陰暦二月初三。啓蟄。気温摂氏2.9°(水戸)/17.9°(東京)。常磐線上りの特急が水戸を出るとすぐに懐かしい国鉄485系塗装のE653系(下り)とすれ違ひ何かと思へば「水戸梅まつり号」の週末運転。偕楽園の臨時駅(下り)にはまだホームに乗客の姿あり。水戸の〈梅まつり〉も古呂奈の影響で2月から3月に「延期」となつてゐたが、この冬の寒さで梅の開花も遅れたのは不幸中の幸はひか。上野駅で公園口の喜乃字屋で蕎麦を啜る。そのあと〈みはし〉で豆かん。
上野で音楽会やバレエとか通ふ知己が皆々喜乃字屋で空腹を満たしてゐて酒も飲めるので人気だと聞く。確かに立ち食ひだと思へばレベル高く値段もお手頃。これなら評判にならぬはずもなし。この場所は昔は大食堂の「聚楽」で(実は今でもアメ横の入り口に「じゅらく」ありとは)確か階下の食品街入り口に神田志乃多寿司の売店があつた記憶。甘味の〈みはし〉が上野駅アトレに出店があることも今日通りかゝるまで知らず。上野公園は快晴でお散歩には心地よく人出あり。桜どころか上野の山で梅もまだ見ごろではない。折角の行楽日和ながら上野動物園だけは休園中。国立博物館に出向き特別展〈ポンペイ〉参観。展覧会や美術展など週末、休日は長蛇の列で数時間待ちを考へたら時間予約制で空きがあればウォークインもOKといふ程度のこのコロナ型も悪くはない。日本代表する美術館でモデル(AMON)扮するイメージキャラの「ポンペイくん」とか、よくわからない。
今回の特別展のグッズで評判は「炭化したパン」のクッションや「猛犬注意のモザイク画」のイヌのぬいぐるみとかよく売れてゐるのださう。
ポンペイのデザインはどこか、おかしい。成熟に成熟した黄金期で、それがヴェスヴィオ山の噴火で全てが埋没してしまふ不思議。2千年前にこんな想像力があつたのだから、もうアトなんて何うでもよい気がしてくる。これ☟だつてスタヂオジブリだらう。
上野から有楽町を経て銀座へ。ウエストに寄らうと思つたら喫茶は9組待ちで、その間にご近所の松榮堂でお香や炭団を買ひ求める。ウエストと松榮堂の間に5丁目にあつたゑり善が移転。
GSIXの観世能楽堂で大槻文蔵裕一の会。
文蔵師シテで〈江口〉。江口でクセ「紅花の春の朝」からシテと地のやりとりのところが格別。狂言は萬斎さんで〈縄綯〉なわなひ。アタシは解説で「太郎冠者まで打ち込んでしまい」の意味すらわからず。主人が博打好きで賭けるものがなくなり家来の太郎冠者まで「打ち込んで」それも負けて太郎冠者を博打の相手に渡さねばらならなくなつた、といふ状況が狂言が始まつてやつとわかつた次第。この話の後半は太郎冠者の一人語りなのだが萬斎さんの今日のそれは見所との空気が共有できてゐない感じのまゝ終はつてしまつた。裕一さんシテの〈小鍛冶〉はまるで新宿ロフトでのライヴのやうな賑やかさ。まるで歌舞伎の松羽目もののやうな派手で大きな動きで、やりとりも狂言のやうで、かうした展開も早く面白いものがウケるのだらう。そこから〈江口〉や〈芭蕉〉〈定家〉といつた精神世界のものに昇華してゆく。それにしてもこの〈小鍛冶〉は草薙の剣の刀鍛冶の話で前提として夷征伐があつて物語のめでたき事は勝者の世界でロシアのウクライナ侵攻などあると、かうした物語もいろいろ考へさせられる。
GSIXを出て6丁目の銀座ライオンで啤酒飲んで何か頬張らうかと思つたら午後7時で外で行列あり帰りの特急の時間もあるので交詢社通りを抜けて蕎麦〈よし田〉。東京駅を発つ特急までアト50分もない。鴨せいろでヌキぢゃないが先に鴨のお汁でお酒いたゞき、せいろ啜り少し時間あつたのでお酒をもう1本いたゞく。東京駅の構内の本屋?で猿田彦の珈琲豆購ひカップ1杯をテイクアウト。水戸駅のガチャ玉を(上野駅にも賑やかなガチャ玉エリアもあつたので)ふと覗いてみると新幹線(のぞみ)の座席といふガチャ玉(400円)あり思はず購入してしまふ。