富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-06-01

六月朔日(金)朝、出がけに大雨。数分で通り過ぎ、歇む。香港には珍しいスコール。スコールのとき自動車で走ったり傘さして無理矢理に歩くのは野暮。スコール一旦参れば、軒下や木陰にて雨が歇むのをただ待つのがいい。ぼんやりと、何もかの動きの止まる一っ時。ただ雨がざーっ、と。雨が歇むと雨で地熱がほんの少し治まった涼しさのなか、まるで何事もなかったかのように世の中がまた動き出す。交響楽だな、これは。と思うのは「のだめ」なんかの読みすぎか。朝のスコールに、気持ち的には印蘭マレイで金子光晴。気分、としかいいようがない世界。早晩に中環。ミッドレベルのエスカレータ沿いに、あたしが「カラヤン東山千栄子」と呼ぶ菓子売りの、いつも仲睦まじい老夫婦がいる。Z嬢と暑い夕方をぶらぶらしてFCCに軽く食す。胃痛でまたIrish Stewだ。晩に市大会堂で香港シンフォニエッタの音楽会。指揮は客演で諾威のBj?rn SagstadでJohan Svendsenというグリークと親しかった作曲家の“Norwegian Artists' Carnival, Op14”という曲で始まり、菊池洋子のピアノでグリークのピアノ協奏曲イ短調シベリウス交響曲1番。指揮者も曲も北欧づくしで今晩のタイトルは A Nordic Encounter と名付け中国語では「北国の楽」と「の」入りでしかも「北國之樂」としなかったのはピアノが菊池洋子で日本を意識したのか、あえて日本の漢字と「の」で「北国の楽」としたのだ、と思う。02年に第8回モーツァルト国際コンクールで日本人で初優勝という菊池洋子のピアノは個人的にはあたしの好みにあらず。鍵盤を、和音を組み立てた指で敲くような奏法から出てくる音はアタシのイメージするグリークのこの曲の舐めるようなフレーズとは異なるもの。このピアニストはモーツァルト弾きなのだ、と思う。第二楽章のアダージョで大切なホルンなのだが、演奏が終ったあとに指揮者からとくにホルンが指名されて立ち上がり喝采を浴びたのが大いなる疑問。相変わらず外していたではないか……リハよか上出来だったから?の内部評価なのかしら。木管はいい。弦は総じて安定している。菊池洋子のアンコールはショパンエチュードの1番「エオリアンハープ」と得意のモーツァルトトルコ行進曲ショパンのエオリアンハープは「これとかも出来るのよ」での披露であろうし(これがあたしは今晩の3つの演奏のなかで一番良かったが)、トルコ行進曲は余興だろうがテンポがかなり不安定なのが気になったところ。シベリウスの1番はあたしは好きじゃない、というか単純に「わからない」。でもこの楽団のティンパニー奏者である村本暁洋(このオケには日本人が9名かな、いる)はティンパニーが重要なこの曲で見事な音を聞かせていた。案の定、演奏後、指揮者に真先に称賛されたのはこの人。御意。日本人ピアニストの登場ということで、このオケのいつもの公演より日本人の知己の方多し。晩に「のだめ」3巻ほど読む。
▼訪日ちゅうの李登輝君、東都に遊び
深川に 芭蕉を慕ひ来 夏の夢
と詠む。北京が台湾独立分子、日本傀儡、と罵声を浴びせようが何しようが、台湾で国民党支持者ばかりか台独派でも李登輝親日ぶりに呆れようがどうしようが、「深川に 芭蕉を慕ひ来 夏の夢」ぢゃ、もうどうしようもない。「慕ひ来」という止め方は音も含めちょっと気になるが。ベトナムの知識人肌の政治家が仏語で詩を語ろうが売国奴とは罵られぬが。それにしても李登輝君来日に合わせ第1回後藤新平賞、ってあまりに出来過ぎ。台湾総督府民政長官で、確かに後藤新平の民生を語れる李登輝先生の受賞は首肯けるが授賞対象者の「日本の国内外を問わず、現代において、後藤新平のように文明のあり方そのものを思索し、それを新しく方向づける業績を挙げた方」って、第2回の受賞者はもういないないじゃない、これぢゃ。「文明のあり方そのもの」ぢゃ、とても小泉三世でも無理、で首相では中曽根さんも国家は論じても文明には至らず、大勲位だから今更、後藤新平賞でもあるまい。賞の格として、海外から、なら李光耀かね、次回は。だが李登輝であるから後藤新平賞を喜んで受けてくれたが李光耀では本人も「なぜ、自分が名前も知らぬ植民地官僚、政治家の賞をもらうの?」で関心もなかろう。で「政治家はちょっと外して」で思想家とかから選出となり、主宰の後藤新平の会の面々の政治色からして、対象は加藤周一ではないから、梅原猛あたりに落ち着くか……でも学者先生だと後藤新平のような都市建設、民生改善といった実績に欠けるしねぇ。ほんとうに対象がいないのではないかしら。あ、そういう意味では建築家とかいい鴨。黒川紀章……はウソ、で丹下健三
▼銀座のバーは高いか。朝日新聞の「ニッポン人脈記」という連載でここ数日は「銀座」が舞台。取材する記者が文談バーのママに話を聞く。そのバー「コントアール」のママがまだ「エスポワール」のホステス時代、秦野章(元・警視総監)とよく連れ立ってきた川端康成から電話があり赤坂のディスコにいるので来ないか?と誘われたが断った由。その一週間後に川端の自殺。その話について記者曰く
こんな話はただでは聞けない。銀座は自腹取材でないと見透かされる。清水の舞台から飛び降りる思いで、見栄を張って6万円のボトルを入れた。
と言う。「へぇ、6万円も自腹で」と関心するか、どうか。30歳代後半で平均年収は1000万円を超える、という朝日新聞で、東海地方の支局長の個人情報がネットに流出し年収1900万円と広まった由、これくらいの連載任される記者となれば個人の懐具合の邪推も楽しくないがかりに1500万円としよう。この銀座のバーでのボトルは確かに奮発しているが日給1.5日分。だが年収300万円のサラリーマンで、日給の1.5倍なら1.2万円。「ここぞ」という勝負時には彼女にシャンペンくらいご馳走しちゃったりすると1万円くらいは使っても不思議じゃない。結果、年収1500万円の朝日の記者がポケットマネーで6万円のボトルを銀座で入れたから、といって感心したり驚いたりするには値せず。
▼日曜日の安田記念。香港馬はAble One、Good Ba Ba、The Duke、Joyful Winnerと四頭揃い踏み。The Dukeは何故か国際G1の香港マイルだけは強く、05年のこれに2着で頭角表わし昨年、安田記念も出場したが15頭だて最終位で終わる。そのThe Dukeがなぜ今年も安田か、と言えば06年の香港マイルで「まさか」の優勝がゆゑ。Able Oneは4月のチャンピョンマイルを33倍の人気ながら制したが、これはM Kinane騎手による勝利である、と信じ今回は外す。Good Ba Baは名前が嫌い。でチャンピョンマイルでAble Oneの二位に甘んじたJoyful Winnerである。「騎手的に」モッセに期待。で香港馬のワンツーゲットは期待できないのでオレハマッテルゼとダイワメジャーに流すことにする。

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