富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

澳門に遊ぶ(二日目)

fookpaktsuen2012-03-22

農暦三月初一。風邪の具合が悪くなり朝餉を軽くとつてからも部屋で休養。何年前だつたかPousada De Sao Tiagoに泊まつた時は高熱で部屋を引き払ふまで寝てゐたが今日は熱はないが起きてゐると咳がひどい。Z嬢は朝餉のあと出街。本を読むにも咳止めの薬の所為でぼんやりとして本にも集中できず寝たり起きたり。昼前にフェリーターミナル行きのシャトルバスがあり部屋引き払ひ、それに乗る。フェリーターミナルで荷物預け空港巡回の路線バスに乗る。市街通らず友誼大橋渡り氹仔へ。氹仔(タイパ)で路氹(コタイ)地区のカジノ客誘致のため拡張進むフェリーターミナル、空港、今度はホリデイン、コンラッドシェラトンの三聯荘が間もなく出来上がる(ここも躯体工事終はつてから暫くは工事中断していたが)路氹などバスの車窓から社会科見学。氹仔でバス乗換へ路環(コロアネ)の黒砂海岸。うすびのさす長閑な昼どきで公園で缶ビール飲みながら新聞読んでZ嬢を待つ。Z嬢来て黒砂海岸にある葡萄牙料理のフェルナンドへ。かなり著名な、観光ガイドでも必ず紹介される食肆。黒砂海岸へも何度も来たが、この肆は食したこともなく「せつかくだから一度くらゐ」と今回。外観は地味な、まるで潰れてしまつたやうな店構へは看板も出てをらぬが店内に入り厨房の更に奥の食堂に通されると(といふか勝手に奥に行くと)広い食堂は平日の午後一時半すぎでほゞ満席。観光ズレしてゐる、と勝手に思つてゐたが常連らしき地元客も少なからず。料理のメニューは至つて簡単明瞭。ワインもセラー(らしき場所)に入り自分で選べといふ。ハーフの赤葡萄酒、カルドベルデ、小学校の家庭科実習のやうなサラダ、バカラオのコロッケ、豚足と豆の煮物をシェア。とても単純な味付けで初めて馴染みのXiolas O Castiçoは「味付けには拘つてゐる」と思はされたほど。もう一度来るか、といはれたらアタシは来ないが「なるほどねぇ」とヘンな感心のフェルナンド。路線バスで市街乗換でフェリーターミナルへ。晩の乗船券持つてゐたのでウェイティングで早帰りのつもりが、さすがに平日午後で待ちなしで15:45のジェットフォイルに乗船可。悪寒もひどいが窓際の席は快晴のひざしで温かい。香港に戻りそのまゝかゝりつけC医師の診療所へ。いつも養和や他の病院に先に行き治らずC医師の診断請ふと、どこかの病院の処方薬を一見して「これぢゃ治らない」とC医師は決まつていふが今回は「胃、頭痛、鼻水……諸症状の鎮痛剤はくれてゐるけど」とつぶやき「インフルエンザだね、この症状は」と。「タミフル、服してみる?」とC医師。アタシはタミフルは未だ試したことがない、だうなの?と尋ねるとタミフルにするといふ患者と拒むのと半々かな、とC医師。一旦、断つたがどんな回復を見せるのか、何か違つた世界が垣間見えるのかしら?と気になり「やつぱりタミフルにしてみようかしら」と言ふとC医師はアタシのおクスリに対する好奇心を読んだのかしら「いや、タミフルが効果的なのは初期で、三日目のやうな症状ではあまり効果がない」と喉の炎症には抗生物質を出すから、で手打ち。帰宅して睡眠。熱が摂氏38度まで上がる。蕎麦を煮て食べて睡眠。
▼歌舞音曲の世界では、本当に感覚が麻痺する、奇想天外な舞台が目白押し。日本語ミュージカルにもヅカにも新宿コマにもいろ/\それが好きな人にはたまらない良さがあるのでせう。この世界が凄いのは高尚とされる舞台と下世話な旅芝居がつながるやうなところで、河原乞食芝居が発展して歌舞伎になり天覧にまでなつたやうに、これを突き詰めると「差別と天皇制」の問題になるが「趣味の悪さ」がむしろ大衆受けするのは「天井桟敷の人々」に出てくるやうな巴里の下町の娯楽街から浅草六区、歌舞伎まで一緒なの加茂。そんな流れで日生劇場四月の「滝沢歌舞伎2012」も凄いと思ふ。松竹のメールマガジンによれば

第1部では春の踊りから影絵、和太鼓の連弾など和の世界からNew Mask、Danceなどエンタテインメントの世界まで魅了!さらに歌舞伎の名場面を滝沢流アレンジで一気に演じていきます。そして第2部では三度平将門を題材にしたお芝居の世界となります。前々回、前回と滝沢秀明が初めて挑んだ悪役が大きな話題となりましたが、更に練り上げ、平将門に再び挑戦いたします。また大きな話題を呼んだかつてないフライングパフォーマンス“4D”は今年も健在!パワーアップしてお届けいたします。

と目眩しさうなくらゐゴテ/\のエンターテイメント(平将門はけして「悪役」ではないのだが……)。明治座常連のオバチャンたちも素直に愉しめるジャニーズ芝居。これが「日本を代表するエンタテイメント」といはれると三歩くらゐ退いてしまふがガイジン相手の「はとバス」の松葉屋お大尽遊びから「伝統もクソもない間違つた伝統芸能」こそ「傾く」基本なのかしら。ジャニーズに詳しい築地のH君は、今でこそ「オシャレでカッコイイ」ジャニーズタレントだが「本来のジャニーさんの世界」は「外人が喜ぶ『和の世界』」って感じぢゃないかしら、と。少年忍者に「お祭りマンボ」歌わせたり「男闘呼組」など外人向けのお土産Tシャツみたいなネーミングセンス。SMAPの成功で事務所全体がジャニーさんの世界観からズレてきたが、それが売れてるから非ジャニー路線でもそれは動かせない。このヘンなエンタメ芝居路線のタッキー一人で「ジャニーさんのドリームを実現している」ってことではないのか、と。ウケる、ウケないからは超然として「本当にやりたいこと=滝沢歌舞伎」でジャニーさんもタッキーに「ユーはよくわかってるね」とご満悦かしら。