはお開きで真面目に帰宅。
原節子が昨年亡くなりコメントいくつか読んだが週刊読書人(1月22日号)で蓮實重彦が伊藤洋司(中央大・仏文教授)相手に「原節子と日本の名女優」と題したインタビューあり、これは期待して読む。蓮實先生は映画は監督や作品で論ずるので俳優を直接論ずることはなく、このインタビューもそれを避けたいとしつゝ結局は「あの女優のこの作品のこの演技がいゝ」といふ話になつたことは、通常さういふ話のない映画論の人にとつては稀なこと。蓮實先生が朝日に書いた追悼のなかで挙げた原節子の作品は戦前の山中貞雄監督〈河内山宗俊〉と戦後の成瀬巳喜男監督〈山の音〉で意外でもなく小津作品を意図的に外す仕業。二人の話は女優論ならぬ女優話となり小津作品で杉村春子香川京子の泣き方と原節子のそれはどう違ふか、成瀬の映画は女優をどう上手く見せるか、演出の何が見事か、通人の話が面白い。〈東京暮色〉の再評価。マキノ正博監督〈阿片戦争〉と〈上海陸戦隊〉で中国娘演じる原節子(見てみたい)。春子、秀子、五十鈴(東京暮色では原節子の母親役だつたが年の差はわずか3才!)、五十鈴の成瀬〈鶴八鶴次郎〉の傑作、岡田茉莉子若尾文子香川京子と出てくるが何と言っても木暮実千代……納得。これだけ女優話した上で蓮實先生曰く

俳優について観客が抱くメンタルイメージが社会的に共有されるとき社会的イメージとしての〈スター〉が成立します。それこそ原節子の場合「永遠の処女」とか「銃後を守る」といったスターとしての社会的イメージが作られていますから、語るのは尚更難しいです。そのようなイメージは画面というビジュアルイメージとはまったく違います。そこをきちんとわけて論じなければいけないということですね。

▼マスコミ各社の内閣支持率のきなみ上昇で毎日新聞では支持率51%である。甘利大臣辞任も「この人が内閣で重要な位置で重要な仕事をして起用じたいは問題はなかつた」といふ雰囲気醸し出し支持率的には回避は見事。但し、この支持率は首相評価ではなく消極的支持の増加(川上和久教授・明治学院大)。民主と維新が新党結成するとかしないとか、共産党提唱の連合に対応するかしないか、結局のところ「野党は相変わらずダメだ」といふ失望が相対的に首相期待につながる、と。
▼日経で「日銀頼みの再生、限界に」といふ、日経にしては珍しくアベノミクスに厳しい見出しの記事あり(こちら)。期待して読んだが最後は

  • 日本には有能で我慢強い人々が多く、技術も資金もある。中国発の経済低迷で大打撃を受ける前に、この国の底力を生かして実効ある再生策を進めたい。

って何ら具体的な提言もなし。
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