富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

佐藤忠良展@いわき市立美術館

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陰暦十月二十日。水戸からイワキに参り候。常磐線で行き先はあくまで平(たいら)なのだがいつからか驛名までイワキになつてしまつた。水戸を09:09発の各駅停車に乗らうと思つたら旧型の急行ときわ仕様塗装の列車。日曜の朝で適度に空いてゐたが家人と占領したボックス席で私の背向かふに乗り込んできた青年がまぁ酒臭く誰だかにケータイで話し始めて迷惑。それが否応なしに聞こえてくるが仕事の愚痴だと思つたら水府の大工町のキャバクラ?だかで働く青年。キャバクラの雇用の不公平、キャッチとボイの条件不平等等を話してゐて最初はうるさいと思つたが聞いてゐると青年の比喩だとか喩へが実に妙で相手への説得力のある理路騒然とした話。お見事。それが列車が久慈川を渡り大甕(おゝみか)に到着するあたりで寝落ち。今朝早くまで働き何処かで酒を飲んで帰宅の青年が車両の扉横の2人掛けシートに臥せて爆睡。水府で大工町の歓楽街で夜通しの勤務で鉄道を使ふ通勤はせいぜい北は日立だと思ふのだが日立でも起きず。結局この爆睡青年は勿来関を潜り奥州へ。終点のいわきで列車は一旦、勝田車両センターに入るのだが、この青年は起きず。ホームで列車最終尾から歩いてきた車掌に家人が「寝て起きない乗客が」と言つたら丁度、列車から降りて歩き始めた。気がついたらイワキ(だが気がついただけマシ)ホームで一瞬「こゝはどこ?アタシは誰?」だつた彼がホーム反対側で倒れ込むやうに乗り込んだ列車は彼にしてみれば常磐線の上りだつたのかもしれないが各停(下り)の広野行き。で彼が乗るなりドアが閉まり発車。水戸で働くのに日立ならまだ通勤圏だがイワキは水府から101分もかゝり彼は更に常磐線以北から通勤とは到底思へない。家人は「週末の勤務明けで福島浜通りの実家に帰るんじゃ?」といふが手ぶらで泥酔である。終日この彼が何うやつて帰宅したのかが気になる。仙台まで行つてしまつて、これから国分町で生業を見つけるかもしれない。

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いわき市立美術館。先月10日はアーノルド=ローベル展を見て次にこの佐藤忠良展あることを識り本日参つた次第。前回は自動車だつたのは五浦の岡倉天心記念美術館(齋藤隆三展)も見るのに五浦が交通の便が悪く自動車の方が楽だつたから。今日はいわきだけなので常磐線で来た次第。前回は夏休みのローベル展で子どもも多く来てゐたが本日はまことに閑か。忠良は絵本『大きなかぶ』でしか知らなかつたが彼の彫塑像のまぁステキなこと。一体一体見てゐて飽きることがない。『大きなかぶ』は小学校の教科書にも採用されてゐるが当時から共産主義的なんていはれもした作品。あの独特の絵の世界が「ソ連の田舎の民衆」そのもののイメージにすらなつてゐる。あの目のまわりが青いのも不思議。忠良は昭和19年に入隊して満州ソ連、朝鮮の国境に配属されシベリア抑留を経て昭和23年、舞鶴に帰還。この年の内に日本共産党入党で昭和39年に除名。今回展示されたコレクションの多くは宮城県美術館所蔵。これは昭和61年に忠良が所蔵する全作品を郷里の宮城県に寄贈としたため。宮城県美術館には佐藤忠良記念館もあつたさうだが記憶にないと思つたら開館は平成2年のこと。

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いわき市の人口は35万人なので水戸(27万人)より大きいがいわき駅前の商業地区の閑散は甚だしい。いわき市は昭和の当時は日本で最も面積の大きな市。それが昨今の市町村大合併で日本一は岐阜県高山市で2,118㎢は東京都(2,187㎢)と大阪府(1,897㎢)の間くらゐ(ちなみに日本で最も面積の小さな都道府県は香川県で1,876㎢)。いわき市は面積では今は全国12位。常磐線の特急でいわき市(勿来〜未続)は44.5kmあり普通列車(685M)で通過に85分要す。高速道路のやうな国道6号のバイパスが縦貫してゐて郊外の商業施設に住民は向かふことになる。

いわき駅前でサッカーいわきFCのホームでの試合応援するPVも数えられる程度の人出

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本日いわき市立美術館出て賑はひもなき平の旧市街歩いてゐて澤木屋なる酒屋ありイワキに来たのだから内郷の清酒〈又兵衛〉でも買つて帰らうかと暖簾潜ればなか/\立派な酒屋で焼酎の計り売りも充実。清酒は?と思つたら店のお兄さんに「こちらです」と蔵のやうな厚扉開けられ、その向かふが冷蔵で日本酒がずらりと並ぶ。又兵衛の純米酒〈いわき郷〉を購めたが地元の太平櫻酒造の〈ハタチ酒〉なるプロジェクト(こちら)の清酒もあり迷つた末にやはり順当に前者。お会計のときカウンターに何だかオリジナル?のマグあり約二合で保温も温冷いずれも十分で更に啤酒など炭酸も密閉で大丈夫だといふので、その酒屋(澤木屋)オリジナルのマグを買ひ求めたら、それが本日つい先ほど店頭に並べた新商品でアタシらが最初の購入者だと縁起の良いこといはれ折角だからとお好きなお酒を詰め〼と店主のサーヴィスで〈ハタチ酒〉を並々注いでいたゞく。初めて訪れた店でかうしたやりとりがまことに楽しい。いわきからの復路は午後1時過ぎに各停が80分だかない時間に当たつてしまひ特急ひたちに乗つたが取手だかの投身自殺かの影響で不通区間ありアタシらの乗つたヒタチは水戸でアタシら降りたあと小一時間停車で遅延あつた模様。死ぬなら誰にも迷惑のかゝらぬ青木ヶ原の樹海だとか海で入水でもしてもらへば楽なのだが、やはり鉄道への投身自殺が絶へぬのは自殺もどこか「インパクト」無意識に期待?はこの世への名残なのかしら。

▼本日の競馬はGⅢの福島記念(3歳上牝馬の芝2000m)と阪神エリザベス女王杯(GⅠ)で前者の◎アラタ(1番人気)で宝塚記念2着のユニコーンライオン(国分優騎手)が先行のまゝ10番人気で堂々の優勝。スポーツ新聞でデータは過去3レースのみだつたが宝塚記念2着は(結果論だが)蔑ろにしてはいけなかつた。後者はデアリングタクト1番人気だが何うももう戦力外に思へて4番人気のジェアルディーナ(4番人気)の単勝は的中🎯でやはり母ジェンティルドンアの血は争へぬと思ふ。単勝810円也。

▼大相撲九州場所初日。やはり日曜の夕方は相撲にかぎる。宇良●と霧馬山○、玉鷲パパ●と酒で親方に迷惑かける逸ノ城○、琴ノ若●と豊昇龍○、若隆景●と高安○と面白い取り組み続き角番の大関正代は小結飛猿から黒星。