富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

二月朔日(日)曇。禽類の流感騒ぎにて中環の金庸記の焼鵝今日明日にて断貨=供給途切れての品切れ、と蘋果日報一面トップ。数年前の禽類流感にても数ヶ月に渡り金庸記の焼鵝供されず。今日は「最後の」焼鵝に客の殺到見込まれるが予約ですでに菜単(メニュー)に焼鵝配されし客に優先権あり。ちなみに日本からの百名余のグルメツアーも近々来港の予約あり金庸記は焼鵝の欠貨をば旅行代理店に通告、ツアーの取消しの可能性もあり、とか。昨日に引き続き研究会に参加。昨日の午後の珈琲に続き本日も一飲して同じ店とわかる美味さ、研究会主催のT氏に尋ねればわざわざHappy Valleyの珈琲香房といふ北村さんなる方の自家焙煎の珈琲とのこと。秀逸。Shop-A2, G/F, 5 Wong Nai Chung Rd, Happy Valley, Open: 3-10pm 昼過ぎにZ嬢と待ち合せ尖沙咀。ペニンスラホテルのヴェランダに参らば日曜昼はアラカルトなし、貧しき食習慣ビュッフェのみ。アラカルトしか供さぬ料理屋にてビュッフェ所望するのではなくビュッフェ食さぬ、食せぬ客相手にアラカルト供すことが何故出来ぬのか理解できぬが、当然、客単価上げることとビュッフェに客纏めることで効率上げるわけか、給仕長らしき男に「申し訳ございません」ならまだしも憮然と「昼はビュッフェだけ。階下、ロビーに行けば宜敷い」と宣われる。New World CentreのKowloon Clubに参れば此処もビュッフェながらアラカルトといふと「どうぞ、どうぞ」と招かれる。これが当然のサービスといふもの。ペニンスラにはそれが理解できず。遅めの昼餉済まし香港文化中心の広場。来週末開催の香港マラソンのゼッケン等受取り。数万人の参加のわりには整然とゼッケン配布など進むが余(ハーフに参加)のゼッケン見当たらず諮問処に行けと言われれば其処は長蛇の列。暫し並び用件伝えれば結局、余の如く時間計測用のChampion Chip所持者に対し参加費よりChip利用分のHK$100差引きあり、その返金ためとの由。それならそれと事前に説明できず多少の混乱。但しこの諮問処にてゼッケン受取りHK$100返金受け参加記念品のTシャツなど受領するがゼッケンに受領の確認印押されず余は改めて記念品受領の列に並びTシャツもう一枚受領す。Fなるフィットネスクラブ今回の香港マラソンのスポンサーに名を連ねエアロビクスなどの模範実演あり。余とZ嬢の通ふジムに曾てZ嬢好むWayneなる豪州出身のエアロビのお師匠さんあり。数年前に姿消し、丁度シドニー五輪開催の頃で「きっと豪州に戻り豪州のチアリーダーになったのでは?」などと軽口叩いていたが先日Z嬢がこのFなるジムの近くでこのWayneに似た中年の男見かけ「ひょっとして」と思ったら今日のこの模範演技にWayneの姿あり。華麗に指先まで天性の踊り子として舞ふ姿にZ嬢拝まむばかり。本日の競馬、精英大師 Silent Witness (Cruz厩、Coetzee騎乗)本日のThe Bauhinia Sprintにて一着。昨年十二月の香港スプリント(G1)に続き緒戦からの九連勝負け知らず。トライアルでハロン22.2秒の時計と絶好調にて望み単勝HK$10.50の低配当は往年の原居民以来か。二着にFirebolt、三着にCape of Good Hope(喜望峰)と香港競馬話題に好材料なき中で短距離だけは世界最高レベルにあり。余の馬券はSize厩のCentury Star含め(最後尾七着!)Silent WitnessとCape of Good Hopeとの三連単で×。銅鑼灣。買物。ひまわり書店にて香港大学の陳湛頤先生編む『香港日本関係年表』香港教育図書公司あり購入。