富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

ガリバー旅行記

陰暦正月十九日。気温摂氏▲2.7/10.2度。曇のち雨。

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朝日新聞で毎週金曜夕刊で連載されてゐた柴田元幸訳『ガリバー旅行記』が昨日で終了。全84回で開始はコロナ元年6月のこと。新聞小説をちゃんと読んだのは朝日新聞宮尾登美子『きのね』と筒井康隆『聖痕』以来か。柴田先生はアタシが柴田訳を意識して読んだのはサリンジャーナインストーリーズ』だつた気がするが、それからしばらく柴田先生責任編集の『MONKEY』も読んでゐて柴田訳が好きだつたこともあるし子どもの頃に読み親しんだ『ガリバー旅行記』に〈日本滞在記〉があることを知つて完訳で、それが読めるならと思つて連載を読み始めたが日本滞在記が出てきたのはやつと去年の夏で連載が始まつてから1年以上過ぎてゐたが待ちに待つた日本滞在記は僅か1回分にも満たない文章量だつた。

(ガリバー旅行記:60)日本渡航記:朝日新聞

1709年の5月21日に「ラグナグ国」を出航して日本のザモスキに到着してイェドで日本の皇帝(将軍)に拝謁してナンガサクに護送され同年6月9日にオランダ船でナンガサクを出航して英国に戻るのである。20日にも満たない日本滞在でしかない。この旅行記に登場する不思議な国々の中で唯一、自在する国であつたのに。それで、もう連載を読むのも止めてよいものか、と思つたら第4部のフウイヌム(Houyhnhnm)国の物語の展開には驚いた。知性的な馬の国でガリバーはすつかりその馬たちに魅了され敬虔な信者のやうに彼らの国の文明を信奉するばかりか、それに対する現実の人間社会の愚かさ、野蛮さを嘆き人間嫌ひにすらなつてしまふのだ。フウイヌ国から英国に戻ったガリバーはもはや人間社会で生きてはいけぬほど、家族すら近くから避けるほど。それでもやつと旅行記を書けるだけの落ち着きはみせた。

私としては、あの高潔なる国(フウイヌム国)の征服を提案するよりも、むしろあの国の方から一定数の住民を派遣して下さり、我々人間に名誉、正義、真理、節制、公共心、剛毅、貞節、友情、博愛、忠誠心を一から教え、欧州を文明化して下さったらどんなにいいかと思うのです。それら一連の美徳の名前だけは一応、大半の言語において今も保持されていますし、古典のみならず現代の書物にも見受けられることは、私の乏しい読書量からでも断定できます。

そしてガリバーは英国の帝国主義をかう述べてゐる。

けれども、わが発見によって王国の領土拡大を推し進めるのを控えたのには、もうひとつ理由があります。正直申し上げて、そういう場合に際しての、君主の方々による正義の采配に、私としてはいささか疑念を抱いてしまうのです。たとえば、海賊どもの一団が嵐に遭って、いずこともわからぬ方に流されてしまうとします。やっとのことで、中檣(トップマスト)にのぼった小僧が陸を見つけ、一団は略奪と分捕りを意図して上陸し、無害な民族に出会い、親切に迎えられ、その国に新しい名を与え、国王の代理としてその地を正式に所有し、それを記した腐った板か石ころを据え、現地人を二、三十人殺害し、「見本」として二人ばかり力ずくで連れ帰り、己の罪を赦免されるのです。

このやりくちは現代もなお何も変はつてはゐないかもしれない。この連載が終はるにあたつて今月11日に柴田先生と毎回、興味深い内容の注釈者(原田範行)と見事な挿絵描き手(平松麻)と担当(板垣麻衣子記者)によるオンラインの対談もあつて、これもまことに知的な「バンド」によるセッションで楽しませてもらつた。単行本は秋に朝日新聞出版さうだが第4部が怖いのでアタシはきつと読み返すことはないだらう。

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香港では「防疫」が巨きな社会大衆運動として動かされやうとしてゐる。防疫のために社会が一つとなる、戦争中の日本のやうな翼賛体制が目標だらう。香港だけでは防疫ができないから中央政府の指導と広東省からの支援が必要。行政長官選挙も疫禍、緊急法を用ゐて選挙を数ヶ月遅らせることも視野に入つたやうだが政治はすでに体制翼賛体制なので行政長官選挙が遅れたところで何ら騒ぐほどのことではない。

學運領袖熊焱現身反對六四紀念館 擬競選美眾議員 王丹:痛心疾首 - 明報

中国の民主化運動のリーダーで香港での民主化運動にも参加してきた熊焱が米国で王丹らが計画する六四記念館の開設に反対する集会に出現。六四追悼の動きは社会の断裂を招き将来的にも利益がないとする。熊焱は米国で下院議員選挙に立候補といふ噂もあり親中共の中国人団体の支援でも取り付けたいところなのかしら。