富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

冬至の東都

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陰暦十一月十九日。気温摂氏0.7/12.4度。快晴。冬至。日本では本日が冬至だが香港の暦だと冬至は昨日。太陽の黄経が270度に達する時で北半球では正午の太陽高度が一年で最も低く昼が最も短い(広辞苑)。それなら緯度の違ひもない気がするが理科に疎いアタシでも地球は傾いてゐて天の赤道黄道*1は異なるから、それも関係してゐるのかしらと思ふが

21日午後11時59分に「冬至」迎え中国では餃子や湯圓を食べる風習(人民網日本語版)

といふ記事を見かけて緯度の高い北京も21日で、しかも真夜中の23:59とは。「冬至を迎える」がキーワードで、あくまで当時の日の直前に設定してこそ「冬に至る」なのかしら……なんて語ると「それらしい」が、ちなみに来年の夏至は日本と香港の暦で同じ6月21日なので、こんな「直前説」もあやしい。中国の特色ある冬至の定義か。太陽の裏をとつて黄経が90度で夜が一番長いところで寒さを味はふのか。これこそ「それっぽい」。

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常磐線で水戸から東京に向かふ時いつも友部、石岡、土浦、牛久と中学、高校の頃の旧友のことを思ひだす。当時のことがまるで昨日のことのやうに彷彿されるが一人はもう随分と昔に亡くなつてしまつた。他の友だちもおそらく地元にはゐないことだらう。そして紫峰を遠くから眺める。標高877mの小さな山なのだが関東平野の我々にとつては名峰である。東京駅丸の内駅舎正面に御料車あり天皇行幸?と思つたが警備やお付きの車も極めて少なく広場に「外」ナンバーの車が2台ほど泊まつてゐて駅舎から誰か乗り込んで御料車の隊列は皇居に向かつたので天皇への信任状捧呈らしい。「外」ナンバーの自動車の国旗からすると(後で調べてみたら)タジキスタンでこの捧呈式には東京駅から馬車が伝統だつたが昨年からコロナ対策で御料車に変更ださう。ステーションホテルの「とらや」により菓子調達してから三菱一号館の美術館。f:id:fookpaktsuen:20211223124447j:image
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モネ、ルノワールとか印象派の絵画って「きれいだね」でそれ以上の感動がないアタシなのだが今回のイスラエル博物館所蔵の印象派絵画展「光の系譜」では「ドイツ印象派」の展示ありドイツやイスラエルでは評価高いが日本では「知る人ぞ知る」だつたレッサー=ユリィの〈夜のポツダム広場〉が殊に「コロナ禍で人々の心をとらへ」評判なのだといふ。

(美の履歴書721)「夜のポツダム広場」 レッサー=ユリィ 繁華街なのになぜ物憂げ:朝日新聞

イスラエルの博物館がなぜドイツ印象派の絵画蒐集なのか知らない。このユリィがユダヤ系なのか。ユリィがプロイセン王国の現ポーランド域生まれで家業はパン屋でドイツのベルリンに引っ越してゐる。参観はネットでの事前予約必要で、それを知らずに来た高齢者が「あらー」と途方に暮れてゐた。

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丸の内三菱村から歩いて銀座へ。阪急メンズ館。Poloの出店で何十年ぶり?で定番のチノパンツ購ふ。別にどこのPolo/RLでも良かつたのだけど。最近は何でもユニクロか無印でPoloなんて遠ざかつてゐたが去年あたりから?定番のベージュでカジュアルパンツがなか/\見つからない。スタイルもあまりにカジュアルすぎたり。ユニクロPoloだと価格は0が1つ違ふのだが1本くらゐあつても良いだらう。大和屋シャツ店。先日拵へたシャツを着て洗濯もしてゐたので今日はそれを着て仕上がり具合の寸法を見てもらふ。若松で?豆かん。お店の人に今年は休業、再開の繰り返しで難儀だつたでせうと話す。こちらも良いお年を。銀座線で神宮前……ぢゃなくて表参道。この駅構内の構造は苦手。南青山の「骨董品通り」にある「書斎館」で万年筆を眺める。ペリカン万年筆のコレクション多く店の方との話ではアタシがペリカン愛用と話したら喜んでくれたが今はドイツでの製造が需要に間に合はず入荷がなか/\難しくなつてゐるのださう。

