陰暦十二月廿日。気温摂氏▲5.9/9.4度でこの冬一番の寒さ。気象台が市街地にあつて気温が多少高いケースは珍しくないが水府は気象台が水戸の台地の北側にあり冬は北からの寒風で気温が低いと思ふ。東京へ。快晴で東京は摂氏9.9度。風がなくて暖かいほど。いつもの列車で東京へ。各駅で常磐線の下りを狙つた「撮り鉄」がホーム端にゐて寒いなかご苦労さんなことと思つてゐたら友部だつたかでこちらの列車が停車中に国鉄特急の485系の塗装がされたE653系が走り抜けた。こちらも慌てゝ（オタクぶり発揮で）映像を撮つたが（Youtube）これは土浦発で常磐線北上して小牛田までの臨時特急「冬をまるごと仙台松島号」ださう。明日（日）に復路運行もあり。これが通り過ぎたあともまだ沿線の駅ホームには撮り鉄がゐて「せっかく来たついで」で撮影なのかと油断してゐたら北千住の駅で「四季島」が走り抜けた。
冬の1泊2日コース | TRAIN SUITE 四季島 | JR東日本
今日はこのあと我孫子から成田線に入り鹿島神宮から佐原に遊び武蔵野線経由で車中泊で小田原の方へ。随分とちまちまとしたコースだがスイートを２名利用で70万円。海外旅行できないとヒマもて余しで需要は高まるのかも（乗つたら楽しさうだが寝台車に１泊だと思ふと料金は無駄に高くないかしら）。
正月の歌舞伎座は古呂奈の感染や濃厚接触で14日休演となり15日から代役を立て再開に。〈一條大蔵譚〉で常磐御膳役が扇雀→歌女之丞、お京が七之助→京蔵、鳴瀬が歌女之丞→澤村國久となり京蔵さんのお京がじつに良いと久が原Ｔ君から聞いてゐたが明日から本来の役者に戻るため代役は今日まで。１階５列目の花道寄りのお席で見物。〈檜垣〉で夫の源氏忠臣吉岡鬼次郎（獅童）との茶屋での女房ぶり、大蔵卿（勘九郎）の列の最尾で一行の行くのを見てさまざまなこと案じながら花道を引っ込むところなどまさに名演。続く花見踊りでは獅童の倅・陽喜君初お目見得あり。歌舞伎座の三階に物故の俳優たちの写真が並ぶが最後に播磨屋の笑顔。さまざまな舞台思ひ出し涙が出さうになる。この遺影は播磨屋ご逝去から四十九日も済まぬうちにこゝに掛けられたのだとか。松竹も何を考へてゐるのかしら。
歌舞伎といへば今月は半蔵門は八犬伝。昭和22年に六代目の菊五郎劇団で渥美清太郎脚色のものが元。これを畏友・村上湛君が評してゐる。
封建体制を支えた儒教徳目を賛美する外枠の中に、疑似的な人畜通婚の宿業を蔵（かく）す二重底の主題を秘める江戸時代最大の雄編「八犬伝」。原作者・馬琴のしたたかな作意をどう脚色するかで舞台化の成否はさまざまだ。
といつも通り単刀直入で明晰なる書き出しが読んでゐて心地よい。背筋がさっと伸びる。
今回は冒頭に絵と音響で解説付けたさうだが、その場面と大詰の八犬士勢ぞろひを何う演出すれば良かつたか、と湛君は具体的に書いてゐる。NHKの〈新八犬伝〉の世代にはこの提案が実にたまらない。想像しただけでゾクゾクする。当時の子どもたちはまことに「封建体制を支えた儒教徳目を賛美する外枠の中に疑似的な人畜通婚の宿業を蔵す二重底の主題」を咀嚼してゐたかもしれない。評論とはたんに他人の仕事をあれこれ感想述べるに留まらず自分にもつと溌剌としたものが肚になければできない仕事である。一寸ジャンルは違ふが武田砂鉄のラジオトークを聞いてゐると発想の面白さもそれ。
芝居が跳ね少し遅めのお昼で数寄屋橋の泰明庵へ。やはり混んでゐるが行列にはなつてゐないだけでも御の字か。せり（根入り）とかしわのお蕎麦を注文して「お燗をつけて」と言つたら３日前から酒類提供なしださう。さうか。アクリル板の向かひに坐つたおじさんもアタシのせり入りのお蕎麦を「これと同じの」と注文。壁のお品書きにはこれは出てゐないのかも。外も少し暖かく熱いおそばを食べてお汁まで飲み干したら大汗で給仕のお姉さんに「そんな汗かいたまゝ外に出たら風邪ひいちゃうから」と心配された。とてつもなく忙しいのにいつも本当にお優しい。
オミクロンの感染拡大。さつさと帰宅して４時すぎからテレビで大相撲初場所を見る。
「香港前途一片光明」といふスローガン。政治的混乱も収束して国安下素晴らしい香港を築くのだから、このスローガンもそれに則したものと思ひたいところだが掲げたのが所謂「黄店」つまり民主派系ではさうはいかない。「チキンダック」は香港で人気のあるベビー服専門店で銅鑼湾のそごうにも店があつたが閉めることになり（それも何か政治的理由もありやなしや）在庫一掃でそごう向かひのビルに臨時の店舗を開いて、そこにこの看板。それがこの雑居ビルの管理会社から看板撤去を命じられたのだといふ。黄店が「香港前途一片光明」と宣ふと反政府運動の嫌疑となる。
