富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

三度、佐藤雅晴尾行

陰暦十二月廿七日。気温摂氏▲3.3/8.6度。快晴。

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朝の気温は寒いのだけれど日差しは明るさがもう遠くない春の到来を告げてゐるやう。日立の河原子海岸の崖の上にある超級銭湯に参る。まことに絶景。露天風呂につかるとインフィニティでまるで太平洋といふ巨大な温泉につかつてゐるやうな錯覚。海岸に数多くの自動車が泊まつてゐるのは波乗りの方々のお出まし。

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水戸芸術館での〈佐藤雅晴尾行〉展は明日まで

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この会期中に今日で3度目の参観になる。佐藤雅晴さんの晩期に、もう映像作品など制作ができない病室で一連のペインティングの作品はまるで新しい境地にすら見えたものだつたが、この時期のことが新宿のギャラリーKENNAKAHASHIでの佐藤さんの個展のときの記録に書かれてゐた。KENNAKAHASHIで、この〈死神先生〉の個展が開かれてゐるさなかに佐藤さんは他界された。

https://kennakahashi.net/ja/exhibitions/dr-reaper

KENNAKAHASHIはアタシも懇意にさせていたゞいてゐるギャラリーで海老原靖さんのカルキン少年の作品もそちらで購入したものだつたが、その海老原さんがカルキン作品と一緒に、この佐藤さんの作品にも登場してゐることに前2回とも気づかずに(見逃して)ゐた。そこで今日はその2つについてきちんと見納めておかうと思つた次第。

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今日も熱心に皆さんがじっくりと参観されてゐた。これでは感染危惧でさう易々と開催中止にはできないだらう。芸術館の地下の駐車場には遠方からの車のナンバーも。この疫禍だからこそ佐藤雅晴といふ人の〈存在と不在〉についての問ひかけが我々の気持ちに共鳴するのだ。

石川九楊「コロナで加速しているのか、日本語の乱れ」朝日新聞

文字を書くといふこと。その一文字一文字にイメージをのせてゆくといふ行動の繰り返し。その大切な行動がワープロからコンピュータでのタイプによつて大きな変化を受けてしまつた。書くことが疎かにされ言葉の信憑性が失はれ、このまゝでは言葉が崩壊してしまふ、と1945年生まれの九楊先生。

1945年は近代化のきっかけとなった明治維新が行われた1868年から77年後にあたります。あの敗戦から同じ年数が経ちましたが、その間この国は私たちは何をしてきたのか。平和憲法を掲げる一方で世界中で戦争を続ける国の軍隊を駐留させ核の傘に甘んじる。戦争は悪だとわかっているのに、なぜやめられないのでしょう。
ぼくはSDGs(持続可能な開発目標)という言葉は嫌いです。貧困や飢餓を終わらせるといった当たり前過ぎることをわざわざ目標として掲げなくてはならないという事態は恐るべきこと。子供たちや孫たちに、いったい、どんなかたちの日本を、世界を手渡すのか。コロナウイルスの感染拡大を機に、もう一度、根本的に、深く考えてみる必要があると思います。

まさに仰せの通り。これほどの書家には社会の偽善は通用しない。貧困や飢餓を終わらせるといった当たり前過ぎることをわざわざ目標として掲げなくてはならないという事態は恐るべきこと。

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▼「国家始終是香港堅強後盾」と党紙大公報が春節を前に中連弁主任のありがたいお言葉。確かに中央政府といふ後盾あつての香港の繁栄なのだが「中央政府あつての」だつたら中央政府が瓦解でもしてしまつたら香港もいつたい何うなるのか誰にもわからない。中国共产党万岁!

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寺の門前で落ち葉を掃く小僧が和尚に問ふ「落ち葉を掃けといはれましたが、いつになつたら終はるのでせう」。和尚曰く「落ち葉を掃いてゐるのではない、おまえは「動態清零」といふ境地にあるのだ、わかるかな」……とこれぢゃ全く意味不明だが「動態清零」 とは中国の「感染零」に向けた積極的な防疫と検疫、治療の取組み姿勢のこと。「感染零」が理想であり感染者0と発表したいが、それが現実には困難なわけで「感染零」に代はる称賛されるべき理念として「動態清零」がスローガン化してゐると理解すればよいか(と書いてゐてアタシもよくわからない)。それを香港市役所でもリンテイが概念化したものだから専門家の間からは現実的には今の状況では所謂「ウィズコロナ」が適切であつて「動態清零」と宣ふことに批判もあるやう。それに対して香港市役所が見解を発表。

動態清零是抗疫最有效方法

このなかで最初に言及されてゐるのが巷で政府の「動態清零」につき批難することが国安法抵触かといふ危惧がいはれるが健全なる議論に何も問題がないと……もはやコントのやうだが、これがマヂかのか。もはや末期的ですらある。