富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

笑犬樓の世界

辰年十月廿八日。摂氏4.7/17.1度。晴。

朝日カルチャーセンターの配信で畏友村上湛君の『禅鳳雑談』精読(通算第八回、今回二回目)聴講。講義にあたつてのマクラも先日が勤労感謝の日で宮中での新嘗祭から、新嘗祭も宮中で古来からの祭祀とされるが天皇自身が実際に毎年渾身行ふやうになつたのも実は近代になつてからとか。マクラや余談でも面白いのはやはり名人の域である。〈黒塚〉や〈葛城〉などやつとアタシも内容や場面のわかる謡曲で湛先生の説明もよくわかる。〈黒〉の糸繰りの場面で「泣くような心で謡ひ進める」もそれだけでは単調で滅入つてはいけない、とか指摘を聞いて合点。そこで歌舞伎だと勘三郎XVIIの大泣きと実際には泣かずにみごとに泣く感情を見せる成駒屋だとか〈葛城〉はアタシも面白いと思つたが具体的に葛城のどこが面白いのか湛先生の解説で改めてなるほどと納得。本日の講義のマクラは先生お風邪はだいぶ治まつたが咳がまだ続き自ら「寺子屋の松王のやう」と喩へてゐたが吉右衛門Ⅱの咳する場面が目に浮かぶ。偶然にも本日は二代目吉右衛門丈ご命日。

新潮社『 』12月号届く。「また今月も筒井先生の連載は出てないだらう」とタカを括って表紙を捲り佐和子さんだと思つたら「コロナに罹患した」と筒井康隆御大。同誌で筒井先生の連載は5月号で停まつた。

健康状態はどうなのかしらと気になつてゐたら10月号に「新潮社とのおつきあい」掲載あり。懇意にしてきた新潮社の歴代の編集者とのやりとりの追想NHKのインタビュー、週刊ポストのインタビュー受けた、とあつた。

このNHKの番組はうつかり見忘れた。気づいたときにはNHKプラスでの配信も終はつてゐた。

作家・筒井康隆氏(90)が「夫婦で老人ホーム入居」を初告白 自宅で転倒後の入院生活が転機に、結婚生活60年の妻への思いも | マネーポストWEB

笑犬樓がこんな素敵な齢のとりかたをされるとは思つてもゐなかつた。山下洋輔さんとか若いころに本当にはちゃめちゃなことをしてゐて大酒を喰らひ、そんな人たちが意外とさっぱりとした老境に達してゐるとは。

この笑犬樓のお姿がどこか昭和の先帝のやう。