富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

ドナルド=キーン

陰暦六月廿五日。大暑。最低気温摂氏24.2度(水戸)。今日のお出かけは青春18きっぷで家人と二人で使ふのだが行き先は違ふが1セットのきっぷ(5回分の乗車券)を二人でなので新橋まで一緒に行き先ずは築地に向かふ家人と一旦二人で改札口を出て横浜に向かふアタシだけまた18きっぷ東海道線で横浜へ。横浜の最高気温摂氏32.8度。
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猛暑のなか横浜は山手の神奈川近代文学館。5月初旬に見学した特別展「吉田健一 文學の樂しみ」は生誕110年といふ中途半端も可笑しかつたが本日の「ドナルドキーン」は生誕100年。明日までの会期といふこともあり参観者少なからず。受付横で偶然、キーン誠己さん(鶴澤浅造Ⅴ)の尊顔を拝す。キーン先生は米国出身の著名な日本文学研究者ではあるが私も含めて誰もがけしてキーン先生の熱心な読者ではなく何となく人柄も含めて愛着を感じて回顧展を見に来てゐるのではないかしら。私だつて吉田健一訳『日本の文学』と『百代の過客 - 日記に見る日本人』くらゐしか読んでゐない。
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キーン先生と並ぶ日本文学の大家たるサイデンステッカー先生の方がいくらか多く読んでゐる。サイデン先生といへば不忍池。湯島にお住まひで不忍池周辺を昭和の終り頃もよく散歩されてゐたが2006年に日本永住されて翌年に散歩中転倒して頭部強打で意識失ひ亡くなることになつたのも不忍池。キーン先生といへば北区西ヶ原で霜降銀座あたりが地元だつたさう。この二人の大家が湯島と西ヶ原でいずれも「喪山」©冨田均だとは。
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近代文学館でさんざんドナルドキーンして、もう大満足。ふら/\と山手から元町に下り石川町の通りかゝりの銭湯でひと風呂浴びて缶ビールくいっと飲んで横浜から新宿湘南ラインで恵比寿。横浜から恵比寿まで半時間もかゝらないとは。土曜午後で恵比寿も昭和終はりの恵比寿住まひには想像できない随分の人出。東口を出て(昔なら第一勧銀があつたところに)アトレ恵比寿西館あり裏手の高台にあるGalarie LIBRARIE6を訪れる。作家・中井英夫生誕100年展。好きな作家の小さくも、こんな回顧展があることを知つて訪れ暫し英夫の世界に浸る。今回の回顧展に合はせ同ギャラリーが限定250部で英夫の『水星の騎士』を上梓され、それを購める。思潮社の現代詩文庫66『中井英夫詩集』も新古書が1冊あり1992年の第7刷が800円で(当時の定価1,200円)これも慌てゝ入手。小説すらまともに読めぬアタシが詩集を入手するなんて。現代詩文庫は高橋睦郎以来で2冊目。

ギャラリーの人につい「中井英夫の昭和末の新宿の酒場を識る、恐らく最後の世代世代だつたんです」と言つてしまふと(それでもあの酒場で英夫には会へず終ひ)「本多正一さんが居らしゃってゐるから」と言はれ本多氏を紹介される。この本多氏と話し始めてから今日のこの回顧展が英夫100年で本多氏の写真集にも絡んでゐることを思ひ出してお話させていたゞゐてゐるなかで本多氏が英夫末期のアシスタントであり英夫晩年のあの英夫のスナップを撮られた方で創元社文庫の英夫全集や河出書房新社から出た英夫のムック本の編者でもあることに気づいたが話の途中で、そんなこと無知も恥ずかしくおくびにも出せず。
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家人が銀座にゐるといふので恵比寿から日比谷線で銀座。銀座ライオンで落ちあふ。やはり何度来てもこちらのサッポロビールは最も美味しい。いつも腸詰など頼むがメニューにフィッシュ&チップスがあるのを見つけ、これを注文。香港でも英国流でF&Cはよく注文してゐたが銀座ライオンは油がちがふのかしら。本当にこんな美味しいF&Cは他にない。倫敦のパブよりこちらの方が美味しいだらう。あの「膨らんだ」F&Cと違つて白身魚の〆り具合もジャガイモのかりっとした上げ具合も見事。カツサンドもいたゞいて本当に満足。

*扇子の袋を外飲みして何処かに置き忘れ所在不明だつたので銀座にゐた家人に宮脇賣扇庵が午後5時迄やつてゐたので慌てゝ買ひにいつてもらつた。

東京駅から電車に乗るときは東京駅のグランスタのはせがわ酒店売店の方でコップ酒はいつも八海山を買ひ求め電車の一等車でこれをぐいと飲んで寝てしまふとあつといふ間に水府に着く。