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銕仙会能楽研究所。最近は努めて能を見るやうにしてゐるがこちらでの機会はなく前回はもう30年以上前で畏友村上湛君が若手の能楽研究の会の舞台に立たれて以来。その湛君から大学の能楽鑑賞会に誘つていたゞいた。観世流で大槻文蔵師による〈葛城〉で舞台の前に湛君の講話あり。これがこの〈葛城〉の前提や背景から、これが何を語る世界なのかといふ主題、行雲游水それに加へ学生にもわかり易い例へ、こちらに来られてゐる同僚のことも持ち上げ助手、学生をいぢり、そのマクラがまた面白い。秀逸。かうしたフリートークが良いのがやはり話上手。客を盛り上げるのは亡き勘三郎もさうだが「いぢり」の上手さなのだ。この物語、修験道の開祖・役(えん)の行者に「修行者のため岩橋を架けよ」と命じられた葛城の神が、それに応じられず役の行者により索で縛られ岩屋の奥で苦しみに耐えてゐる……といふチュエーションがどこかワーキングプアの今の世に通じるものあり。古典はいつもその物語が遠い昔のことではなく今の私たちの社会でも、それを実感してしまふやうな状況があるからこそ、古典は失はれることもなく今も読み継がれ演じ続けられているのだらう。しかも今日も謡本の朗読があつたが今よりももつと豊かな言葉でそれが語られてゐるのだから。葛城の神は見かけがよくないといふことで光のなか顔を見られることを厭ふのが能面(作者不明で「増」といふ能面なのださう)は醜いどころかむしろ清らかなほど。現実の厳しさや悲しみ、つらさに耐えかねて磐戸の奥に潜んでゐるやうにすら思へてしまつた。大槻師、来年米壽でこの〈葛城〉で大和舞まで渾身の表現であつた。本日、歌舞伎俳優のK丈もご来場。中正面の奥に目立たぬやうにゐらしてご挨拶。お隣りに座らせていたゞく。舞台は見させてもらつてゐるが、かうして直接お会ひしてお話しするのは、もう何年ぶりかしら。


表参道から地下鉄に。千代田線のホームで電車待つてゐたら入線してきたのがロマンスカーの〈メトロはこね〉であばからべっそん。北千住行きで表参道では降車のみ。平日でも1往復の運転あるが夕方のこの時間でさすがに千代田線乗り入れでの乗車率はかなり低い。車両の上品な青色も素敵で木を使つた内装もステキ。千代田線で小川町まで行くつもりだつたが半蔵門線で神保町へ。秦川堂書店。三茶書房に寄りご主人に年暮のご挨拶。東京はさすがに昼間は随分と暖かいと思つたが日が暮れると寒いもの。神田に向け歩いてゐて冬至だと思ふと「まつや」の柚子切りのお蕎麦も食べたいところだが今晩は知己と年末の集会といふことで司町の「みますや」へ。入口のところは常連のピンの客でしずかだが脇や奥は会社員の宴会でまぁ賑やかなこと。体調が万全ではないのでお酒は少し控へめ。連れのお好みで桜鍋なんてつつくことになつたから途中からノンアルコールビールで喉の乾きと油っけをとる。アタシがそんなものを飲んだから連れを驚かせてしまつた。

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サラリーマンの酒酔の聖地、神田も賑はつてゐる飲食店と、さうでないところの格差かなり目立つ。神田駅も夜九時近くでそこ/\人出はあるがコロナ前の時代の師走と比べたらもうあんな賑はひもない。
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香港の国安化や「完善」選挙の成功を西側がさんざん批判することに中共内政干渉と憤慨し香港市役所の小役人までが「英国統治のころの香港こそ非民主的」と曰つてみせる。香港は安定してをり言論の自由など無制限な放置があの不安定で混乱した暴力社会を生んだのだ。ウイグルもジェノサイトなど西側のデマで悪いイメージが浸透してゐるわけで実際にチベットは安定してゐる、と。そりゃ香港だつてチベットウイグルだつて中共一党独裁といふ点では政治的にこれほどの安定はないだらう。

*1:地球から見て太陽が地球を中心に運行するように見える天球上の大円。天の赤道に対して約23.4度傾斜する。黄道が赤道と交わる点は春分点秋分点である。【広辞苑