富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

バド=パウエルが啼き止まない晩……なんてね

九月廿二日(木)曇。Gastro-enteritisの症状続く。ふら/\だつたが外せぬ打合せもあり何とか済ませて帰宅。本当なら卵酒でも飲みたいが「月の井」を冷やで正一合。少し寝る。昨日に続きハルキムラカミ「ねじまき鳥クロニクル」読む。第1部の残り三分の二と第2部(了)まで六百頁くらゐ続けて読んでしまつた。遅読のアタシにしては画期的な読書。それほどハルキムラカミはやはり面白いか、といへば、それを肯定しないのも何だが普段は小説は殆ど読まず読む本はかなりノートにメモをとつたりしながらが多いうえに酒を飲んでしまふので酔つて寝てしまふから遅読だが小説だと、とくにアタシの場合、地の文は面倒なので治さんの「桃尻」のやうに地の文が余程面白い場合を除き「あヽ、何をねち/\と」と説明っぽい文章は平気で斜め読み。それで四時間で六百頁は24秒/頁で2.5頁/分となる。もと/\ハルキムラカミは苦手なのだが読んでみると、やはり感性に乏しいアタシには「何だかよくわからない」。でも読んでしまふ、読ませてしまふところが(海辺のカフカもさうだつたのだが)ハルキムラカミの確かに大したところなのだらう。じつはハルキムラカミの小説は「つまらないんぢゃないか」と思つたりもするが石原慎太郎や小泉三世のことなどいくらでも罵倒できるアタシも「村上春樹はつまらない」とは言はない。都知事選で石原慎太郎の得票数が300万票でも都民で村上春樹のファンは300万人よりもつとゐさうだから怖いのではなく石原慎太郎の発言は何が間違つてゐるか、石原慎太郎は何が弱虫なのか、は指摘できても村上春樹は何がつまらないか、なんてことがアタシ自身、ピンときてゐない。アタシにとつては三平(先代)、談志師匠の落語と同じなの加茂。でも一晩で600頁も読んだ、これは僕にとってバド=パウエルのブルーノート版のLPを一晩でぜんぶ聴いてしまって以来の、僕にとっては全力疾走だった……なんてね。

ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)

ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)