富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

うどんのぬき湯

陰暦正月初九。気温摂氏▲2.6/10.1度。晴。

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並木の藪を贔屓にする久が原T君がその並木藪と赤坂砂場、それに神田のまつやがあれば生きていけると言つてゐたが本当にさう。手打ちで上質の蕎麦を供する蕎麦やはいくらでもあるが〈蕎麦やの世界〉はこの三軒でせう。あと一軒加へるとしたら蛤そばがあるので大坂屋砂場(虎ノ門)。その中でもやはり格別は並木の藪。村上湛君は倒れる前の播磨屋(ご夫妻)にここで遭遇して播磨屋から丁寧に挨拶をいたゞいてしまつた由。T君から教へてもらつた並木の二代目・堀田平七郎『江戸そば一筋』は柴田書店刊(1995年)でこちらは図書館で借書で普通に読めるが並木の藪二代目が編集者の初代(勝三翁)遺稿集『うどんのぬき湯』は限定出版一千部の家蔵本(昭和52年)でT君はこれを早速入手したといふ。序文が義孝先生で扉絵の七夕竹と「藪」の一字が里見先生弴。T君は今、店で配るマスク挟みの本歌がこの字だと知れたといふ。図書館を自分の書架だと思つて図書館に蔵書ある本は買はないと決めてゐるが、祖母に連れられて行つて以来の並木の藪なのにこれ(うどんのぬき湯)は地元の台東区立図書館にもないのだから(さすがに都立中央図書館国会図書館にはあつたが)水府の図書館にあるはずもない。日本の古本屋サイトにも出品なくダメかと思つたらアマゾンに八王子の古書肆から1冊だけ出てゐて早速それを入手。コンディションは「良い」とあつたが「非常に良い」で箱もパラフィン紙で包まれ千冊のうち切の良い五百番を入手。この遺稿集発刊に関する業界新聞の記事の切り抜きも入つてゐた。これは久が原T君に感謝、感謝である。


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香港の感染者数が日に600人だとかで人口が750万人だと思へば茨城県に比べても「そんなものか」と思ふ程度だが香港での防疫目的の管制は凄まじいものあり。24日からはワクチン接種なしで商場、市場やデパートへの立入り不可。美容理髪店や宗教施設も同様だが「疫苗通行証」システム整備されてゐないため本日から23日までは強制的に休業。正月(春節)の間は散髪をしない習慣で正月明けで散髪のタイミングだつたため昨日は慌てゝ散髪に長蛇の列。店内も密で、これではクラスター発生促すやうなもの。4人までの会食は2人となりプライベートでも2世帯以上での団欒もダメ。公共交通機関の利用はワクチン接種条件とされてはゐないが地下鉄の駅によつては商業施設経由しないと入れないところもあり、さうした不便を質されたリンテイ市長は防疫が最大優先であつて「どうやつて駅に辿りつけるか」など自分で考へろと冷徹。SARSがトラウマになつてゐるのかもしれないが明らかに中央政府の「動態清零」に対する過剰な防疫対応実施であつて強権で社会統制のプラクティスとしか思へない。こんなことをしてもコロナ防疫への積極的姿勢に同調する市民など少なく皆が辟易として社会動態が脆弱になるばかりだらう。香港はその動態性が活力の源泉だつたのだから、それが乏しくなると中共だつて何もできない。

(インタビュー)本土から聞き続ける沖縄 社会学者・岸政彦さん:朝日新聞

香港で沖縄の観光と物産のキャンペーンで翁長知事(当時)筆頭に来港で大きなイベントがあり末席を汚したが(2年連続で確か2度目は知事体調不良で来られなかつたか)そのときに招待客らが「沖縄は基地で政府から補助金が出てるからカネなんて使ひ放題でこんなイベントができる」といふ話をしてゐて沖縄の悪口を言ひながらタダ酒飲んで物産立ち食ひしてゐる卑しさに呆れさせられた。日本が米軍基地を沖縄に押し付けておいて、やはりかういふ感覚で沖縄を見てゐるのだとよくわかつた。

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