富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

Shinzō est un traître national

陰暦九月十八日。気温摂氏14.6/16.2度。曇。

思はず「待ってましたぁ!」と叫びたいが畏友・村上湛君の今年3月以来かしら朝日(昨日の夕刊)に歌舞伎評*1。今月の国立劇場での音羽屋の〈義経千本桜〉。菊之助君が鮨やの権太、忠信、知盛の三役。

狐忠信なら先代猿之助、知盛ならアタシですらこれまでどれだけの名優のものを見てきたか、いがみの権太なら昭和の終はり延若Ⅲだとか記憶に残る舞台あり菊之助君の個性、身体能力、表現からして得手不得手もあらうと思つてゐたが湛君が見事にそれをこの劇評で述べてをられる。さすが。その上で(があるのが彼の劇評の面白さだが)丑之助君の特異稀なる才能は別として父(菊五郎が湛君をして「驚愕」と吐かせた初役!の義経で鼓を忠信役の倅に渡すことで義経同様に「自らも退路を断つ厳しい役の性根」が浮かんだ、と。菊之助と梅枝(典侍の局、惟盛)が吉右衛門Ⅱが継承した「伝統歌舞伎」の未来の星と実に納得。そんな芝居であるから是非見てみたいところだが〈義経千本桜〉の通しで菊之助三役といへども日に通しで三役は月に一度もなく今月のうち23日の公演のうち2つの番組があるのが8日で残りは番組1つのみ。先代の猿之助が七月の夏の歌舞伎座で通しで三役を勤めあげたことがどれほどのものだつたか、と湛君と物語る。今月の三宅坂のチラシに「菊之助が挑む三役完演*2」とあるが本来その三役完演とは先代猿之助のそれであらう。

「晋三は国賊である」Sorry, I think so, too である。アタシのやうな輩が“Shinzō est un traître national”といふのは勝手。一民草で暴言に責任もないし、このデクラシオンは言論の自由として憲法でも保障されてゐる。だから村上誠一郎君が一個人として「晋三は国賊」と思ふのも発言するのも同じ。しかし村上君は自民党の代議士である。晋三を国賊と思ふのなら晋三が現役のときに真っ向からさう言ふべきであつたし(アタシのほうがずっと晋三をどれだけ罵倒してきたか)村上君は国会議員として晋三に堂々と対峙すべきで彼に賛同する議員を束ね勢力を拡大して晋三との戦ひ(かなりの異種格闘技戦だらうが)で負けたら党を去るべきである。それが自民党の看板で長年代議士をして身勝手な発言は自民党のガス抜きのやうな存在。さういふ意味ではハマコーやミッチーと同じ。だが一言居士からリベラル、党内左派まで自民党には三木武吉とか大野伴睦宇都宮徳馬、首相になつた三木武夫、最近では野中広務古賀誠など本当に立派な党人。アタシは晋三は大嫌ひで国賊だと思ふが晋三と誠一郎を比べたら晋三の方がよほど立派であると思ふ。村上君は晋三を国賊と思つたのなら晋三を領袖としてきた自民党を改革するか去るか。福島のぶゆき君(我らが衆院茨城一区)らの無所属の「有志の会」にでも入れてもらふべきだつた(入れてくれるか何うかはわからないが)。

(自民党)晋三を国賊呼ばわりの村上誠一郎君に役職1年停止処分:朝日新聞

それにしても村上君の国賊発言以上に驚いたのがこの朝日新聞の記事にあつた或る閣僚経験者(石破君か?)の発言。

彼が声をあげることで「自民党にもまともな意見を言ふ人がゐる」と国民の目には映り党が救はれてきた側面はある。

ってこの発言こそ自民党は処分すべきだらう。これぢゃ村上君がまともで、つまりその他大勢は「まともぢゃない」といつてゐるやうなもの。事実さうだが、それを言っちゃぁお終ひだろ。やはり自民党はじつに不可解な、おかしな、まともぢゃない政権党であると思はされる。

 筒井竜平「円安で為替介入 金融政策、見直し怠ったツケ 」朝日新聞

まだ記者経験10年の経済部若手記者の卓越した記事に出会した。ストンと意が入ってくる。

「おそらくどのような経済モデルで計算しても物価だけ上がって賃金が上がらないということにはならない」
2013年4月の記者会見での黒田東彦日本銀行総裁の発言だ。あれからもうすぐ10年。資源高と円安で物価上昇率は2%を超えたが賃金は上がっていない。それでも岸田政権と日銀はアベノミクスを継承する姿勢を崩していない。金利を低く抑えるために日銀が国債を買い支える構図が定着し財政規律は失われつつある。仮に日銀が利上げにかじを切りたくても動けないのが実態だ。なぜ10年前にめざした好循環が生まれないのか、政府と日銀は真摯に検証し政策の見直しを検討すべきだ。今回の為替介入はそれを怠り続けてきたツケだと感じている。

これを読んだって感じるのは晋三もクロダソーサイも国賊だといふこと。

*1:劇評には「良い」「悪い」と「面白くない」の3つあり。「悪い」方が「面白くない」よりまだマシだが「面白くない」劇評ばかり読まされてウンザリ。

*2:「完演」は中国語だと日本語の「終演」だが「演じ切った」で日本語で使はれた例は落語で談志の〈らくだ〉のPRくらゐか。つまりあまり良い用例とはいへない。