富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

代々木果迢会別会@国立能楽堂

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昨日から岩波書店「日本古典文學大系」の「謡曲集」二巻の月報を読んでゐた。昭和35年の同集㊹の月報で巻頭の一文はご存じ『佐々木小次郎』の直木賞作家・村上元三。能を見に行つて能楽堂では舞台で演じられてゐる肝心の能を見ないで客席で謡本を広げてゐる観客が多いと苦言。それでも能にまだ明るくない者でも(まさにアタシだが)「能が退屈」といふのは能だけは予備知識がないとついて行けないからで謡曲集があれば手引きになり能楽堂では舞台を見てゐられる、と。観世寿夫はさすがなもので謡曲集発行の辞に「カタリ」で物語の背景や状況など意味明瞭なものもあるが例えば〈芭蕉〉の「それ非情草木といつば真は無相真如の体、一塵法界の心地の上に雨露霜雪の象を見す」など文字で読んでも意味不明……だがその〈世界〉全体のイマージュができれば良いわけで、それは役者の詞であり謡の発声であり西洋の音楽の旋律やハーモニーとは異なる「声にはならない息の持つ緊迫感」だとか(このへんのことは村上湛君の指摘で道理である)それは能の囃子方の笛、鼓や太鼓もさう。寿夫先生曰く「ドラマとしての演劇性」なら舞台の演劇の方が面白いのであつて「今更古くさい能など持ち出す必要はない」が能の美しさは「謂はゞドラマを超越した所から生まれて来るところの生命感」である、といふ。謡曲本を読み物語の筋を知つて解説を読んでも、それは基本の一部であつて、その先になる世界観を能のなかで何う見出すかが大切なことを謡曲集の付録月報で書いてしまふ当時35歳の寿夫師なのだつた。

本日陰暦六月十八日。朝の気温摂氏21.4度。うすら寒いほど。朝三時過ぎに起きて謡曲集から〈隅田川〉を読んでゐたので空が白んでくるだけで何だか異界にゐるやう。
西新宿のメンズヘアサロン(理容室といふよか若い人ばかりでさういふ感じ)へ。Tさん指名で散髪。短髪の髪型がステキな或る方がこの理容師贔屓なのも納得。じつにカットお上手でオーセンティックながら個性ある仕上がりにしていたゞく。西新宿といへばヨドバシカメラだが淀橋写真商会(現・新宿西口本店)があるのは旧町名では角筈二丁目。淀橋は、も少し先だが昭和22年まではこの一体は淀橋区で広域では通称「淀橋」。この一帯、朝十時前にあちこち長蛇の列ありヨドバシカメラで何か売り出しかと思つたらパチンコ・パチスロ店の開店待ちね。お昼はベルクで五穀米と十種野菜のカレー。昼前だとあまり混雑しておらず。国電で代々木駅。駅のスタンプをゲット。山手線のガード潜り埼京線の踏切渡り共産党本部の横を抜けて国立能楽堂

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代々木果迢会別会で浅見真州一周忌追善。浅見家は疫癘延蔓の前年(2019)二月、同人一行渡仏の日の朝に真州の兄・真高他界で翌年三月の代々木能舞台創建70周年の記念別会は真高一周忌追善も兼ねることになつたがこれも外出自粛要請で延期となり昨年二月に真高三回忌追善の別会のあと七月に真州亡くなり今回がその一周忌追善とは。


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昨年十月に真州傘寿記念の会が予定されてをり真州師が〈姥捨〉予定してゐたこと、そこで序でお話されることになつてゐた馬場あき子さん。真州追善で観世流で文蔵師の仕舞(定家)や御宗家の一調(杜若)も入る番組。村上湛君とお会ひして真州氏のことなどいろ/\お聞きして勉強になる。

今日もまた大雨になるかと思ひきや東京も9mmほどの降水で気温も24.7度までしか上がらず。それでも湿度は100%とまるで香港。久ヶ原T君が新宿でベルクにゐるといふので本日二度目のベルク。昼前と違ひ混雑してゐて狭い店内でT君の向かひに坐つたらT君の隣席に偶然、先週末に水府でご一緒に深酒したK先生がゐてあばらかべっそん。T君と疫禍初めて連れ飲みで馴染みだつたバーに顔を出しT君常連のワインバーで昔語り。山岸涼子日出処の天子』の話から更に少し遡り清原なつの『花岡ちゃんの夏休み』をT君も読んでゐたなんてT君との付き合ひも何十年となるが今日までこの話題には至らなかつた。二更になる前にお別れ。空腹感あり夕食もとつてゐなかつたことに気づき本日三度!でベルクに寄り名前失念の美味しいバーガー頬張り帰宅。

朝日新聞(本日)の読者投稿の川柳。晋三の死去と国葬でずらりと並ぶが川柳とはいへ一捻りもなく、☆はまず/\だがあまりにお粗末な出来のものばかりではないかしら。いくつかのネタの中にそっと一つくらゐ入れる程度で良いだらうに。
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