富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-07-05

七月五日(土)快晴。炎熱的夏日終於来臨。北京は長雨で地下鉄站の水没もありの由。午後、香港で日本語を三年弱学んだ人たち数名と話す機会あり。珈琲の話題となり星巴珈琲と香港の地場のパシフィック珈琲のいづれが好きか?といふ話題になつたら、一人の女性が「スターバックスはコーヒーショップぢやなくてミルクショップですよ」と(日本語で)言はれる。御意。確かに一軒の星巴で日に何本の牛乳パツクを消費するか。少子化の話題となると一人の男性が「香港も日本と同じ少子化ですが香港には中国から若い人がたくさん来て住みます。だからまだ大丈夫。日本はどうするんですか?、若い人がゐないし外国人は入れません」と言はれ言葉もなし。午後、外を歩けば猛烈な日照に辟易。夕方、湾仔のフェリー乗り場など当たる筈のない角度からの猛烈な日差しに何かと思へば鏡張りの超高層ビルからの反射。尖沙咀に渡り久々にペニンスラホテルのバーにドライマティーニ一飲。Z嬢とスヰンドン書店に待ち合はせ漢口Rdのインディアパレスなる印度料理店で夕食。Quarry BayにあつたMother India(已閉業)の姉妹店と聞いて訪れるとかなりの繁盛。殊に気軽な服装から見るからに米国人客多し。香港文化中心。香港フィルの今季最後の音楽会。今季はこれまでになくHKPOを聴く機会あり。来季の先行予約も始まつてはゐるが昨年のこの先行予約で知つた五嶋みどりとて六月の公演の数日前でまだ入手可、で結局、客演がユンディリ、ランラン、ヨーヨーマ(つて、なんだか中華街の芸人の如き名前ばかり)でもない限り前売り即刻完売にはならぬ、といふこと。今晩は、エド=デ=ワルトさんはすでにお休みで先週末の五嶋みどりの時に続き指揮はDavid Atherton氏、でショスタコーヴィッチの交響曲第7番「レニングラード」の演奏あり。この大曲、大編成であることと曲の長さが障り来港の海外オケではまづ演奏されず。で地場のオケのこんな機会でもなければ、まづナマで聴く機会なし。香港フィルとて、それでも金管など当然足りぬから助つ人が要るわけで他の楽団がそろそろ避暑に入るこの季節でやうやく実演可といふところ。実際に香港シンフォニエッタマカオオーケストラ、他に無所属の演奏家など20名近し。前半はフンメルのトランペット協奏曲ホ長調。トランペットは英国からのAlison Balsomなる別嬪なソリストこちらは彼女の吹奏するパガニーニのCapriceの24番)。で中入り後が「レニングラード」。学校が暑假となり子ども連れ多し。だがショスタコーヴィッチのこの曲はよつぽどのクラシック好きなら別だが聴かされる子どもには酷。親も「クラシック音楽=教養」程度の認識で本人もよくわからず連れて来るのだらう。香港フィルもどうせなら「夏休みの子どものためのモーツァルトコンサート」でも開催すべき。さて「レニングラード」だが、大曲なのか壮大なる愚作なのか、とよく言はれるが、アタシは大曲と思ふ。だが1941年といふ戦時下で、ナチによるレニングラード包囲戦ばかりか、ショスタコーヴィッチにはソ連プロパガンダをどう反映させなければならぬかといふ命題もあり、さういつた困難が錯綜する中で「まとまりきれない」状況は、それだけでその時代を見事に表現する。演奏はこの壮大な曲を香港フィルがどこまで演じるか、がやはり気になつたが第1楽章の冒頭からの主題はちよつとぎこちなかつたものの有名な「戦争の主題」からは期待以上。第2楽章のスケルツォが殊に上出来。第4楽章のフィナーレまで体力的にも立派な演奏を見せつけられた。五嶋みどりでも思つたが、このDavid Athertonといふ指揮者はこのクラスのオケに無理は言はないが実力を発揮する、或いは実力以上に聴こえるやうな演奏をさせてしまふ指導者的力量があるらしい。本来はこれを現職のデ=ワルトで見たいところなのだが。印度食肆とコンサートホールの冷房強くジャケット着てゐながら外での汗が冷えて風邪気味。
▼昨年暮れに香港立法会港島区補選に立候補し葉劉淑儀(元保安局長)破り当選の陳方安生(元政務司)が今年秋の立法会選挙には不出馬を決定、その声明を明日発表、と信報が報ず。陳方女史の狙ひは97年のあの返還儀式で舞台中央、中英のちやうど間に深紅のスーツで立つた=中英間でのTransformationの体現たる自らが今は泛民主派と北京中央との橋渡し役となつての(いま中国で流行りの言葉で言へば)和諧狙ひだつたさうだが半年過ぎても中央が彼女にその任務を期待はさら/\ないことに気づき、或いは諦観し、での不出馬か。これで民主派の牙城であつた港島区は泛民主派は三議席確保も険し。だが泛民主派の弱体化が「政治的安定」で香港の普選実現、民主化に繋がる、といふのが何とも逆説的だが事実か。

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