富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

伯林之風、巴里之雨

辰年九月初四。気温摂氏19.5/25.5度。曇。朝七時半過ぎに家人と水府を発ち常磐道圏央道→東関道で佐倉。家人の父を乗せ十時に佐倉を発ち東関道→京葉道路→首都高で中央環状線を王子北で下りる。佐倉からだと小一時間。王子駅から飛鳥山の方に随分の人出は北区の区民祭りの由。滝野川から巣鴨も入る。お彼岸も過ぎてしまつたが秋の墓参り。お寺にお花など預けて少し早めの昼食。京都から家人の妹夫婦も来る。春の彼岸の時と同じく地蔵商店街にある「三浦屋」ですっぽんの雑炊(唐揚げつき)。すっぽんの料理屋でコロナ前は昼もいろ/\魚料理など供してゐて家人の父母が墓参りだとこゝに寄るやうになり今は昼は定食はすっぽんの雑炊のみ。

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寺は真言宗で本堂で僧侶の読経を聞きながら密教曼荼羅の掛け軸を眺めてゐて一昨日読んだ岡本寺(奈良県明日香村)の会報でご住職が書かれてゐた弘法大師の悟りについての一文を思ひ出した。空海上人が唐から(正式に、だが)密教を日本にもたらすまでの奈良仏教界では生前に悟りを開くことは到底不可能といふ認識が主流であつたやう、そこに空海は「大日経」によれば成仏、神変自在と加持の作用で生前、煩悩具足の身のまゝでも成就できる、といふ教へを広めたもの。大日如来の加持力によつて自分が成仏に導かれてゆくといふ密教の奥義。私心を入れず、そのまゝ現実を受け入れ、ありのまゝの自分を知る(知行)こと。あまりに煩悩が多く世俗的なアタシには到底辿りつかない境地ではある。こちらのお寺には漫画家・富永一朗(1925〜2021)の墓がある。

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巣鴨のJR駅まで妹夫婦を送り、こゝからだと護国寺で首都高に乗ることになるのだが日曜日で都心も道路は交通量も多くないので白山通りから西平、本郷に出て湯島から蔵前橋通りを末広町、鳥越と抜け大川を渡り錦糸町から首都高⑦に入り千葉へと戻る。護国寺から首都高に乗る道程に比べ20分余計に時間がかゝつた程度。家人の父も年が明ければ数へで卒寿。京橋や鍛冶町、赤坂で働いてゐた方だが加齢や疫禍もありすつかり佐倉に引き籠つた生活になつてしまつたので、たまの都心ドライブも少しは気分転換になつたかしら。水府の午後6時に戻る。もうこの時間でもすつかり暗くなる。国道51号線沿ひの「浜田屋」でラーメン。当たり前のきちんとしたラーメンやタンメンが美味い。

 今年6月の伯林フィルのワルトビューネ野外音楽堂での音楽会の録画。指揮はキリル ペトレンコで彼はロシア出身ながらプーチンウクライナ侵攻に対して正義のない行為と批判してゐる。ムソルグスキー交響詩「はげ山の一夜」に続けてプロコフィエフピアノ協奏曲第1番変ニ長調(作品10)この難曲を相変はらずセクシーさを強調する踊り子のやうな胸と腰回りを隠しただけの衣装で王羽佳が超技巧で弾きこなしてみせ観客は拍手喝采。ピアノのアンコールはフィリップ グラスといふ作曲家の練習曲第6番。後半はラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」と「ボレロ」。アンコールはショスタコーヴィチ組曲「ムツェンスクのマクベス夫人」作品29aと、まぁ初夏の夕方の野外コンサートとしては、これが愉しくなからうはずもない。

20世紀のベルリンフィルのあの堅実な演奏作法を思ふと随分と明るく楽しい楽団になつたもの。最後はお決まりでリンケ「ベルリンの風」で締めくゝる。このコンサートをフジテレビが来年夏に「ドイツ国外では初」で河口湖で開催するんだとか。

雨の巴里。ロンシャン競馬場は重馬場。日本馬初優勝とシンエンペラー(坂井騎手、矢作厩舎)はこのコンディションでは期待できそうになく武豊騎乗のアルリファーは前走(8月11日)がベルリン大賞(G1)勝利の◯アルリファーも人気。今年6月の仏ダービー3着で巴里大賞(G1)優勝の◎“Sosie”(ギュイヨン騎手)選んだら1番人気となつた。結果、ブルーストッキング(牝4、Rベケット)とアヴァンチュール(牝3、Cフェルラン)といふ前走のヴェルメイユ賞(G1)1、2着の牝馬によるワンツー決着であつた。◎は4着に終はる。