天保十三(1842)年十月、漂流しフィリピンに流れつきし漁船「観音丸」の船員の来港より始まり1999年12月の「宮沢理恵、ジャッキーチェンの招きで来港しレストラン開業のテープカット」!まで450余頁に及ぶ香港日本交流の細目に渡る記録。船舶の運航から1959年10月の服部良一来港まで満載。いくつかの書店にて台湾・大新書局(台湾代表する日本語関係の出版社)の『新詳解日華辭典』探すが見つからず。「白河夜船」など今では日本人も知らぬ、使わぬ言葉に「白河夜舟にて列車が台中を過ぎたのも知らず」などと例文ある、台湾らしき古きよき日本語満載の辞書。最近の他の大新書局の辞書にも未だ「白河夜船」掲載されるが例文は「名古屋を過ぎたのも」とあり残念。帰宅して腹も空かず浪花屋の柿の種でエビスビール二本。『世界』二月号に大江健三郎と中国の作家(米国に亡命中)鄭義の対談あり(進行役は藤井省三)。鄭義は『古井戸』などにて中国の体制批判。まずこの対談で編集部に足りぬは対談が「どこでいつ」行われたかを特集の冒頭に置くこと。大江の「今、この国には言論の自由があると思います」なる発言を例すれば、それが「どの国」なのかかなり先まで読まぬと判らず。いずれにせよ大江が例の如く告白しているのだが鄭義が小説の中で惨状描く六十年の人災=政治的大飢饉(餓死者二千万人といわれる)の頃に日米安保反対の文学代表団として訪中し毛沢東周恩来に謁見していること。当時、中国での民衆の惨状全く知らぬまま日米安保反対といふ立場だけで知識人らが北京に在ったことが現在に至る日本の問題象徴するが、自由について、大江は日本が言論の自由はあるが若者が言論の自由の行使に興味なくし「考える言葉」の交通が日本の社会で次第に衰弱していることを憂ふ。中国はネット上に「中国にも自由な投票による民主的社会が必要だ」と述べた大学生が国家転覆罪にて逮捕される厳しい現実。言論の自由の有無は極端であるが、追い込まれているといふ点では日本と中国は同じ、か。日経香港衛星版の日経Galleryの原稿書く。
▼落語家の桂文治師匠逝去の報。文治といはれ久しく落語聞かぬ余は誰かわからず。弔報にて「伸治」と前名あり「あヽ、桂伸治か」と合点。79年に十代目文治襲名とありその頃にはすっかり落語聞かぬようになっていたこと。
▼前国家主席江沢民君も令夫人も「なかなか」であつたが現主席Coquinteau君も国家主席といふよりどう見ても湖北省武漢の中学校校長、令夫人にあっては旧正月に香港どころか「せめて」珠海よりマカオ一日周遊に参加のオバサン(左図)、黒いシャツの上に桃色プリントの内衣着てベージュの外套に裾の長い洋袴に服装と全く合わぬ運動靴……国家のファーストレディとしてはやはり専属のスタイリストつけて髪型から徹底的に洗練するべきか、否、この自然体こそ人民中国の領袖ゆへけして背伸びせず人民の真の姿の体現か。いずれにせよ……。
共産主義がファッションセンスにおいて「ヘン」なのは思想的に赦されるがこちら(右図)は香港の或る高級マンションの広告にあった「上流階級」意図した絵柄(笑)。香港にあって不動産扱う開発会社の広告はやはり所詮デベロッパー、その野暮さに定評あり。国際都市・香港といふより上海どころか北朝鮮風。父親のBurberryづくしも「スタイリストがBurberryのプレスから借りてきたアイテムだから皺ひとつつけないで下さい」なのか殊にカーディガンの裾と洋袴の太さがキモひ。妻こそまぁチャールズ皇太子と結婚前のダイアナ嬢、皇太子殿下とご結婚される前の雅子様路線の良家の令嬢風であるがスカーフからシャツ、スカートから靴まですべて青にしてしまふのは×。娘も顔がやたら老成、バレエでありながらバレエシューズの紐を運動靴の如く結ぶ基本的間違いあり一見してこの娘のバレエ「インチキ」であること明白。兄のセロもせめて脚を出して高さ合わせる程度のコーディネート希望。「Burberry」夫に「青の世界」妻が息子のセロに合わせバレエ踊る娘をば愛でる、の図。不気味。