富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

瓜連で牛久

陰暦四月十六日。気温摂氏12.6/15.4度。終日、雨(11mm)。

家人と久々に瓜連のあまや座でドキュメンタリー映画〈牛久〉を見る。瓜連で牛久とは。牛久にしてみたら、とんだイメージダウンだらう。

 ガイジン脅すにゃ刃物は要らぬ 一言「牛久」といへば良い

明らかに日本の外国人移民政策がおかしく法務省もおかしいのだが一番おかしいのは末端で「牛久刑務所」で実際に外国人を扱ふ職員の彼らである。真っ当な神経とは思へないが彼らが普通にそのへんで生活してゐるわけだ。仕事と割り切り制服に着替へ抑留させてゐる外国人が目の前にゐるとあゝなれるのだらう。まさに狂気である。


外国人流入に対してこのやうな措置しかとれないことはそれだけの問題ではなく我々の社会そのものの問題であつて日本そのものの問題である。〈近代〉に対するきちんとした禊ぎができぬまゝ近代になつてしまひ戦後その国のかたちの形成を怠つたまゝさまざまな課題を何も解決しない、できないまゝ今日に至つてしまつた矛盾が、この映画に現れる「いやな感じ」そのもの。

入管収容施設の映画「牛久」の監督が問いかけるもの トーマス=アッシュ監督インタビュー(共同通信)

監督はかなりの頻度でセンターを訪問し隠しカメラで面会の様子を撮影。センター内での撮影を実質的に禁止する規則(面会の際にはカメラ、ビデオカメラ、録音機及び携帯電話の持込みや使用はご遠慮願います)があるなかで監督は明らかに当局にマークされてゐただらう。これがもし日本人による仕業であつたなら、もつと早い段階で何かしら怪しい行動や携帯品が疑はれて面会が制限されてゐたはず。この外国人「不法」収監を熱心に実態報道するのが『週刊金曜日』で、このドキュメンタリー映画に疑問を投げつけるのが扶桑社の『SPA!』なのもわかりやすい。

「私は映画『牛久』に騙された」外国人収容所での隠し撮りに出演者が怒るワケ(週刊SPA!)

ドキュメンタリーであるから「事実」のやうで確かに訴へたい見方といふものがあつて、その味つけがされてゐるといふ指摘はあつて当然だらう。だが、このSPA!の記事も監督の方策に対する疑問であつて牛久の入管に「こんな事実はない」といふやうな反論は出てくるはずもない。いずれにせよ狂気の世界なのである。
それにしても2019年には全国の入管拘置所に950人だかゐた収容者が、昨年度末には230人だかに減少してゐて、それは日本政府(法務省)の外国人移民対策の方針変更や外国人収容者を支援する市民運動の成果なのかしら。しかし実際は新型コロナ感染拡大でセンター内での(当然、収容される外国人たちからの)感染でクラスター発生、職員への感染を恐れ収容者数を減らしたのである。感染のクラスターが不安で仮放免できるのであるから元々、収容するだけの本質的な違法性や何か犯罪に至るやうな可能性も何もないのだ。たゞ「こんな連中」が街なかにうじゃうじゃゐることが許せないから見せしめのやうに彼らの身柄を拘束してみせる。この「排外」から何を護つて何を残さうとしてゐるのか。そんなことを牛久で外国人を締め上げてゐる彼らは何も考へてゐなくて、もしかするとそれはルサンチマンなのかもしれない。いや、間違ひなくさうだらう。


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瓜連のあまや座で映画を見ると久慈川を渡り「佐竹」でお蕎麦だつたが今日は月曜で定休でした。そこで藤田十文字から河合の方に向かい「田季野」といふ石臼挽きださうな手打ち蕎麦やに入る。昼どきなのに閑かなものだつたがご亭主のお勧めで期間限定のきのこ蕎麦をつけそばでいたゞく。素朴なお蕎麦に、このきのこと野菜のお汁が(醤油味の強い茨城にあつて)まぁあっさりとしてゐて風味豊かで美味しく付け合はせの香の物も筍の煮つけも上品なお味で老いたご亭主一人でこの料理には本当に驚いた。あまりに美味しいので家人共々お汁まで残すことなくきれいに食べたら、ご亭主にもとても喜ばれた。
母のお遣ひもので水府は谷中の吉田屋で名物の「吉原殿中」を入手。注文販売だが今朝電話して必要な数を用意いたゞけた。包装を開いた瞬間にきな粉の風味で製造当日はとても柔らかくておいしい。