富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

観世御宗家〈江口〉大槻能楽堂

陰暦八月十五日。中秋。朝の水戸の気温は摂氏21.2度。快晴。水戸を朝イチの特急で発ち東海道新幹線*1家人は京都で下りてアタシは新大阪まで。大阪は2014年7月に松竹座で松嶋屋寺子屋を見て以来8年ぶり。10時46分に新大阪着で駅構内のフードコートで道頓堀今井のきつねうどん。本店に行きたいがちょっと時間がとれない。忙はしいところで何だか学生食堂でうどん啜つてゐるやうな感じ。御堂筋線で心斎橋。岸澤屋で黒豆甘煮の瓶詰め贖ふ。

f:id:fookpaktsuen:20220910195952j:image

これで上町の大槻能楽堂まで歩いてゆくだけ、と思つたらまだ時間も余裕あり。近くの「にし家」でうどん(揚げ桜海老おろしうどん)いたゞく。本日の大阪の最高気温摂氏32.8度。

f:id:fookpaktsuen:20220910200012j:image

東に歩き東横堀川渡り空堀商店街のアーケードに入り上り坂に本当に驚いた。大阪の上町台地がこんな高低差あるとは。急な坂道に昭和の商店街で他にはない光景。大坂冬の陣の後に埋め立てられた大坂城南惣構(そうがまえ)堀の遺構である空堀通の西半分がこの商店街なのだといふ。これを東にさらに進むと真田丸跡なわけで、こんな高低差あるところに深い堀などあつたのだから攻めるに攻めあぐねる地形だらう。大槻能楽堂。大阪観世会で観世左近元正三十三回忌追善公演(今年度第二回)。

f:id:fookpaktsuen:20220911083754j:image

東京でこの追善興行は春を見て秋も来月あるのだが大槻能楽堂に来てみたかつたことが一つ、そして観世御宗家の〈江口〉を見る機会。新幹線も新大阪の手前でこの能の舞台となつた江口の里近くを通つてゐた(淀川と神崎川の別れるところ)。今日は畏友村上湛君も来られてゐて(といふか彼は今年何度も文蔵師との対談などあり大阪に来られるのは頻繁)上方の能のことを聞く。

f:id:fookpaktsuen:20220911083805j:image

本日の番組は舞囃子は山本章弘〈融〉と文蔵師の〈卒都婆小町〉。梅若桜雪師が一調で〈歌占〉を謡はれたが東京で聞くよりもありがたみ一入。御宗家の〈江口〉は今日の大阪でのこの会を観世の先代の追善公演をきちんしたものにする意気込みかしら格別。大倉源次郎(小鼓)、杉市和(笛)と山本哲也(大鼓)の「音楽」も本当に見事。本日の〈江口〉は「平調返」だが、そこまでの面白さはアタシにはまだ/\。折から中秋の日で快晴で晩の名月が期される日、それだけでも今日の〈江口〉だが湛君は英国女王逝去で、その追善にもならうと昨日呟かれてゐたがまさにさういふものになりました。

思へば仮の宿に。心とむなと人をだに。諌めし我なり。これまでなりや帰るとて。すなはち普賢菩薩と現はれ舟は白象となりつゝ。光とともに白妙の白雲に打ち乗りて西の空に。行き給ふ有難くぞ覚ゆる有難くこそは覚ゆれ。

午後5時すぎに終演。何だか周辺に随分と雨雲があるやうでいつ大雨になるかもわからず大阪駅行きの市営バスが来たのでそれに乗る。寝屋川を京橋に渡る京阪電車を見ると京阪のプレミアムカーで京都に行きたいところだがJRで往復の切符があるからさうもいかない(あとになつて思つたが京阪は運賃420円ででプレミアムに乗車しても500円追加なのだから乗れば良かつた)。市営バスを西梅田の桜橋で下りて雨も来ないやうなので少し彷徨いて大阪ヒルトンホテル地下の梅田サンボア。ハイボール二杯。軽く夕食を済ませばならず。このヒルトン地下に天ぷらの新喜楽があり期待より美味しい天ぷらをいたゞく。酒は白鷹がとてもよく合ふ。


f:id:fookpaktsuen:20220910200113j:image

f:id:fookpaktsuen:20220910200135j:image

かなり空いてゐてボックス席占領の新快速で京都。


f:id:fookpaktsuen:20220910200200j:image

f:id:fookpaktsuen:20220910200155j:image

地下鉄で烏丸御池。三井アーバンホテルに投宿。家人は友人と八坂神社で中秋の名月を愛でてゐたさうでまだホテルに戻らずホテル近くの銭湯(初音湯)に。京都の銭湯は東京より高温なのではないかしら。

f:id:fookpaktsuen:20220910200110j:image

*1:東海道新幹線の振動、騒音、空気圧などとても苦手。何度乗つても慣れない。上りのほうが下りよりまだマシと思ふのはなぜかしら。東北新幹線のほうが快適なのは建造の時代の差だとかあるのでせう。