富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

土佐に遊ぶ(その1)

農暦三月九日。気温摂氏10.1(東京)/ 21.9(高知)。品川から京急電車で羽田空港へ……その途中駅の「大鳥居」とか「穴守稲荷」ってのが良い。空港はこれでもフライトも搭乗客もけして多くないのだらう。搭乗手続きは簡素化されてゐるなかCXのマイレーヂでの無料航空券はカウンター扱ひ。さう/\そも/\今回は1月に13萬哩ものポイント失効期限で香港に戻るとか海外に遠出といふわけにもゐかず何うにか消費せねばならず国内でのフライトで北海道でも沖縄でも良かつたのだがいずれも遅かれ早かれ行くことにならうZielなのでナラバなか/\往くことなき土佐は?といふ家人提案で高知に飛ぶことにしだ次第。折からの快晴で見事な富士を拝み南アルプスの連峰の雪を眺む。

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満席のJL493で、あっといふ間に高知に。快晴。空港バスで菜園場町。堀川岸はすつかり葉桜で堀川渡りホテル日航高知に下榻(こちらもCXの哩で無料宿泊)。初の高知で(四国は随分と昔に香港から金毘羅さんだけ来たことあり)先づはオリエンテーションとハリマヤ橋に向かひ歩いて「ひろめ市場」で遅めの昼食……といひつゝ鰹のたゝきで昼酒。どこか防疫?といふくらゐの賑はひ。観光ズレしてゐるのかと思へば地元民も昼から随分と飲んで食べてゐる。客遇らひの上手さに敬服。常連だらうが上客だらうが一見の客だらうが一切の差別なし。誰にでもよくしようといふ気持ちの良さ。さすが土佐とはじめから恐れ入る。


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あまり観光をしないのだけれど折角、高知に来たのだからお城を見てみませう。気温は20度超で早速今年初めて日傘登場。お城の何よりも石垣の見事さにうっとり。石垣のエッヂがとにかく美しい。お城周辺の建物は県庁、市役所からお城の景観邪魔にしないやうに低層で設計もかなり意識してゐるが、そんな中にポストモダン的な県立図書館がむしろお城とのコントラストが美しい。高知県立文学館。堀割を東から北に巡ると寺田寅彦生家の記念館もあつて、そちらも見学。江の口川をぐるりと西に巡る。市内にこんなに公園や憩ひの空間があるのが何とも浦山しいかぎり。古書肆の井上書店。何とも充実の書籍の所蔵にあれこれ垂涎。なかでも石川淳選集(全19巻)は箱が少し焼けてゐる程度で新古書に近い開いてもゐない状態でマヂに入手したくなるが陋宅近くの私立図書館に蔵書ありだからと自分に言ひきかせる。岩波文庫中江兆民『三酔人』など読み直しに数冊購ふ。一寸した客相手に、だが宮尾登美子はよく読んでゐた家人が文学館で大原富枝といふ高知の作家を知つて、その本があつたので家人が購入すれば女将の高知の文学談義がまことに興味深い。こんな古書肆が市内の中央にあることが何て素晴らしいことか。ホテルに戻る途中で堀川の辺りにある珈琲豆屋〈豆蔵〉でブレンドと深煎りの珈琲豆100gずつ購めホテル傍らの昭和レトロな酒屋(安岡酒店)で部屋飲みの日本酒(四合瓶)も購ふ。この酒屋のご亭主は「間違ひなくピーター=バラカンの番組にリクエスト曲出してゐるだらう」といふ感じの音楽、レコード好きであつた。宿に戻ると紅色の野球のユニフォーム着た集団がロビーに数多ゐて何事か?と思へば実業団野球の四国何某大会で三菱重工の諸君。三菱創業者の地元である。ホテルの大浴場までまるで野球団の合宿所の如し。


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昼もひろめ市場だつたが夜も面倒でまたひろめ市場へ。日本にこんなホーカーズ、熱食中心があるとは! 昼は「やいろ亭」の鰹のたゝきだつたので夜は「仕出しのあんどう」の鯖寿司や土佐黒潮水産のトロの握りなど頬張る。


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それにしても、この土佐の人々の感覚、人ったらしで愛想も良く、何なのでせう、これ。何より余裕がある。余裕があるから他者への許容力がある。その上の大らかさ。水府の人々の、あの自豪と他者への失礼とは真逆。本当に頭が下がる。

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サッポロ赤星のあとの土佐鶴純米で、もう本当に幸せ。それにしても今日一体どれくらゐ酒を飲んでゐるのかしら。ホテルの客室のベットの間の「コントロールパネル」が22世紀すぎて可笑しかった。


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香港では養老院で感染拡大してゐるが、あの環境;飛行機のファーストクラスのコンパートメントだと思へば良い、あそこにずつと高齢者がゐるのだ、こゝで空気感染がないはずもない。林鄭曰く全市民自主検疫で(それでも全市民がそれに応じたとも思へないが)3万人の自覚症状なしの感染者がゐたとか。さもありなむ。それにしても行政長官を今期で退任と発表しての林鄭の表情の何て清々しいことか。


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