富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

土佐に遊ぶ(その3)宿毛

農暦三月十一日。週明けの月曜日。高知を発つ前に済ませておくべきこと=郵便局。坂本龍馬生誕の上町に「龍馬郵便局」あるさうで(元々は上町郵便局だつたのをドラマ〈龍馬伝〉の龍馬ブームに合はせて龍馬郵便局にしたとか?)ホテルの退房手続き済ませてから路面電車で上町方面へ。高知市外は東西に長く、その横の道が他所へ向かふ街道なら北は江の口川、南は鏡川に挟まれた市街を南北に商店街が何筋かある。北には神々の住まふ山が連なり南に大洋が広がり夢はそちらへと向かふ……なんて司馬遼太郎的にいふとさういふ土地の精神がある。
龍馬郵便局では客が観光客だとわかるとカウンターで記念郵便関係のいろ/\な封筒など見せてくれて、とても親切。自分で押せるスタンプも各種あり。郵便を出して、これで今日のミッション終了。
電車通りから郵便局に向かふ道は突き当たりに土手がある。鏡川の昔にできた堤防。その土手を東に歩く。混凝土で舗装もせず昔のまゝ。山内神社を抜け旧山内家下屋敷長屋。幕末に建造の足軽屋敷(国の重文指定)。かなり朽ちてゐたものをきちんと補修。この下屋敷(現在は地元の高級温泉ホテルの三翠園)は薩摩から西郷隆盛が来土で容堂公が会見するなどした場所。城に招くことも憚られ下屋敷に。


f:id:fookpaktsuen:20220411161939j:image

f:id:fookpaktsuen:20220411161942j:image

路面電車でホテルに戻り旅荷ピックアップして高知駅。岡山からの特急南風(アンパンマン塗装)がちょうどホームにあつた。ホームで「仕出しのあんどう」の弁当購ひ酒は〈酔鯨〉。特急あしずりで西に向かふ。


f:id:fookpaktsuen:20220411162007j:image

f:id:fookpaktsuen:20220411162004j:image

予土線は海沿ひを走つてゐるやうで海岸線まで高台が迫り出してゐてトンネルも多く海から随分と離れたところを走つてゐるやうで時折、海岸線と港町がさっと現れる。


f:id:fookpaktsuen:20220411162333j:image

f:id:fookpaktsuen:20220411162331j:image

窪川から列車は土佐くろしお鉄道中村線に入る。この特急の終点は中村。今でも宿毛(すくも)までの特急が日に下り1本、上り2本あるが(最盛期は特急が6往復)下りは夜の時間で今日は中村で宿毛行きの各停(1両のディーゼル車)に乗換へ。四万十川を渡る。


f:id:fookpaktsuen:20220411162025j:image

f:id:fookpaktsuen:20220411162028j:image

こんな田舎なのに、と思ふがずつと高架なのは明治から鉄道線建造の計画があつたが宿毛線(23.6km)の開通は1997年10月。国鉄の置き土産(負債)は水戸なら大洗鹿島線もさうだが高架鉄道仕様。長いトンネルを抜けて宿毛へ。終点の宿毛駅宿毛市外は一つ手前の東宿毛駅に近い)にはちょっと見た目贅沢なボックスシートのTKT8000型車両の列車が停まつてゐた。この路線は最長でも車両は2両の編成。


f:id:fookpaktsuen:20220411162057j:image

f:id:fookpaktsuen:20220411162055j:image

今日の宿は元々は国民宿舎だつた温泉旅館〈椰子の湯〉。国民宿舎の経営権委譲でかなり改装してリゾートホテルに。大島といふ島にあつて宿からは豊後水道一望(宿毛からは大分の佐伯との間にフェリー運行あり)。宿毛駅からは路線バスもなければ宿の送迎バスもないのでタクシー自動車雇ふ(片道1,300円)。途中で宿毛片島郵便局に寄つてもらつたが風景印がないどころか職員も風景印?といふ感じで宿毛の本局(東宿毛駅からも少し遠い)にあるか何か確かめませうと言つてくれたが、そちらまで回るのは六ッかしい。


f:id:fookpaktsuen:20220411162127j:image

f:id:fookpaktsuen:20220411162124j:image

部屋からも露天のお風呂からも海望は格別。だが今日は午後から曇つてしまひ夕焼けも期待できない(露天風呂からの画像(上)は参考まで)。それでも風呂は心地よく今日は投宿してすぐ、夕食のあとと寝しなに三度もお湯に浸かつた。


f:id:fookpaktsuen:20220411162144j:image

f:id:fookpaktsuen:20220411162142j:image

大島は桜の名所。宿から遊歩道を上ればすぐ大島桜公園に。だが日本で桜の開花が一番早い南国土佐では桜は3月末までが最盛期で散歩してはみたが今はもうすつかり葉桜。地面の澤山の桜の花びらが満開の桜の名残り。

f:id:fookpaktsuen:20220411163344j:image

この客室からの宿毛湾の夕日も画像はご参考まで。夕食はアタシたちは「旅館の豪華な夕食コース」が苦手。食卓につくとすでにずらーっと料理が並んでゐて鍋の固形燃料にお女中がチャッカマンで火をつける、あれ。温泉町なら外の食事処か飲み屋にでも行けばよいが、この宿毛の大島の宿はポツンと高台に1軒で外に出るわけにもいかない。たゞ「1泊朝食のみ」のパッケージがあつたので、それで夕食は宿のレストランで好きなものだけ少し注文して、にした次第。お刺身と少しの揚げ物で最後に麺を一寸啜ればそれで十分。お酒は司牡丹と土佐鶴。

今日は宿毛の駅舎で今年初めてのツバメを見た。巣作りに忙しい。「ツバメの巣ができてフンが落ちます、ご迷惑をおかけします」と見守るのが微笑ましい。


f:id:fookpaktsuen:20220412084323j:image

f:id:fookpaktsuen:20220412084318j:image