富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

HIBARI ART@益子濱田窯長屋門

辰年十月初五。10.8/19.9度。薄曇。水戸から県道51号線(水戸〜茂木線)を自家用車で益子まで1時間余。快適なドライブであつたが紅葉などほとんど見られず。夏の暑さで灼けてしまつたやうな樹木も少なからず。益子は先週土曜日から益子陶器市で大変な人出だつたやう。今日は最終日で平日(火)だが、それでも陶器店や陶器市のテント、出店の並ぶ城内坂のあたりはかなりの人出で臨時の駐車場もほゞ満車ださう。週末は駐車場どころか町内に入るのも道路渋滞だつたとか。

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益子では町内から少し離れた益子参考館へ。その隣りの浜田窯は現在、濱田庄司のお孫さんにあたる友緒さんが窯を構へてゐらつしやる。その浜田邸の入り口にある長屋門で宇都宮の障害者支援施設ひばりが、この陶器市の期間と同じく施設利用者の陶芸と絵画作品の展示会を開催中(本日迄)。

HIBARI ART ~陶芸と絵画の展示会~ | 社会福祉法人晃丘会こうきゅうかい

その開催のお知らせを宇都宮在住の友人から貰つた。プロや意識された芸術よりも “Art Brutアールブリュ” の作品はずっと/\興味があるので連休避けて今日行くと伝へたら彼も今日はこちらに来てゐて再開を果たすことができた。

濱田庄司はBernard Howell Leach(1887〜1979)が益子で庄司と共に陶芸活動をするために、この長屋門を地元の富農宅から買ひ取り移築して長屋門の建物内に工房と反対側には居室まで拵へたといふのだから。

この空間が見事な作品の陳列室に。たゞし通常は商業活動のギャラリーとしては利用されておらず今回も浜田窯の特別の計らひで宇都宮のこの支援施設への貸出しになつたのださう。その「ひばり」ではもう5年以上前から施設利用者による陶芸が始まつてゐるのだといふ。本当にプロの作家にはない創造活動で、そこには山下清草間彌生のやうな執拗な緻密な宇宙のやうな世界がある。いつまで見てゐても飽きないニョロニョロの突起の置物だとか長屋門の微妙な自然光のなかで、とても輝いてゐた。

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濱田庄司の益子参考館も見学。これまで益子に来ると月曜日が多くいつも休館であつた。写真は濱田庄司柳宗悦、川井寛次郎。何だかかうした〈民藝〉運動に関はつた先人たちのコレクションや住宅など見る機会が多く、だん/\と他人事に思へなくなつてきた。

濱田庄司が友人ら来客の宿泊施設とした家屋(これも地元の庄屋家の移築)。庄司の暮らした母屋はこの敷地から今では益子町内の「陶芸メッセ」に移築されてしまつてゐる。

濱田庄司もハンマーミラーのイームズラウンヂチェアを愛用してゐたんださう。アタシと同じ好みとは。それにしても主人が亡くなつても愛用の椅子はもつと手入れして保存してあげてゐれば良かつたのに。

こんな里山の麓で陶芸と畑作で暮らす日々に憧れる。お昼近くなつて町内から少し離れたこの浜田窯のあたりも人出が少し増えてきた。近くに評判の蕎麦や(炉庵)もあるが混雑だらう。町内に向かひ歩き始めて最初の蕎麦やに入る(そば明水)。さういへば昨日も昼は蕎麦だつたが蕎麦といふのも蕎麦粉、打ち方、つけ汁で随分と違ふ食べ物になる。本日はくるみ汁のせいろ。

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益子に陶器店はたくさんあるのだが、いつも普段使ひの陶器は比較的大店の陶房ましやまを覗いて、それからホソカワカオリさんの作品扱ふ壺々炉 こころ、そして知床窯に伺ふだけになつた。本日は陶器市でホソカワカオリさんがかまぐれの丘にテント出店されてゐて初めてご本人にお目にかかつた。知床窯の二代目、本田圭一さんも近くで出店されてゐて知床窯の作品のこと、朝鮮の古式三島の復刻のことなどお話をお聞きする。知床窯の店舗の方に飾られてゐる古式三島の大皿がまことに見事で、いつもそれを眺めては溜息だとお話したら、その古式三島の紋様をどう出すかで苦労された話、東京の出光美術館での陶器破片のコレクションでの発見など興味深いお話で「あ、こゝに一つ」と普段売り物に出してゐなかつたさう、古式三島に至る試作段階だつた時のお椀一つを見せていたゞき、それを譲つてもらふことに。

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坂下の日下田藍染工房にはインバウンドツアーが藍染体験で賑やか。工房の女将さんの話では一団体受け入れたら評判で次から次と「お断りするわけにもいかないしねー」と。藍染工房の洗濯機はそれがもう藍染のアートオブジェ化してゐた。

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いつもの益子散策のコースで内町に下りて古書肆内町工場へ。今までずつと「うちまちこうば」と読んでゐたが「こうじょう」なのだつた。もう顔馴染みといつて良いかしら古書肆のご亭主とちょっと談義。古書数冊買ひ求める。和菓子の赤羽まんぢう本舗も大忙し。名物の饅頭と、それと店頭に並んでゐる芋ようかんが本日、浜田窯の長屋門で奥様からお茶請けにお出しいたゞいたのがこれだとわかつたので(濱田庄司はこの赤羽の和菓子が好物であつた)それも入手。もう城内坂の賑やかな陶器市を避けて御城山をぐるりと巻いて稲田と小川に沿つて益子参考館の方に戻る。途中、御城山の麓の林のなかにひっそりと佇むパン屋あり(パン創作室シンクロ)。

パン創作室シンクロ(益子町

とても美味しさうな石窯焼きのパンを入手したので帰宅途中でチーズやパテ、ハムを買つてきて白ワインで軽く夕食。まことに美味しいイタリア風の窯焼きパンであつた。焼き栗は町内工場の並びの大山栗店のもの。これもまぁ香ばしくてまことに幸せな秋の一日となつた。

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