富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

陰暦五月初三

気温摂氏16.3/26.3度。晴。ゆうちょ銀行で口座に入金しようとしたら硬貨の入金は無条件に(つまり営業時間中でも)枚数により規定の手数料がかゝります、ですって(1~25枚で110円)。あばからべっそん。

昨日MOA美術館にてマルタ=アルゲリッチ刀自と能の大槻文蔵師の舞台あり(こちら)。ご覧になつた久ヶ原T君に様子を伺ふ。バッハのパルティータ2番(BWV826ハ短調)。


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これが村上湛君の演出だつたら文蔵師が老女の扮装でマルタ刀自の生涯を舞はせて大野一雄先生に敬意表し題して〈ラ=アルゲリッチ頌〉かしら?と。能なら物語は別府の宿で長の女に誘はれ祠に埃かぶつた鋼琴を下手ながら奏でるとアルゲリッチ刀自の霊現れ……とか想像してしまつた。


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T君によればアルゲリッチさまのバッハのパルティータは浪花節、しかも虎造張りの正格で品位高い浪花節のやうだつたさう。先日の水戸芸術館での水戸室内管弦楽団とのシューマンのピアノ協奏曲もきつと小節がきいて畝つてゐただらう。アルゲリッチだとシューマンの〈子供の情景〉も「何某女の恨み節」に聞こえるときがあるのだから。
朝日新聞では連載「いま読む「音楽展望」吉田秀和 没後10年」が始まつてゐる。当時の朝日新聞では秀和さんの「音楽展望」と周一さんの「夕陽妄語」が楽しみだつた。「音楽展望」では何といつても「ひびの入った骨董」が最もセンセーショナルであつて「中原中也の目」は「音楽展望」を読んだ誰もが最も美しい青春の日々として印象に残つてゐるだらう。秀和先生がいまのアルゲリッチ刀自の日本での余生といふにはエネルギッシュな活動を見たら「別府の女」で何と書いてゐたかしら。ところで好角家の秀和さんがこんなのを書かれてゐたとは知らなかつた。

最初で最後の「相撲展望」あゝ相撲!勝ち負け、すべてではない(2011年2月19日)

▼もう数日で六四である。あの「天安門事件がなかつたら」。民主運動弾圧がなかつたら、ではない。もし弾圧されてゐなかつたら中共の権力は脆弱になり今日までの経済成長と大国化そして「安定」はなかつただらう。非常に逆説的で不愉快な言ひ方になるが「民主化要求がなかつたら」なのである。弾圧もなく中共中央政府があれほど強圧的にもならず鄧小平路線で緩やかな改革開放が続いてゐたら。香港返還での一国両制ももつと柔軟で香港は返還前の体制を維持しながら中国が五十年の間にその体制に近づくことに期待して。それが天安門事件と弾圧と香港の将来不安と……で全ての計画が狂つたのだ。さういふ意味で六四はじつに歴史の転換点となる事件なのである。香港も民主化運動の結果、非民主的な体制が実現。つまり民主化など求めてはいけないのだ。

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